5類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究−ドナー評価・管理と術中管理体制の新たな体制構築に向けて−

文献情報

文献番号
201914006A
報告書区分
総括
研究課題名
5類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究−ドナー評価・管理と術中管理体制の新たな体制構築に向けて−
課題番号
19FF1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
嶋津 岳士(大阪大学大学院医学系研究科 救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 裕司(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 吉矢 和久(大阪大学医学部附属病院)
  • 射場 治郎(大阪大学医学部附属病院)
  • 松本 博志(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 市丸 直嗣(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 藤野 裕士(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 中村 元(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 別所 一彦(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松本 博志(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 加藤 和人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学系研究科)
  • 織田 順(東京医科大学 救急・災害医学分野)
  • 田崎 修(長崎大学病院)
  • 中森 靖(関西医科大学総合医療センター)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学医学部)
  • 森松 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 西田 修(藤田医科大学医学部)
  • 齋藤 大蔵(防衛医科大学校防災医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本において脳死下臓器提供が少ない要因の一つとして臓器提供に関わる5類型施設の体制整備が十分でないことが指摘されている。特に「脳死判定」以降のドナー評価・管理や摘出手術術中管理、家族サポート体制については多くの課題があり、体制整備が十分とは言えない。本研究では関係学会、日本臓器移植ネットワーク等の協力を得て、全国の様々な5類型施設が自立してドナー評価・管理、摘出術術中管理、家族サポートを行うことができるように、臓器提供マニュアル・ガイドライン等の作成と体制構築を目指す。
研究方法
本研究では①ドナー評価・管理、②臓器摘出手術の術中管理、③重症救急患者家族のサポート、についてそれぞれ分担班を作り、それぞれの過程におけるマニュアル、手順書の作成を行うこととした。日本移植学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本臓器移植ネットワークの協力を得て、メディカルコンサルタント(MC)制度の現状、課題を抽出するために、現在登録されているMC医師169名に対するアンケート調査と、5類型施設におけるドナー評価・管理の現状・問題点を抽出するために全国の5類型施設に対するアンケート調査を行った。日本麻酔科学会の協力のもと術中管理マニュアル、手順書の素案を作成した。また、家族サポート体制についても現時点で実現可能な支援案を作成した。
結果と考察
MC医師169名に対するアンケート調査では100名から回答を得、MC制度の継続を望む声もあったが、これまで積み上げてきたノウハウを適切に伝達することができれば5類型施設主体のドナー管理への移行は可能であるという考えも多かった。また、拡大基準(マージナル)ドナーや移植臓器の傷害・機能低下についての懸念が特に多く、MCの早期介入がない欠点を補完する適切な手順が課題として指摘された。5類型施設909に対するアンケート調査では397施設より回答を得た。その結果いわゆる選択肢提示を実施していない施設は159施設(41.2%)と多いことが明らかとなった。また、ドナー評価・管理には304施設(83.2%)が困難を感じると回答し、特に人的支援、家族対応、いわゆる選択肢提示や集中治療管理に困難を感じる施設が多かった。これらのアンケート調査結果、ならびに米国集中治療医学会のガイドライン、現在MC医師が使用している「脳死下臓器提供におけるメディカルコンサルタントマニュアル」を参考に、「脳死ドナー管理CQ-A」、「脳死ドナー管理ダイジェスト版」を作成した。また、米国集中治療医学会のガイドラインをもとに脳死ドナー管理マニュアルを作成した。摘出手術術中管理マニュアルについては、麻酔科学会内に臓器摘出手術術中管理マニュアル作成ワーキンググループが立ち上がり、マニュアルと手順書の素案を作成した。ドナー家族サポート体制については、重症救急患者のサポート体制に範囲を広げて行うこととした。結果的にドナー家族となる患者家族は来院時からサポートを必要としていることが多いため、本研究における家族サポートの対象となるのは、来院時に蘇生後脳症、脳卒中、重症頭部外傷等により重篤な意識障害を呈する症例となるからである。患者が「脳死とされうる状態」になれば臓器提供に特化した支援体制を構築する必要があるが、「脳死とされうる状態」にならなければ意識を回復する場合や、植物状態となることが想定される。この場合にも、医療・ケアチームが引き続き患者や家族に寄り添い、最善の医療・ケア方針を決定していくことが望まれる。
結論
今回、ドナー評価・管理、摘出手術術中管理体制、家族サポート体制といったこれまで整備が十分でなかった領域の体制整備をすすめることにより、臓器提供のすべての課程を網羅した質の高い院内体制マニュアルが整備されることになる。これは体制が整っている施設の質を更に向上させ、体制が整っていない施設の体制整備につながる。こうして臓器提供施設の質を上げ、その数を増加させることは、ドナーと家族の意思を尊重し、その意思の確実な実現につながる。また、メディカルコンサルタントの不足やその役割など、現行体制の具体的な課題に関する調査結果を反映させることによって、漸進的に新たな臓器提供体制を構築し、臓器提供施設、移植施設、臓器移植ネットワークなど関係各機関の連携強化と負担軽減に資する。加えて、これまで十分ではなかったドナー家族サポート体制のモデルを構築することは、ドナー家族の精神的サポートを強化するだけでなく、臓器移植に対する国民の意識・理解向上につながる。

公開日・更新日

公開日
2021-01-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-01-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201914006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,287,000円
(2)補助金確定額
8,287,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,014,911円
人件費・謝金 0円
旅費 4,064,289円
その他 1,295,800円
間接経費 1,912,000円
合計 8,287,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
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