一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究

文献情報

文献番号
201917001A
報告書区分
総括
研究課題名
一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究
課題番号
H29-認知症-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 仁(広島大学 大学院医系科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 知行(医療法人社団知仁会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,084,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 在宅で生活する軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させる効果的なリハビリテーション手法を確立することを目的とする。
 本研究成果により、認知症やその進行を早期段階で予防するとともに、残存する生活機能を維持することができれば、住み慣れた地域での生活や就労を継続可能とし、結果的に介護者の介護負担を軽減させることで介護者への支援につながると考える。また、認知症施策推進総合戦略における七つの柱の一つに「認知症の人の介護者への支援」が位置付けられ、その目標のひとつとして『認知症の人の介護者の負担軽減』が掲げられていることから、本研究成果はその目標達成の一助になると期待できる。加えて、本法を地域高齢者に対するポピュレーションアプローチに応用・展開していくことにより、認知症への理解が深まり、認知症施策推進総合戦略の中で述べられている「認知症への対応に当たっては、常に一歩先んじて何らかの手を打つという意識を、社会全体で共有していかなければならない」ことの実現に貢献できるとともに、地域で活躍できる高齢者が増加することで、地域の活性化にもつながるといった波及効果が期待される。
研究方法
 作成した新たなリハビリテーション手法の効果検証のため、在宅で生活しており、通所施設を利用しているMCIおよび認知症の人を対象に3か月間の介入を行い、認知機能、アパシー、ADL、さらには介護者の介護負担を効果指標としたランダム化比較試験を行った。概要は以下のとおりである。
○対象者
 在宅で生活し、通所介護施設または通所リハビリ施設を利用しており、年齢は65歳以上で、専門医によりMCIまたは初期認知症(Mini-Mental State Examination得点が概ね17点以上)の基準を満たすと評価されている者、及びその介護者で、いずれからも同意が得られる者。
○方法
 各研究協力施設において、今回作成した新たな手法実施群と運動のみ実施群の2群にランダムに分け、それぞれのアプローチを3か月間実施し、介入前後および介入終了3か月後に以下に記載する評価を行った。
○評価項目
【MCI及び認知症者】基本属性、診断名、認知機能(Mini-Mental State Examination: MMSE, WMS-R logical memory,Frontal Assessment Battery: FAB)、アパシー(apathy evaluation scale)、ADL(Functional Independence Measure: FIM)、 IADL(Instrumental Activities of Daily Living scale)
【介護者】基本属性、介護負担(日本語版Zarit Caregiver Burden Interview短縮版: J-ZBI_8)、抑うつ(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale: CES-D)
結果と考察
1.対象者の研究への参加状況
 4施設において、適格基準を満たした74名に対して無作為割付けを行ったところ、介入群37名、対照群37名に割付けられた。このうち介入終了3か月後評価までに介入群で11名、対照群で4名が脱落したため、最終評価が可能であったのは介入群26名、対照群33名となった。
2.ベースラインデータにおける比較
 ベースラインにおける基礎属性、各評価尺度得点について両群間を比較したところ、すべての項目において2群間に有意な差はみられなかった。
3.各評価尺度得点変化における2群間の比較
 介入群および対照群における介入終了直後から介入終了3か月後にかけての各評価尺度得点の変化について二元配置分散分析を行った結果、MMSE、WMS-R(論理的記憶Ⅰ)、WMS-R(論理的記憶Ⅱ)、FIM、J-ZBIの得点変化において、両群間で有意な交互作用、主効果を認めた。
結論
 在宅で生活する軽度認知障害及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させることを目指した新たな認知機能障害・周辺症状改善システムを作成し、その有効性の検証を行った。その結果、認知機能、記憶機能、日常生活活動の向上、さらには介護負担の軽減に対する有効性が示されたことから、本システムを地域や自宅で活用することにより、地域で活躍できる高齢者の増加や介護者の支援につながり、本事業の目標である一億総活躍社会の実現に寄与できるのではないかと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-08-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201917001B
報告書区分
総合
研究課題名
一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究
課題番号
H29-認知症-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 仁(広島大学 大学院医系科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 知行(医療法人社団 知仁会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 在宅で生活する軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させる効果的なリハビリテーション手法を確立することを目的とする。
研究方法
①新たなシステムの作成
 研究代表者は、運動と認知トレーニングを組み合わせた認知機能障害改善システムを開発し、認知症高齢者の認知機能障害の改善に対する効果および安全性をランダム化比較試験により検証した。今回の研究では、MCI及び在宅で生活する認知症の人を対象とすることから、本システムをさらに簡便化し実効性のある新たなリハビリテーション手法を作成した。
②生活機能改善プログラムの検討
 海外および国内の複数のデータベースを用い、2000年以降に出版された論文について検索を行い、ランダム化比較試験よりデータを抽出し、メタ分析を実施した。得られた結果と、先行研究でのメタ分析の結果を総合的に評価し、MCIや初期認知症の人のADLの維持・向上に有用と考えられるプログラムを検討した。
③作成したリハビリテーション手法の効果検証
 作成した新たなリハビリテーション手法の効果検証のため、在宅で生活しており、通所施設を利用しているMCIおよび認知症の人を対象に3か月間の介入を行い、認知機能、アパシー、ADL、さらには介護者の介護負担を効果指標としたランダム化比較試験を行った。概要は以下のとおりである。
○対象者
 在宅で生活し、通所介護施設または通所リハビリ施設を利用しており、年齢は65歳以上で、専門医によりMCIまたは初期認知症(Mini-Mental State Examination得点が概ね17点以上)の基準を満たすと評価されている者、及びその介護者で、いずれからも同意が得られる者。
○方法
 各研究協力施設において、今回作成した新たな手法実施群と運動のみ実施群の2群にランダムに分け、それぞれのアプローチを3か月間実施し、介入前後および介入終了3か月後に以下に記載する評価を行った。なお、新たな手法を実施する対象者で同意の得られた者に対しては、本手法が脳活動に与える影響を評価するために、携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を用いて、介入実施中の脳前頭部の酸素化/脱酸素化ヘモグロビンの濃度をリアルタイムで計測した。
○評価項目
【MCI及び認知症者】基本属性、診断名、認知機能、アパシー、ADL、IADL、一部の対象者に対して脳活動(脳前頭部の酸素化/脱酸素化ヘモグロビンの濃度)
【介護者】基本属性、介護負担、抑うつ
結果と考察
①新たなシステムの作成
 従来のシステムから改良を加え、新たな認知機能障害・周辺症状改善システムを作成した。
②生活機能改善プログラムの検討
 システマティックレビューを行い、二次スクリーニングを経て、既存のメタアナリシスからの論文を加えた計9論文についてメタ分析を行った。その結果、MCIや初期認知症の人を対象としたADL介入は運動と認知トレーニングのみであり、運動のADL向上の有効性は示されたものの、認知機能改善への効果は結論付けられなかった。
③作成したリハビリテーション手法の効果検証
 4施設において、適格基準を満たした74名に対して無作為割付けを行ったところ、介入群37名、対照群37名に割付けられた。このうち介入終了3か月後評価までに介入群で11名、対照群で4名が脱落したため、最終評価が可能であったのは介入群26名、対照群33名となった。介入群および対照群における介入終了直後から介入終了3か月後にかけての各評価尺度得点の変化について二元配置分散分析を行った結果、MMSE、WMS-R(論理的記憶Ⅰ)、WMS-R(論理的記憶Ⅱ)、FIM、J-ZBIの得点変化において、両群間で有意な交互作用、主効果を認めた。また、介入実施中の脳前頭部の酸素化/脱酸素化ヘモグロビン濃度をリアルタイムで計測した結果、介入群は対照群に比べ課題後半部において左前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度が有意に増加していることが示された。
結論
 在宅で生活する軽度認知障害及び初期認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させることを目指した新たな認知機能障害・周辺症状改善システムを作成し、その有効性の検証を行った。その結果、認知機能、記憶機能、日常生活活動の向上、さらには介護負担の軽減に対する有効性が示されたことから、本システムを地域や自宅で活用することにより、地域で活躍できる高齢者の増加や介護者の支援につながり、本事業の目標である一億総活躍社会の実現に寄与できるのではないかと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201917001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で作成した新たな認知機能障害・周辺症状改善システムは、在宅で生活する軽度認知障害及び初期認知症の人の認知機能、記憶機能、日常生活活動を向上させ、さらには介護負担の軽減にも有効であることが示されたことから、本システムを地域や自宅で活用することにより、地域で活躍できる高齢者の増加や介護者の支援につながり、本事業の目標である一億総活躍社会の実現に寄与できると考える。
臨床的観点からの成果
本システムを地域高齢者に対するポピュレーションアプローチに応用・展開していくことにより、認知症への理解が深まり、認知症施策総合戦略の中で述べられている「認知症への対応に当たっては、常に一歩先んじて何らかの手を打つという意識を、社会全体で共有していかなければならない」ことの実現に貢献できるとともに、地域で活躍できる高齢者が増加することで、地域の活性化にもつながるといった波及効果が期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
認知症施策総合戦略における七つの柱の一つに「認知症の人の介護者への支援」が位置付けられ、その目標のひとつとして『認知症の人の介護者の負担軽減』が掲げられていることから、本研究成果はその目標達成の一助になると期待できる。さらに、本研究により新たなリハビリテーション手法が確立できたことから、七つの柱の一つである「認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進」の一翼も担うことができたと考える。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
執筆中
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
2024-06-05

収支報告書

文献番号
201917001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,008,000円
(2)補助金確定額
4,008,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,741,943円
人件費・謝金 694,161円
旅費 525,310円
その他 122,586円
間接経費 924,000円
合計 4,008,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-11-20
更新日
-