文献情報
文献番号
201916014A
報告書区分
総括
研究課題名
実証研究に基づく訪問看護・介護に関連する事故および感染症予防のガイドライン策定のための研究
課題番号
19GA1006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
柏木 聖代(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 緒方 泰子(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
- 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 齋藤 良一(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 浜野 淳(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
- 大河原 知嘉子(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国において訪問系サービスへの期待は大きく、安全管理体制の整備は喫緊の課題であるが、全国規模で事故やヒヤリ・ハット、感染症の発生状況の実態把握は進んでいない。その背景には、訪問看護・介護に関連した事故等の判断基準や事業所内や自治体への報告基準が多様であること、各事業所において発生件数の把握や分析がされていない等が指摘されているが、詳細はわかっていない。そこで、本研究では、全国規模での訪問看護に関連した有害事象の実態把握のための手法を検討し、全国調査により、訪問看護に関連した有害事象および再発予防策に関する実態を把握することを目的とした。
研究方法
1年目の2019年度は、1)訪問看護に関連した有害事象の実態把握手法の開発、2)全国調査による訪問看護に関連した有害事象の実態および再発予防策に関する実態把握を実施した。1)では、(1)国内外の文献レビューによるガイドラインや実態調査で用いられている指標の把握、(2)介護保険事業者が事故・感染症発生を自治体に報告する基準の実態把握、(3)訪問看護事業所の管理者を対象としたインタビュー調査による事故発生の判断や報告基準、安全管理体制等の現状把握を行った。
結果と考察
1)訪問看護に関連した有害事象の実態把握手法の開発
(1)国内文献のレビューの結果、事故やヒヤリ・ハットの定義が示されていたのは13件中6件であった。定義や事故の対象範囲は、文献によって様々であった。また、訪問看護では、サービス提供中に起こった事故に加え、移動中の交通事故など訪問看護従事者に関連する様々な有害事象もサービスに関連する事故として扱われていた。感染症の対象文献は56件であったが訪問看護における感染症の範囲を定義づけしている文献はみあたらなかった。国外文献では、医療安全に関するアウトカム指標として、ヘルスケア関連の感染症、せん妄、転倒、外傷(重症度別)、褥瘡、医薬品関連エラー、救急搬送などがあった。感染症に関しては、WHOガイドライン等を基にした、手指消毒や標準予防策に関する手順をプロセス指標として位置づけていた。アウトカム指標として、中心静脈ライン感染、カテーテル関連感染、Bloodstream Infections (BSI)、Skin and Soft Tissue Infections (SSTI)、耳鼻咽喉等の感染症、消化器感染症が多く用いられていた。また、多剤耐性菌についても、重要な指標として挙げられていた。
(2)ホームページ上で公表されていた都道府県・政令指定都市・中核市の「介護保険事業者における事故発生時の報告取扱要領」を分析した結果、事故の種類は、「利用者の死亡事故」、「利用者の怪我・負傷」、「誤嚥・誤飲・異食」、「誤薬」、「虐待・暴力」、「不法行為・不祥事」、「財産・家屋の破損」、「失踪・行方不明」、「火災の発生」、「自然災害の発生」、「交通事故」、「苦情・トラブル・訴訟」、「感染症」、「食中毒」に分類された。各事故の種類ごとに示されていた事故の報告基準は様々であり、自治体によって異なっていることが明らかになった。
(3)分析の結果、事故の種類として「医療事故」5カテゴリー、「ケア事故」3カテゴリー、「交通事故」2カテゴリー、「事務的作業ミス」3カテゴリー、「感染症」6カテゴリー、「その他の事故」4カテゴリーが抽出された。在宅では、医療事故やケア事故に加え、移動時の交通事故といった訪問従事者に関する様々な有害事象も発生していた。事故やヒヤリ・ハットの定義や判断基準が統一されておらず事業所によって異なることから、各事業所の事故発生件数の数値をみて、事故発生の多寡を判断することが難しい現状が明らかになった。
2)全国調査で回答が得られた訪問看護事業所565事業所を分析した結果、訪問看護事業所における「訪問看護に関連する事故」の範囲に関する認識では、92.1%の事業所がヒヤリ・ハットに分類される「軽度の実害あり」、57.2%が「利用者に未実施」、83.5%が「実害なし」を「訪問看護に関連する事故」の範囲として認識していた。「事故」に分類される「中程度の実害あり」から「利用者の死亡事故」に関しては、90%以上の事業所が「訪問看護に関連する事故」の範囲として認識していた。訪問看護サービス提供中に起きた利用者に関する事故・ヒヤリ・ハットの発生件数は、「転倒」「転落」「誤嚥」「誤薬」「医療・介護機器関連」「ドレーン・チューブ関連」で、いずれも中央値は0件であった。
(1)国内文献のレビューの結果、事故やヒヤリ・ハットの定義が示されていたのは13件中6件であった。定義や事故の対象範囲は、文献によって様々であった。また、訪問看護では、サービス提供中に起こった事故に加え、移動中の交通事故など訪問看護従事者に関連する様々な有害事象もサービスに関連する事故として扱われていた。感染症の対象文献は56件であったが訪問看護における感染症の範囲を定義づけしている文献はみあたらなかった。国外文献では、医療安全に関するアウトカム指標として、ヘルスケア関連の感染症、せん妄、転倒、外傷(重症度別)、褥瘡、医薬品関連エラー、救急搬送などがあった。感染症に関しては、WHOガイドライン等を基にした、手指消毒や標準予防策に関する手順をプロセス指標として位置づけていた。アウトカム指標として、中心静脈ライン感染、カテーテル関連感染、Bloodstream Infections (BSI)、Skin and Soft Tissue Infections (SSTI)、耳鼻咽喉等の感染症、消化器感染症が多く用いられていた。また、多剤耐性菌についても、重要な指標として挙げられていた。
(2)ホームページ上で公表されていた都道府県・政令指定都市・中核市の「介護保険事業者における事故発生時の報告取扱要領」を分析した結果、事故の種類は、「利用者の死亡事故」、「利用者の怪我・負傷」、「誤嚥・誤飲・異食」、「誤薬」、「虐待・暴力」、「不法行為・不祥事」、「財産・家屋の破損」、「失踪・行方不明」、「火災の発生」、「自然災害の発生」、「交通事故」、「苦情・トラブル・訴訟」、「感染症」、「食中毒」に分類された。各事故の種類ごとに示されていた事故の報告基準は様々であり、自治体によって異なっていることが明らかになった。
(3)分析の結果、事故の種類として「医療事故」5カテゴリー、「ケア事故」3カテゴリー、「交通事故」2カテゴリー、「事務的作業ミス」3カテゴリー、「感染症」6カテゴリー、「その他の事故」4カテゴリーが抽出された。在宅では、医療事故やケア事故に加え、移動時の交通事故といった訪問従事者に関する様々な有害事象も発生していた。事故やヒヤリ・ハットの定義や判断基準が統一されておらず事業所によって異なることから、各事業所の事故発生件数の数値をみて、事故発生の多寡を判断することが難しい現状が明らかになった。
2)全国調査で回答が得られた訪問看護事業所565事業所を分析した結果、訪問看護事業所における「訪問看護に関連する事故」の範囲に関する認識では、92.1%の事業所がヒヤリ・ハットに分類される「軽度の実害あり」、57.2%が「利用者に未実施」、83.5%が「実害なし」を「訪問看護に関連する事故」の範囲として認識していた。「事故」に分類される「中程度の実害あり」から「利用者の死亡事故」に関しては、90%以上の事業所が「訪問看護に関連する事故」の範囲として認識していた。訪問看護サービス提供中に起きた利用者に関する事故・ヒヤリ・ハットの発生件数は、「転倒」「転落」「誤嚥」「誤薬」「医療・介護機器関連」「ドレーン・チューブ関連」で、いずれも中央値は0件であった。
結論
国内外の文献レビュー、管理者を対象としたフォーカスグループインタビューにより、訪問看護に関連した有害事象の実態を全国規模で把握する手法について検討し、全国調査による訪問看護に関連した有害事象の実態および再発予防策に関する実態を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2020-11-18
更新日
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