在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証

文献情報

文献番号
201916001A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証
課題番号
H30-長寿-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
福井 小紀子(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島勝矢(国立大学法人 東京大学 )
  • 川越雅弘(埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科 )
  • 埴岡健一(国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 藤田淳子(順天堂大学 医療看護学部)
  • 石川孝子(防衛医科大学校 医学教育部看護学科)
  • 藤川あや(日本赤十字看護大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、在宅医療・介護連携の評価について、住民・従事者・コストといった切り口を包含する評価ツールを開発することを目的とした。このツールは主に市町村担当者が活用することを想定し、できるだけ簡便なものを目指した。なお、評価ツール開発にあたっては、政策評価の枠組みとして広く普及しているロジックモデルを意識し、他の事業との比較可能性の担保に努めた。
 また目的の2つは、地域住民を対象に、患者・住民アウトカム(QOLやWell-being)の類似概念(主観的幸福感、生活満足度、人生満足度、主観的健康感)に関する尺度と単項目(各類似概念を1項目で測定しうる項目)について包括的に調査し、概念間の関連性を検討し、在宅医療・介護連携を評価する患者・住民アウトカムとして妥当な指標を提案することとした。
研究方法
 本研究では、在宅医療・介護連携(推進事業)の分野やロジックモデルに明るい研究者及び自治体職員により在宅医療・介護連携の評価枠組み及び評価指標を検討し、暫定的な枠組みを策定した上で、自治体職員・医療介護職・住民を対象としたフォーカスグループインタビューを実施し、さらに枠組みを精錬させた。
 また、住民調査は、協力のえられた2自治体にて無作為抽出した40歳以上の住民2400名を対象に実施した。
結果と考察
 ロジックモデルのアウトカムとして、最終アウトカムにあたる全体目標に加えて、中間アウトカムとして場面別(日常の療養支援・臨時対応・看取りの支援・入退院時の支援)目標を設定した。アウトカムを測定する指標については、Donabedianモデル(ストラクチャー指標・プロセス指標・アウトカム指標)と上記4つの場面による3×4の次元を設定し、その中核となる「日常の療養支援」については全体目標を兼ねる形とした。ヘルスケアの評価枠組みとして海外で言及されているTriple aim、Quadruple aimなどの考え方を援用し、全体目標には「住民」、「従事者」、「コスト」という3つの次元を設けた。また、場面別目標(中間アウトカム)と目標達成のための要件(アウトプット)、取組み内容(アクティビティ)のつながりがイメージしやすいよう、4つの場面(入退院の支援・日常の療養支援・臨時対応・看取りの支援)ごと、適用対象が広いと思われる具体的な要件の例示を行った。
 続いて、全体目標と場面別目標を評価するための指標を示した。ほとんどの項目は医療・介護レセプトで集計可能なものとしたが、住民・従事者の主観的側面を測る指標については、項目を最小化した上で、住民・従事者アンケートによる指標を設けた。住民アンケートによる指標については、文献検討を行い、well-beingを図る主観的指標として主観的幸福感、主観的健康感、生活満足度、人生満足度を取り上げ、多項目から成る尺度と既存の行政指標として用いられている単項目の指標を測定することを目的に、2自治体の住民2400名を対象にアンケート調査を実施した。そして、実際のアンケート結果に基づき、より簡便で適切と考えられる指標として「主観的幸福感」の単項目を提案した。
 住民調査の結果は、1204名(回収率50.2%)から回答がえられた。患者・住民アウトカム指標として、主観的幸福感、人生満足度、生活満足度について尺度(多項目)と単項目間の中程度~強い正の相関がみられたことから、単項目で各概念の測定が可能であると考えられた。さらに、各単項目の相関と文献検討の結果から、主観的幸福感は人生満足度と生活満足度を包含し、さらに人生満足度と生活満足度は関連があること示していると考えられ、生活満足度、人生満足度を包含する主観的幸福感が、在宅医療介護連携のアウトカム指標として最も適していることが示唆された。
結論
 今後、この枠組みに基づいて事業評価や指標の実測が市町村単位で継続的に行われることが期待されるが、特に医療・介護レセプトを用いた集計については、市町村ごと個別に集計処理を行うことは現実的ではなく、より広域の単位で集計プログラム等が提供されることが期待される。また、住民アンケートについては、介護予防事業等と評価指標を揃えることで、住民の状態像によらず主観的な状況を継続的に評価できるようになるため、介護予防・日常生活圏域ニーズ調査等との項目の整合に配慮した運用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2020-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2021-07-14

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201916001B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅医療・介護連携の質に関する評価ツールの開発と検証
課題番号
H30-長寿-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
福井 小紀子(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 川越 雅弘(埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
  • 埴岡 健一(国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 藤田 淳子(順天堂大学 医療看護学部)
  • 石川 孝子(防衛医科大学校 医学教育部看護学科)
  • 藤川 あや(日本赤十字看護大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、在宅医療・介護連携の評価について、住民・従事者・コストといった切り口を包含する評価ツールを開発することを目的とした。このツールは主に市町村担当者が活用することを想定し、できるだけ簡便なものを目指した。なお、評価ツール開発にあたっては、政策評価の枠組みとして広く普及しているロジックモデルを意識し、他の事業との比較可能性の担保に努めた。
 また目的の2つは、地域住民を対象に、患者・住民アウトカム(QOLやWell-being)の類似概念(主観的幸福感、生活満足度、人生満足度、主観的健康感)に関する尺度と単項目(各類似概念を1項目で測定しうる項目)について包括的に調査し、概念間の関連性を検討し、在宅医療・介護連携を評価する患者・住民アウトカムとして妥当な指標を提案することとした。
研究方法
 本研究では、在宅医療・介護連携(推進事業)の分野やロジックモデルに明るい研究者及び自治体職員により在宅医療・介護連携の評価枠組み及び評価指標を検討し、暫定的な枠組みを策定した上で、自治体職員・医療介護職・住民を対象としたフォーカスグループインタビューを実施し、さらに枠組みを精錬させた。
 また、住民調査は、協力のえられた2自治体にて無作為抽出した40歳以上の住民2400名を対象に実施した。
結果と考察
 ロジックモデルのアウトカムとして、最終アウトカムにあたる全体目標に加えて、中間アウトカムとして場面別(日常の療養支援・臨時対応・看取りの支援・入退院時の支援)目標を設定した。アウトカムを測定する指標については、Donabedianモデル(ストラクチャー指標・プロセス指標・アウトカム指標)と上記4つの場面による3×4の次元を設定し、その中核となる「日常の療養支援」については全体目標を兼ねる形とした。ヘルスケアの評価枠組みとして海外で言及されているTriple aim、Quadruple aimなどの考え方を援用し、全体目標には「住民」、「従事者」、「コスト」という3つの次元を設けた。また、場面別目標(中間アウトカム)と目標達成のための要件(アウトプット)、取組み内容(アクティビティ)のつながりがイメージしやすいよう、4つの場面(入退院の支援・日常の療養支援・臨時対応・看取りの支援)ごと、適用対象が広いと思われる具体的な要件の例示を行った。
 続いて、全体目標と場面別目標を評価するための指標を示した。ほとんどの項目は医療・介護レセプトで集計可能なものとしたが、住民・従事者の主観的側面を測る指標については、項目を最小化した上で、住民・従事者アンケートによる指標を設けた。住民アンケートによる指標については、文献検討を行い、well-beingを図る主観的指標として主観的幸福感、主観的健康感、生活満足度、人生満足度を取り上げ、多項目から成る尺度と既存の行政指標として用いられている単項目の指標を測定することを目的に、2自治体の住民2400名を対象にアンケート調査を実施した。そして、実際のアンケート結果に基づき、より簡便で適切と考えられる指標として「主観的幸福感」の単項目を提案した。
 住民調査の結果は、1204名(回収率50.2%)から回答がえられた。患者・住民アウトカム指標として、主観的幸福感、人生満足度、生活満足度について尺度(多項目)と単項目間の中程度~強い正の相関がみられたことから、単項目で各概念の測定が可能であると考えられた。さらに、各単項目の相関と文献検討の結果から、主観的幸福感は人生満足度と生活満足度を包含し、さらに人生満足度と生活満足度は関連があること示していると考えられ、生活満足度、人生満足度を包含する主観的幸福感が、在宅医療介護連携のアウトカム指標として最も適していることが示唆された。
結論
 今後、この枠組みに基づいて事業評価や指標の実測が市町村単位で継続的に行われることが期待されるが、特に医療・介護レセプトを用いた集計については、市町村ごと個別に集計処理を行うことは現実的ではなく、より広域の単位で集計プログラム等が提供されることが期待される。また、住民アンケートについては、介護予防事業等と評価指標を揃えることで、住民の状態像によらず主観的な状況を継続的に評価できるようになるため、介護予防・日常生活圏域ニーズ調査等との項目の整合に配慮した運用が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2020-11-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2024-05-02

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201916001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域包括ケアシステムの評価枠組みは学術的にも政策的にも確立したものがなく、実際の取組みを推進しながら枠組みを構築・改善していく必要がある。政策的には保険者機能強化推進交付金に係る評価指標が設定されたが、現状ではプロセス指標・ストラクチャー指標に関するものにとどまり、発展途上の段階にある。今後アウトカム指標にも視野を広げた評価指標が作成されていく際に、本研究の成果の活用が期待される。
臨床的観点からの成果
本研究で示した評価枠組み・指標により在宅医療・介護連携の評価が市町村単位で実施されるようになれば、医療・介護レセプトから把握できるサービスの利用状況とあわせて分析することにより、個別の在宅医療・介護サービスの質評価にも利用可能であり、臨床の質向上にも資することができる。在宅医療・介護を担う事業者は概して零細であることから、事業者単位の自己評価が難しい場合が多く、市町村による評価支援により、臨床を担う事業者の負担軽減にも資する。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
2019年3月に開催された「厚生労働省委託 平成30年度在宅医療・介護連携推進支援事業データ分析研修会(実施団体: 日本能率協会総合研究所)」において、指標に関するレクチャーの中で、本研究で作成した評価枠組み・指標が紹介された。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
投稿中
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
吉江悟. (2020). 進むデータの利活用: 市町村保健師によるデータ活用の考え方. 保健師ジャーナル, 76(6), 2-6.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第78回日本公衆衛生学会総会, 高知.2019.10
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
吉江悟, (2019.3). 厚生労働省委託 平成30年度在宅医療・介護連携推進支援事業データ分析研修会(実施団体: 日本能率協会総合研究所) 指標について.

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2023-03-28

収支報告書

文献番号
201916001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,575,000円
(2)補助金確定額
3,575,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 239,779円
人件費・謝金 544,565円
旅費 854,980円
その他 1,110,676円
間接経費 825,000円
合計 3,575,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-