嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発

文献情報

文献番号
201916005A
報告書区分
総括
研究課題名
嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
課題番号
H30-長寿-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 順子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 唐帆 健浩(杏林大学・医学部耳鼻咽喉科学教室)
  • 菊谷 武(日本歯科大学・大学院生命歯学研究科・臨床口腔機能学)
  • 柴田 斉子(藤田医科大学・医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座)
  • 田沼 直之(東京都立府中療育センター・小児科)
  • 寺本 房子(川崎医療福祉大学・医療技術学部臨床栄養学科)
  • 藤島 一郎(浜松市リハビリテーション病院・リハビリテーション科)
  • 藤本 保志(名古屋大学・大学院医学系研究科頭頸部感覚器外科耳鼻咽喉科)
  • 吉田 光由(広島大学・大学院医歯保健学研究科先端歯科補綴学講座)
  • 渡邊 裕(東京都健康長寿医療センター・研究所社会科学系自立促進と介護予防研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会を迎えた本邦において、摂食嚥下障害を有する高齢者は増加している。摂食嚥下障害を有する高齢者に適正な食形態を提供することは、誤嚥や窒息などの予防、低栄養防止、QOLの維持につながる。嚥下造影検査(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)は、摂食嚥下機能の評価、食形態の決定に重要だが、すべての医療機関、介護施設、在宅等で頻繁に実施するのは困難である。すなわち、適正な食形態が選択される状況を作るためには、観察によって食形態を判定するためのガイドラインの開発が必要である。本研究では、文献検索と実態調査を踏まえ、観察によって食形態を判定するための観察評価表を作成し、その実用性と限界について、嚥下造影・内視鏡での検査結果との比較を行った。また、実際の使用場面を想定し、在宅関係者における観察評価の一致性を確認し、これらの結果を踏まえ、観察による食形態判定のための手引きを策定した。なお、本研究の当初の課題名が「ガイドラインの開発」であったが、今日、医療界では、「ガイドライン」にはさまざまな要件が必要であり、本分野は、RCTがほとんどないなどの限界があるため、ガイドラインとせず、「手引き」という用語を用いることとした。
研究方法
1.国内外の観察評価に関わる文献検索。国内外の観察評価に関わる文献を、咀嚼を要する食品を対象としたものかどうかにも配慮しつつ検索し検討した。
2.食形態選定法に係る実態調査。経験ある専門職種が観察で行っている食形態判定・選定方法に係る実態調査を実施した。
3.ガイダンス案の作成とその核になる評価表案の作成。文献検索結果、実態調査の結果を踏まえてガイダンス案および、観察評価表案を作成した。
4.観察評価表による評価と嚥下造影・内視鏡検査の評価の整合性の検討。開発した観察評価表とVF、VEを用いた精密検査との整合性の検討を多施設前向き研究として行った。
5.観察評価表の評価者間一致性、再現性の検討。将来の観察評価表使用者を想定して、実際に嚥下造影や内視鏡のない臨床場面で勤務している医療関連職種を対象に、摂食嚥下障害症例の摂食場面動画を見て観察評価表をつけてもらい、正答率、評価者間一致性を検討し、かつ、1か月後に同じ動画を見せた場合の再現性の検討を行った。
結果と考察
1.国内外の観察評価に関わる文献検索
咀嚼を含めた嚥下機能の観察評価方法としては、MASA,GUSSを参考に、米を主食とする日本人向けに改訂した方法の開発が期待される。
2.食形態選定法に係る実態調査
今後のガイドラインでは食事場面の観察評価のほかに、肺炎リスクと栄養などの全身状態を常に把握することが重要であることも普及していく必要があると思われた。
3.手引き案の作成とその核になる評価表の作成
文献検索結果、実態調査の結果を踏まえて観察評価表案と、ガイダンス案を作成した。
4.観察評価表による評価と嚥下造影・内視鏡検査の評価の整合性の検討
作成した観察評価表案を用いて、前向き多施設観察研究として、研究協力機関18施設から185名のデータを収集した。
誤嚥については、検査での誤嚥と観察評価でのむせの一致率は高くなく、補助項目を加えても1割の誤嚥が補足できなかった。また、観察でのむせを重要視しすぎると、患者の経口摂食の機会を減少させうる可能性があることが示唆された。咀嚼を要する食品を評価するような患者では、むせに反応して慎重になりすぎることなく、再評価やトライアルなど臨床的なリスク管理方法を併用しつつ、食上げに積極的にとりくむことが患者のQOLの向上に寄与すると考えられた。
5.観察評価表の評価者間一致性、再現性の検討
ガイドラインの使用者を想定して、嚥下障害の専門家でない医療・関連職種における観察評価について検討した。嚥下造影や内視鏡の使えない場面での、より確かな観察評価を行うためには、そのような場面で働く職種のために、観察評価そのもののトレーニングが望ましいことが示唆された。
6.手引きの完成とトレーニング用動画の作成
以上の研究結果を踏まえ、観察評価表を主軸に、その限界を踏まえ、また単回の観察評価以外の臨床的な項目への注意も記載したガイダンス(付録)を作成した。
この手引きの利用により、嚥下造影や内視鏡を用いることの少ない環境においても、観察評価により、適切な食形態を選択することが可能となり、利用者のQOL向上に資することが期待される。
結論
評価表を用いた食形態選定の手順を作成したと、観察評価の技術向上のためのトレーニング動画を作成した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-28
更新日
2023-07-14

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201916005B
報告書区分
総合
研究課題名
嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発
課題番号
H30-長寿-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 順子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 唐帆 健浩(杏林大学・医学部耳鼻咽喉科学教室)
  • 菊谷 武(日本歯科大学・大学院生命歯学研究科・臨床口腔機能学)
  • 柴田 斉子(藤田医科大学・医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座)
  • 田沼 直之(東京都立府中療育センター・小児科)
  • 寺本 房子(川崎医療福祉大学・医療技術学部臨床栄養学科)
  • 藤島 一郎(浜松市リハビリテーション病院・リハビリテーション科)
  • 藤本 保志(名古屋大学・大学院医学系研究科頭頸部感覚器外科耳鼻咽喉科)
  • 吉田 光由(広島大学・大学院医歯保健学研究科先端歯科補綴学講座)
  • 渡邊 裕(東京都健康長寿医療センター・研究所社会科学系自立促進と介護予防研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会を迎えた本邦において、摂食嚥下障害を有する高齢者は増加している。摂食嚥下障害を有する高齢者に適正な食形態を提供することは、誤嚥や窒息などの予防、低栄養防止、QOLの維持につながる。嚥下造影検査(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)は、摂食嚥下機能の評価、食形態の決定に重要だが、すべての医療機関、介護施設、在宅等で頻繁に実施するのは困難である。すなわち、適正な食形態が選択される状況を作るためには、観察によって食形態を判定するためのガイドラインの開発が必要である。本研究では、文献検索と実態調査を踏まえ、観察によって食形態を判定するための観察評価表を作成し、その実用性と限界について、嚥下造影・内視鏡での検査結果との比較を行った。また、実際の使用場面を想定し、在宅関係者における観察評価の一致性を確認し、これらの結果を踏まえ、観察による食形態判定のための手引きを策定した。なお、本研究の当初の課題名が「ガイドラインの開発」であったが、今日、医療界では、「ガイドライン」にはさまざまな要件が必要であり、本分野は、RCTがほとんどないなどの限界があるため、ガイドラインとせず、「手引き」という用語を用いることとした。
研究方法
1.国内外の観察評価に関わる文献検索。国内外の観察評価に関わる文献を、咀嚼を要する食品を対象としたものかどうかにも配慮しつつ検索し検討した。
2.食形態選定法に係る実態調査。経験ある専門職種が観察で行っている食形態判定・選定方法に係る実態調査を実施した。
3.ガイダンス案の作成とその核になる評価表案の作成。文献検索結果、実態調査の結果を踏まえてガイダンス案および、観察評価表案を作成した。
4.観察評価表による評価と嚥下造影・内視鏡検査の評価の整合性の検討。開発した観察評価表とVF、VEを用いた精密検査との整合性の検討を多施設前向き研究として行った。
5.観察評価表の評価者間一致性、再現性の検討。将来の観察評価表使用者を想定して、実際に嚥下造影や内視鏡のない臨床場面で勤務している医療関連職種を対象に、摂食嚥下障害症例の摂食場面動画を見て観察評価表をつけてもらい、正答率、評価者間一致性を検討し、かつ、1か月後に同じ動画を見せた場合の再現性の検討を行った。
結果と考察
1.国内外の観察評価に関わる文献検索
咀嚼を含めた嚥下機能の観察評価方法としては、MASA,GUSSを参考に、米を主食とする日本人向けに改訂した方法の開発が期待される。
2.食形態選定法に係る実態調査
今後のガイドラインでは食事場面の観察評価のほかに、肺炎リスクと栄養などの全身状態を常に把握することが重要であることも普及していく必要があると思われた。
3.手引き案の作成とその核になる評価表の作成
文献検索結果、実態調査の結果を踏まえて観察評価表案と、ガイダンス案を作成した。
4.観察評価表による評価と嚥下造影・内視鏡検査の評価の整合性の検討
作成した観察評価表案を用いて、前向き多施設観察研究として、研究協力機関18施設から185名のデータを収集した。
誤嚥については、検査での誤嚥と観察評価でのむせの一致率は高くなく、補助項目を加えても1割の誤嚥が補足できなかった。また、観察でのむせを重要視しすぎると、患者の経口摂食の機会を減少させうる可能性があることが示唆された。咀嚼を要する食品を評価するような患者では、むせに反応して慎重になりすぎることなく、再評価やトライアルなど臨床的なリスク管理方法を併用しつつ、食上げに積極的にとりくむことが患者のQOLの向上に寄与すると考えられた。
5.観察評価表の評価者間一致性、再現性の検討
ガイドラインの使用者を想定して、嚥下障害の専門家でない医療・関連職種における観察評価について検討した。嚥下造影や内視鏡の使えない場面での、より確かな観察評価を行うためには、そのような場面で働く職種のために、観察評価そのもののトレーニングが望ましいことが示唆された。
6.手引きの完成とトレーニング用動画の作成
以上の研究結果を踏まえ、観察評価表を主軸に、その限界を踏まえ、また単回の観察評価以外の臨床的な項目への注意も記載したガイダンス(付録)を作成した。
この手引きの利用により、嚥下造影や内視鏡を用いることの少ない環境においても、観察評価により、適切な食形態を選択することが可能となり、利用者のQOL向上に資することが期待される。
結論
評価表を用いた食形態選定の手順を作成し、また、観察評価の技術向上のためのトレーニング動画を作成し、研究の成果物とした。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201916005C

収支報告書

文献番号
201916005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,900,000円
(2)補助金確定額
4,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,195,071円
人件費・謝金 0円
旅費 731,824円
その他 1,843,227円
間接経費 1,130,000円
合計 4,900,122円

備考

備考
差異122円は自己資金で支出した。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-