文献情報
文献番号
201916013A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病患者に対する生活行為工程分析に基づいたリハビリテーション介入の標準化に関する研究
課題番号
19GA1005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田平 隆行(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系)
研究分担者(所属機関)
- 池田 学(大阪大学大学院医学系研究科)
- 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 牧迫 飛雄馬(鹿児島大学医歯学域医学系)
- 山口 智晴(群馬医療福祉大学リハビリテーション学部)
- 友利 幸之介(東京工科大学医療保健学部)
- 田中 寛之(大阪府立大学地域保健学域総合リハビリテーション学類)
- 吉浦 和宏(熊本大学病院神経精神科)
- 韓 ゴアンヒ(ハン ゴアンヒ)(熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学分野)
- 吉満 孝二(鹿児島大学医歯学域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
軽度認知障害(MCI)や軽度認知症(MD)の生活行為は,複雑なIADLから障害され,認知機能の低下に伴い他のIADL,そしてBADLの順に低下する.在宅での生活行為に対するリハビリテーション介入については,生活障害の特徴を分析し,遂行能力を最大限に活かす必要がある.我々が開発した生活行為工程分析表(PADA-D)は,認知機能の側面から工程分析した評価表であり,工程別の変化を捉えることが可能である.
本研究の目的は,地域在住認知症者に対して生活行為分析に基づいたリハビリテーションを3か月間実施し,その生活行為の変化を8事例について個別的に検討する.尚,介入戦略に関しては,GraffらのCOTiD等を参考に,A残存する工程や認知機能の活用,B技能練習,C物理的環境に対する介入,D家族・介護者への支援教育という視点で整理した.
本研究の目的は,地域在住認知症者に対して生活行為分析に基づいたリハビリテーションを3か月間実施し,その生活行為の変化を8事例について個別的に検討する.尚,介入戦略に関しては,GraffらのCOTiD等を参考に,A残存する工程や認知機能の活用,B技能練習,C物理的環境に対する介入,D家族・介護者への支援教育という視点で整理した.
研究方法
対象
現在実施中の非ランダム化試験に参加している介入群の中から介入直後評価まで終了している8名の認知症者とした.参加者は,2019年にA県B病院の認知症疾患医療センター及びC県D通所介護を利用している認知症と診断されている者であった.除外基準は顕著な身体疾患等による生活障害が認められる者とした.
調査項目
基本情報のほか,主要アウトカム指標としてPADA-D,PSMS,Lawton IADLs,HADLs,MMSEを採取した.PADA-Dは,14項目の生活行為を時間の流れと認知機能によって工程分析したものであり,1行為5工程, 3つの下位項目から構成される.評価方法は,リハ専門職等の自宅訪問による観察及び信頼ある家族からの聞き取りとした.
介入方法
介入は,生活行為工程分析表にて低下している工程及び残存している工程を明らかにし,本人・家族の合意のもと,介入する生活行為を3行為まで選択し,詳細な目標を決定し,目標志向的に生活行為への介入を実施する.介入は,1回/週を基本とし,1回40分,3か月間,リハ専門職等が自宅を訪問して行うが,目標に応じた自宅以外の実施はこの限りではない.
倫理面への配慮
鹿児島大学病院臨床研究倫理委員会の承認(190024倫-改1)を得て実施した.
現在実施中の非ランダム化試験に参加している介入群の中から介入直後評価まで終了している8名の認知症者とした.参加者は,2019年にA県B病院の認知症疾患医療センター及びC県D通所介護を利用している認知症と診断されている者であった.除外基準は顕著な身体疾患等による生活障害が認められる者とした.
調査項目
基本情報のほか,主要アウトカム指標としてPADA-D,PSMS,Lawton IADLs,HADLs,MMSEを採取した.PADA-Dは,14項目の生活行為を時間の流れと認知機能によって工程分析したものであり,1行為5工程, 3つの下位項目から構成される.評価方法は,リハ専門職等の自宅訪問による観察及び信頼ある家族からの聞き取りとした.
介入方法
介入は,生活行為工程分析表にて低下している工程及び残存している工程を明らかにし,本人・家族の合意のもと,介入する生活行為を3行為まで選択し,詳細な目標を決定し,目標志向的に生活行為への介入を実施する.介入は,1回/週を基本とし,1回40分,3か月間,リハ専門職等が自宅を訪問して行うが,目標に応じた自宅以外の実施はこの限りではない.
倫理面への配慮
鹿児島大学病院臨床研究倫理委員会の承認(190024倫-改1)を得て実施した.
結果と考察
事例1)87歳,男性,MCI
目標:自宅にある食材で調理ができる
介入:冷蔵庫の中身の確認,得意な料理とその料理の工程の確認,実践
戦略:A,B
結果:「食材の加工」(食材に火を通す),「食材の調味」(調味料を選ぶ,適量を入れる,味見をする)が改善
事例2)88歳,女性,VaD
目標:洗濯物を「干す」,「たたむ」,「しまう」ができるようになる.
介入:タオルを干す,たたむ」練習
戦略:B
結果:洗濯物を「入れる」(洗う衣類を選別する),「取り込む」(衣類の形状に合わせてたたむ),「しまう」(所定の収納場所にしまう)が改善
事例3)81歳,女性,AD
目標:ゴミ捨て場に持っていく
介入:ゴミ袋を持って移動する練習,実際のゴミ捨て場まで移動反復練習,家族へ技術指導
戦略:B,D
結果:「ゴミを捨てる」(集積所に持っていく)が改善
事例4)78歳,女性,AD
目標:洗濯機操作をできるようになる
介入:順番を表示.洗剤や柔軟剤の入れ方反復練習
戦略:A,B
結果:全ての工程で変化なし
事例5)80歳,男性,AD
目標:洋式便座に座り,排泄する
介入:デイケアでの排泄時の指導,トイレに文字と写真で教示,介護職との共通の関わり
戦略:A,B,C,D
結果:全ての工程において自立を維持
事例6)88歳,女性,AD
目標:洗濯を転倒することなく行える
介入:洗濯機の使用方法を掲示,物干し場の環境調整
戦略:A,C
結果:全ての工程において自立を維持
事例7)74歳,女性,DLB
目標:衣類の整理をする
介入:タンスのラベリング,娘と衣類の整理をする
戦略::A,C,D
結果:「家の掃除をする」(拭く,磨く)が改善
事例8)58歳,女性,AD
目標:調理の一部を継続して行う
介入:味噌汁,ごはんを継続して作る,ヘルパーとおかずを作る
戦略:A,C
結果:「献立を立てる」(必要な材料を探す,材料・調理道具をそろえる)は低下したが,「食材の加工」(食材を剥く,切る,つぶす)は改善
目標:自宅にある食材で調理ができる
介入:冷蔵庫の中身の確認,得意な料理とその料理の工程の確認,実践
戦略:A,B
結果:「食材の加工」(食材に火を通す),「食材の調味」(調味料を選ぶ,適量を入れる,味見をする)が改善
事例2)88歳,女性,VaD
目標:洗濯物を「干す」,「たたむ」,「しまう」ができるようになる.
介入:タオルを干す,たたむ」練習
戦略:B
結果:洗濯物を「入れる」(洗う衣類を選別する),「取り込む」(衣類の形状に合わせてたたむ),「しまう」(所定の収納場所にしまう)が改善
事例3)81歳,女性,AD
目標:ゴミ捨て場に持っていく
介入:ゴミ袋を持って移動する練習,実際のゴミ捨て場まで移動反復練習,家族へ技術指導
戦略:B,D
結果:「ゴミを捨てる」(集積所に持っていく)が改善
事例4)78歳,女性,AD
目標:洗濯機操作をできるようになる
介入:順番を表示.洗剤や柔軟剤の入れ方反復練習
戦略:A,B
結果:全ての工程で変化なし
事例5)80歳,男性,AD
目標:洋式便座に座り,排泄する
介入:デイケアでの排泄時の指導,トイレに文字と写真で教示,介護職との共通の関わり
戦略:A,B,C,D
結果:全ての工程において自立を維持
事例6)88歳,女性,AD
目標:洗濯を転倒することなく行える
介入:洗濯機の使用方法を掲示,物干し場の環境調整
戦略:A,C
結果:全ての工程において自立を維持
事例7)74歳,女性,DLB
目標:衣類の整理をする
介入:タンスのラベリング,娘と衣類の整理をする
戦略::A,C,D
結果:「家の掃除をする」(拭く,磨く)が改善
事例8)58歳,女性,AD
目標:調理の一部を継続して行う
介入:味噌汁,ごはんを継続して作る,ヘルパーとおかずを作る
戦略:A,C
結果:「献立を立てる」(必要な材料を探す,材料・調理道具をそろえる)は低下したが,「食材の加工」(食材を剥く,切る,つぶす)は改善
結論
目標とする生活行為への焦点化した介入においてPADA-Dの下位項目で改善,または自立を継続していた.介入戦略としては,事例の特徴に合わせ,残存する工程や認知機能の活用,技能練習,環境介入,家族者への支援教育,を使い分けていた.また,具体的な工程を評価可能なPADA-Dでは,焦点化した生活行為の介入ポイントの変化を捉えられていた.今回は,COVID-19拡大防止のため3月に入って訪問による介入が困難な施設が増加し,8事例の前後比較となった.
公開日・更新日
公開日
2021-06-02
更新日
-