脳死下・心停止下における臓器・組織提供ドナー家族における満足度の向上及び効率的な提供体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
201914002A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死下・心停止下における臓器・組織提供ドナー家族における満足度の向上及び効率的な提供体制構築に資する研究
課題番号
H29-難治等(免)-一般-102
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科 救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 尚(埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター)
  • 織田 順(東京医科大学 救急・災害医学)
  • 久志本 成樹(東北大学大学院 医学系研究科外科病態学講座 救急医学分野)
  • 朝居 朋子(藤田医科大学 保健衛生学部 看護学科)
  • 三宅 康史(帝京大学 医学部)
  • 田中 秀治(国士館大学大学院 救急システム研究科)
  • 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
  • 山勢 博彰(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 柴田 尚明(和歌山県立医科大学 救急・集中治療医学講座)
  • 渥美 生弘(聖隷浜松病院 救命救急センター)
  • 加藤 庸子(藤田医科大学ばんたね病院 脳神経外科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,858,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の脳死下、心停止後臓器提供数は他の先進諸国と比較すると極端に少ない。その理由の一つとして、救急や脳外科施設で脳死とされうる状態になった患者家族に対して臓器提供に関する情報提供(いわゆる“選択肢提示”)が十分になされていないことが指摘されている。
過年度の当研究班の報告から脳死下臓器提供に係る人的、時間的負担を背景にいわゆる選択肢提示を躊躇する五類型施設が多いことが明らかになっている。本研究班は平成29年度に家族の心情や医療機関の実情を考慮し、法的脳死判定や脳死下臓器提供時の様々な手順に関してテキスト作成を計画し、出版することを目標に掲げた。また、いわゆる選択肢提示を誰がどの時点で行うべきかという視点から、どのような職種、例えば医師や看護師だけでなく、メディカルソーシャルワーカー(MSW)などの職種もチーム医療の一員として関与することが出来るかを検討することとした。そのような中、脳死患者だけでなく救命が困難な、あるいは救命できたとしても重篤な後遺症が予想される急性期重症患者家族の心理的サポートを行う入院時重症患者対応メディエーター(仮称)の重要性を考え、その人材育成を行うことも目標とした。
研究方法
家族の心情や医療機関の実情を考慮し、法的脳死判定や脳死下臓器提供時の様々な手順に関してテキスト(臓器提供ハンドブック:へるす出版)を出版する作業を行った。本テキストは過去の臓器提供の経験数に応じた項目立てがなされていることと図やイラストを多用して解説しているのが特徴とした。また、いわゆる選択肢提示を誰がどの時点で行うべきかという視点から、医師や看護師だけでなく、例えばメディカルソーシャルワーカー(MSW)などの職種もチーム医療の一員として関与することが出来ることを示すこととした。そのような中、脳死患者だけでなく急性期重症患者家族の心理的サポートを行う入院時重症患者対応メディエーター(仮称)の重要性を考え、人材育成の立場から教材作成、人材育成を目的としたパイロットセミナーを2回開催するための調整をした。また、本研究の中で脳死下臓器提供した場合の医師に負担として最も大きい要因は書類作成、特に事後検証のための書類作成が主治医の負担であることが明らかにし、より効率的で正確な検証が可能な検証フォーマット、検証体制について本研究班で検討、提案することとした。その際、提案したフォーマットの記載時間を現在使用しているフォーマットの記載時間と比較することとした。
結果と考察
臓器提供施設となりえる急性期医療施設に勤務する医師(救急医、脳神経外科医、集中治療医など)、看護師、またJOTや組織コーディネーターの立場から現在の臓器提供に関する課題の抽出はほぼ予定通りに終了し、その解決に向けての成果物を公表することができた。例えば、上記に記載したような特徴を有し、過去の臓器提供の経験数に応じた項目立てがなされていることと図やイラストを多用して解説したテキスト(臓器提供ハンドブック:へるす出版)を出版した。本テキストは編集に際して関連学会、すなわち日本救急医学会、日本脳神経外科学会など8学会の協力を得た。さらに、医学的検証のための検証フォーマット案を提示し、記載するための時間が現行のフォーマットに比較して大きく短縮できたことを明らかにした。また、脳死患者だけでなく急性期疾患の重症患者とその家族の心理的サポートを行う重症患者メディエーター(仮称)の重要性を検討し、人材育成のための教材、プログラムを作成し、2回のパイロットセミナーを開催することができ、当初の目標を達成できたと考えている。
結論
臓器提供体制の課題を医師、看護師、またJOTや組織コーディネーターの立場から検討し、それぞれの視点から解決法を示した。その中でも、過去の脳死下臓器提供の経験数に応じた対応を解説するテキスト(臓器提供ハンドブック:へるす出版)が発刊され、救急医療施設や脳神経外科施設などが臓器提供をする際の有用なマニュアルになると考えている。また、脳死下臓器提供後の医学検証、斡旋の検証を提案した。今後、実際の検証作業に応用されることで、現在の検証と比較してより効率的で公正な検証が可能となることが期待される。さらに、脳死患者だけでなく急性期疾患の重症患者とその家族の心理的サポートを行う重症患者メディエーター(仮称)の重要性を検討し、人材育成のための教材、プログラムを作成し、パイロットセミナーも2回ほど開催した。これらの研究成果から、いわゆる選択肢提示をする機会が増え、臓器提供数の増加が見込まれると考えている。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201914002B
報告書区分
総合
研究課題名
脳死下・心停止下における臓器・組織提供ドナー家族における満足度の向上及び効率的な提供体制構築に資する研究
課題番号
H29-難治等(免)-一般-102
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科 救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 尚(埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター)
  • 織田 順(東京医科大学 救急・災害医学分野)
  • 久志本 成樹(東北大学大学院 医学系研究科外科病態学講座 救急医学分野)
  • 朝居 朋子(藤田医科大学 保健衛生学部 看護学科)
  • 三宅 康史(帝京大学 医学部 )
  • 田中 秀治(国士館大学大学院 救急システム研究科)
  • 名取 良弘(飯塚病院 脳神経外科)
  • 山勢 博彰(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 柴田 尚明(和歌山県立医科大学 救急・集中治療医学講座)
  • 渥美 生弘(聖隷浜松病院 救命救急センター)
  • 加藤 庸子(藤田医科大学ばんたね病院 脳神経外科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本邦の脳死下、心停止後臓器提供数は他の先進諸国と比較すると極端に少ない。その理由の一つとして、救急や脳外科施設で脳死とされうる状態になった患者家族に対して臓器提供に関する情報提供(いわゆる“選択肢提示”)が十分になされていないことが指摘されている。その理由の一つは脳死下臓器提供に係る人的、時間的負担を背景にいわゆる選択肢提示を躊躇する五類型施設が多いことである。本研究班では平成29年度から家族の心情や医療機関の実情を考慮し、法的脳死判定や脳死下臓器提供時の様々な手順に関してテキスト作成を計画し、出版することを目標とした。さらに、提供施設の負担となっている脳死した臓器提供後の医学的検証に使用する検証フォーマットをより正確で効率的な方法とするため書式案を提示することとした。また、いわゆる選択肢提示を誰がどの時点で行うべきかという視点から、どのような職種、例えば医師や看護師だけでなく、メディカルソーシャルワーカー(MSW)などの職種もチーム医療の一員として関与することが出来るかを検討することとした。そのような中、脳死患者だけでなく救命が困難な、あるいは救命できたとしても重篤な後遺症が予想される急性期重症患者家族の心理的サポートを行う入院時重症患者対応メディエーター(仮称)の重要性を考え、その人材育成を行うことも目標とした。
研究方法
 家族の心情や医療機関の実情を考慮し、法的脳死判定や脳死下臓器提供時の様々な手順に関して初年度は標準的な手法の動画を作成した。2年度からはそれをもとに過去の臓器提供の経験数に応じた項目立てと図やイラストを多用したテキスト(臓器提供ハンドブック)の編集作業に入り、最終年度の令和元年9月に出版した。編集には日本救急医学会、日本脳神経外科学会など関連の8学会の協力を得た。本テキストでは例えばメディカルソーシャルワーカー(MSW)などの職種もチーム医療の一員として関与することが出来ることを示した。そのような中、脳死患者だけでなく急性期重症患者家族の心理的サポートを行う入院時重症患者対応メディエーター(仮称)の重要性を考え、人材育成の立場から教材作成、人材育成を目的としたパイロットセミナーを2回開催することとした。また、本研究の中で脳死下臓器提供した場合の医師に負担として最も大きい要因は書類作成、特に事後検証のための書類作成が主治医の負担であることが明らかにした。そこで、より効率的で正確な検証が可能な検証フォーマット、検証体制について本研究班で検討、提案することとした。
結果と考察
 臓器提供施設となりえる急性期医療施設に勤務する医師(救急医、脳神経外科医、集中治療医など)、看護師、またJOTや組織コーディネーターの視点から現在の臓器提供に関する課題を抽出し、その解決策や検討結果の成果物を公表することができた。例えば、過去の臓器提供の経験数に応じた項目立てがなされ、法的脳死判定や脳死下臓器提供時の様々な手順に関してイラストを多用したテキスト(臓器提供ハンドブック:へるす出版)を出版した。本テキストの編集に際しては関連学会、すなわち日本救急医学会、日本脳神経学会、日本集中治療学会、日本麻酔科学会の協力を得た。さらに脳死患者だけでなく急性期疾患の重症患者とその家族の心理的サポートを行う重症患者メディエーター(仮称)の重要性を検討し、人材育成のための教材、プログラムを作成し、2回のパイロットセミナーを開催することができた。また、本研究の中で脳死下臓器提供した場合の医師に負担として最も大きい要因は書類作成、特に事後検証のための書類作成が主治医の負担であることが明らかにし、より効率的で正確な検証が可能な検証フォーマット、検証体制について本研究班で検討、提案することができた。以上から、当初の目標は達成できたと考えている。
結論
 臓器提供体制の課題を医師、看護師、またJOTや組織コーディネーターの立場から検討し、それぞれの視点から解決法を示した。その中でも、過去の脳死下臓器提供の経験数に応じた対応を解説するテキスト(臓器提供ハンドブック:へるす出版)が発刊され、救急医療施設や脳神経外科施設などが臓器提供をする際の有用なマニュアルなると考えている。また、脳死下臓器提供後の医学検証、斡旋の検証手順を提案した。今後、実際の検証作業に応用されることで、現在の検証と比較して大幅に効率的で公正な検証が可能となることが期待される。さらに、脳死患者だけでなく急性期疾患の重症患者とその家族の心理的サポートを行う重症患者メディエーター(仮称)の重要性を検討し、人材育成のための教材、プログラムを作成し、パイロットセミナーも2回ほど開催した。これらの研究成果から、いわゆる選択肢提示をする機会が増え、臓器提供数の増加が見込まれると考えている。

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2021-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201914002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先進諸国と比較して極端に少ない脳死下臓器提供の背景として脳死下臓器提供に係る人的、時間的負担が存在する。臓器提供時の様々な負担を軽減するために、Web入力を想定した効率的で正確な事後検証のための検証フォーマットの提案、脳死下臓器提供時の留意点や手順をわかりやすく解説した臓器提供ハンドブック出版、例えば脳死されうる状態となった患者等の家族に対する意思決定支援を行う重症患者対応メディエーター育成に向けた教材の作成を行った。
臨床的観点からの成果
重篤な救急患者の家族に対して精神的な支援や医療側からの様々な説明、例えば治療法の選択等々に関して患者家族の意思決定支援を行う業務を担う人材である入院時重症患者対応メディエーター(仮称)を養成するためにテキスト・教材の作成を開始した。そのような活動の中で、脳死とされうる状態となった患者家族に臓器提供の情報提供や提供に向けた意思決定支援も行うことが可能となる。同時に日本救急学会と連携し、このような職種の活躍に診療報酬を算定することを厚労省に要望することとした。
ガイドライン等の開発
過去の脳死下臓器提供の経験数に応じた脳死下臓器提供時の留意点や手順についての解説書である臓器提供ハンドブックを研究班の成果物として2019年の10月に出版した。経験の比較的多い施設と、経験のない施設など3段階に分けて、実際の脳死下臓器提供やシミュレーションを行う際にそれぞれの段階でどの項目がより重要であるか、あるいはポイントとなる部分を強調して執筆している。表やイラストを多用し、理解しやすい工夫も行った。
その他行政的観点からの成果
脳死下臓器提供した場合の医師に負担として最も大きい要因は書類の作成であることが明らかになった。特に、事後検証のための書類作成は主治医には負担が大きく、より効率的で正確な検証が可能な検証フォーマット作成の必要性が明らかになった。そのため、令和元年度は医学検証が効率的で正確な検証が出来るようにWeb登録を想定したエクセル方式の新フォーマットを作成した。実際に経験した症例で新フォーマットを記載してみると、大幅な時間短縮が可能で、作成した新フォーマットの早期導入を提案した。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201914002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,615,000円
(2)補助金確定額
6,430,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,185,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,180,765円
人件費・謝金 238,062円
旅費 1,512,870円
その他 1,741,724円
間接経費 1,757,000円
合計 6,430,421円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-