文献情報
文献番号
201916004A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅・介護施設等における医療的ケアに関連する事故予防のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
- 後 信(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 坂口 美佐(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 栗原 博之(公益財団法人日本医療機能評価機構)
- 横山 玲(公益財団法人日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,824,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療機関における医療事故については、当機構の医療事故情報収集等事業や医療事故報告制度等、全国的な情報収集・再発防止の仕組みがあるが、介護施設については、全国規模の報告・集計の仕組みおよび再発防止に関する情報提供、実態や原因分析、再発防止等のフィードバックはほとんど行われていない。本研究では、全国の介護施設における医療事故等の実態調査から主な医療事故等の原因を分析し、有用な事故防止策を提言するとともに、介護施設における医療・介護の質および安全の向上を目的とした全国規模の事故予防の仕組みの構築について検討することとしている。
研究方法
(1)「介護事故情報収集システム(仮称)」事故情報収集(試行)
2018年度に作成した事故登録フォーマットを用いて老健から事故情報を登録いただいた。対象とする事故は各施設で2018年度に発生した事故のうち約2-30件を施設で任意に抽出した。登録された事故の対象利用者の年代・性別・入所してから事故発生までの入所期間・事故の発生した曜日および時間帯・事故の種別および影響の大きさ・原因(本人要因・サービス要因)等の集計を行った。また、アンケート調査を実施することにより、事故登録フォーマットの検証を行った。
(2)介護施設等ヒアリング
本研究班関係者から推薦のあった施設のうち、ヒアリング依頼に承諾した施設を対象とした。6都府県の老健および特養各4施設、介護医療院1施設、自治体(市町村)1を対象に、ヒアリング調査を実施した。なお、ヒアリング調査は原則として対面で実施したが、新型コロナウィルス感染症の流行拡大防止のため、一部はオンラインまたは書面での調査とした。
2018年度に作成した事故登録フォーマットを用いて老健から事故情報を登録いただいた。対象とする事故は各施設で2018年度に発生した事故のうち約2-30件を施設で任意に抽出した。登録された事故の対象利用者の年代・性別・入所してから事故発生までの入所期間・事故の発生した曜日および時間帯・事故の種別および影響の大きさ・原因(本人要因・サービス要因)等の集計を行った。また、アンケート調査を実施することにより、事故登録フォーマットの検証を行った。
(2)介護施設等ヒアリング
本研究班関係者から推薦のあった施設のうち、ヒアリング依頼に承諾した施設を対象とした。6都府県の老健および特養各4施設、介護医療院1施設、自治体(市町村)1を対象に、ヒアリング調査を実施した。なお、ヒアリング調査は原則として対面で実施したが、新型コロナウィルス感染症の流行拡大防止のため、一部はオンラインまたは書面での調査とした。
結果と考察
(1)「介護事故情報収集システム(仮称)」事故情報収集(試行)
6都道府県の8施設から319件の事故情報を登録いただいた。事故の種別は、多い順に「転倒・転落」(124件、39.6%)、「その他療養上の世話」(84件、26.8%)、「スキントラブル」(38件、12.1%)であった。ただし、登録対象とする事故は各施設で事故事例から一部を抽出したものであり、抽出基準は施設の任意としたため、種別ごとの発生件数や発生率は全体の状況を反映していない点に留意する必要がある。また、アンケートには8施設中7施設から回答いただいた。1事例あたりの平均入力所用時間については「10分未満」が4施設、「10-20分」が3施設であった。入力が難しかった項目および不要と思う項目として、「発見者(職員)または当事者(職員)の職種・経験年数」「診断名」「原因分析(環境要因)」を回答した施設があった(それぞれ1施設、1施設、2施設)。
(2)介護施設等ヒアリング
6都府県の9施設および1自治体を対象にヒアリング調査を実施した(一部オンラインまたは書面で実施)。いずれの施設においても事故の予防・再発防止等安全に関する委員会が毎月開催されており、発生した事故事例の原因分析等が行われていた。特養においては介護職が中心となって検討が行われている施設が多く、看護師を中心に取り組んでいる老健とは職種の点で差が見られたが、施設内における事故報告(ヒヤリ・ハット報告を含む)の扱いや自治体への報告等の内容に大きな差は見られなかった。
一方、利用者の入所時のリスクアセスメントや職員研修については、病院と同じ敷地に設置されている施設とそうでない場合で多少の差が見受けられた。特に職員研修の状況については、病院と併設されている施設や病院を含む法人グループに属する施設では併設の病院の研修に介護施設職員が参加していたり法人としての教育・研修プログラムが確立されている施設が多かったが、そうでない場合は施設によってばらつきがある状況がうかがえた。
6都道府県の8施設から319件の事故情報を登録いただいた。事故の種別は、多い順に「転倒・転落」(124件、39.6%)、「その他療養上の世話」(84件、26.8%)、「スキントラブル」(38件、12.1%)であった。ただし、登録対象とする事故は各施設で事故事例から一部を抽出したものであり、抽出基準は施設の任意としたため、種別ごとの発生件数や発生率は全体の状況を反映していない点に留意する必要がある。また、アンケートには8施設中7施設から回答いただいた。1事例あたりの平均入力所用時間については「10分未満」が4施設、「10-20分」が3施設であった。入力が難しかった項目および不要と思う項目として、「発見者(職員)または当事者(職員)の職種・経験年数」「診断名」「原因分析(環境要因)」を回答した施設があった(それぞれ1施設、1施設、2施設)。
(2)介護施設等ヒアリング
6都府県の9施設および1自治体を対象にヒアリング調査を実施した(一部オンラインまたは書面で実施)。いずれの施設においても事故の予防・再発防止等安全に関する委員会が毎月開催されており、発生した事故事例の原因分析等が行われていた。特養においては介護職が中心となって検討が行われている施設が多く、看護師を中心に取り組んでいる老健とは職種の点で差が見られたが、施設内における事故報告(ヒヤリ・ハット報告を含む)の扱いや自治体への報告等の内容に大きな差は見られなかった。
一方、利用者の入所時のリスクアセスメントや職員研修については、病院と同じ敷地に設置されている施設とそうでない場合で多少の差が見受けられた。特に職員研修の状況については、病院と併設されている施設や病院を含む法人グループに属する施設では併設の病院の研修に介護施設職員が参加していたり法人としての教育・研修プログラムが確立されている施設が多かったが、そうでない場合は施設によってばらつきがある状況がうかがえた。
結論
「介護情報収集システム(仮称)」の事故情報登録フォーマットを用いた事故情報登録試行およびアンケートの結果、事故情報登録が可能なこと、いくつかの項目の整理ならびに各項目の定義および対象とする事故事例の定義を明確にする必要があること、他施設での再発防止の取り組みなど、事故予防・再発防止に関する情報に対する要望が強いことが明らかとなった。
老健以外の介護施設として、特養および介護医療院にヒアリングを行った結果、老健同様、特養や介護医療院においても事故の施設内報告のしくみや集計、再発防止に対する取り組みがなされていることがわかった。また、「介護事故情報収集システム(仮称)」についても「他施設での事例や再発防止の取り組みに関する情報が得られるのであれば有用」との意見が聞かれ、概ね好評であった。その一方で、教育・研修の状況に施設によるばらつきがあることもうかがえ、予防・再発防止に資する情報の提供と合わせて質・安全に関する研修の仕組みの確立や研修を受けられる環境の整備も進められる必要がある。
老健以外の介護施設として、特養および介護医療院にヒアリングを行った結果、老健同様、特養や介護医療院においても事故の施設内報告のしくみや集計、再発防止に対する取り組みがなされていることがわかった。また、「介護事故情報収集システム(仮称)」についても「他施設での事例や再発防止の取り組みに関する情報が得られるのであれば有用」との意見が聞かれ、概ね好評であった。その一方で、教育・研修の状況に施設によるばらつきがあることもうかがえ、予防・再発防止に資する情報の提供と合わせて質・安全に関する研修の仕組みの確立や研修を受けられる環境の整備も進められる必要がある。
公開日・更新日
公開日
2020-06-01
更新日
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