文献情報
文献番号
201913008A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の関節リウマチ診療の標準化に関する臨床疫学研究
課題番号
H30-免疫-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
針谷 正祥(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 宣(京都大学 大学院医学研究科)
- 井上 永介(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 金子 祐子(慶応義塾大学 医学部)
- 川人 豊(京都府立医科大学 医学研究科)
- 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
- 河野 正孝(京都府立医科大学 医学研究科)
- 小嶋 俊久(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 小嶋 雅代(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部 ロコモ研究室)
- 齋藤 和義(産業医科大学 医学部)
- 酒井 良子(東京女子医科大学 医学部)
- 杉原 毅彦(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 鈴木 康夫(東海大学 医学部)
- 瀬戸 洋平(東京女子医科大学 医学部)
- 田中 榮一(東京女子医科大学 医学部)
- 田中 真生(京都大学 大学院医学研究科)
- 中島 亜矢子(三重大学 医学部附属病院)
- 中野 和久(産業医科大学 医学部)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 西田 圭一郎(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 平田 信太郎(広島大学 病院)
- 藤井 隆夫(和歌山県立医科大学 医学部リウマチ・膠原病科学講座)
- 松下 功(金沢医科大学 医学部)
- 村島 温子(国立開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 森信 暁雄(神戸大学 大学院医学研究科)
- 森 雅亮(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、わが国のRA診療の現状と問題点を解析し、日本リウマチ学会(JCR)が2014年に発表したRA診療ガイドラインの改訂を通じて、今後のリウマチ対策およびRA患者のQOL向上に寄与することを目的とする。
研究方法
3つの分科会を設置し、JCRと連携しつつ研究を遂行した。RA疫学研究分科会では、登録患者の年齢構成に偏りのないナショナルデータベース(JNDB)を用いて、わが国におけるRA人口の推定と有病割合、RA患者の年齢分布と年齢別推定RA患者数、有病割合の算出、リウマチ治療薬の処方現況、都道府県別の有病割合、受診医療施設の特徴、RAの合併病態、手術等を検討した。RA関連リンパ増殖性疾患分科会では日本リウマチ学会と連携して3つのデータベースを解析し、LPD発生率、RA発症あるいは免疫抑制薬開始からLPD発症までの期間、LPD発症に先行する徴候、検査異常、LPDの臨床病理学的特徴、LPD発症後の経過,退縮率と生命予後,再発率と再発例の特徴、LPD退縮/寛解後のRA治療を検討した。RA診療ガイドライン分科会では、昨年度に引き続き、GRADE法を用いてRA診療ガイドラインを作成した。アウトカム全般に対するエビデンスの強さ、益と害のバランス、患者の価値観や優先度、コストなどを考慮し、患者代表3人を含むガイドラインパネル会議で討議し、推奨の強さと同意度を決定した。患者の意見をエビデンスとして反映させることを目的として自記式アンケート調査を実施した。JNDBの解析では、厚生労働省の規定により、東京女子医科大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号4838)。本研究では、すでに匿名化されたデータを用いるため、個人情報等に関する倫理面での配慮の必要は無い。RA患者におけるLPDの疫学研究では、DB1および2については各参加施設の倫理委員会の承認を受けて施行した。
RA診療ガイドライン改訂は、既存のエビデンスに基づいて診療ガイドラインを作成し、新たな臨床試験・研究は実施していないため、倫理面での配慮の必要はない。
RA診療ガイドライン改訂は、既存のエビデンスに基づいて診療ガイドラインを作成し、新たな臨床試験・研究は実施していないため、倫理面での配慮の必要はない。
結果と考察
JNDBの解析により、日本のRA人患者数を82.57万人、有病割合0.65%と算出した。女性は69,831例76.3%、男女比1:3.21であった。RA患者9,815例を3年間(24,294.5person-years)追跡したコホートにおけるLPDの標準化罹患比(SIR)は5.99[4.30-7.68]であり、IORRA、SECURE、NinJaなどの国内の代表的RAレジストリの結果と同程度であった。3つのデータベースにおける発症平均年齢は67-68歳、女性例が66-77%、RA罹病期間は11-12年であった。LPD発症時のRA治療薬の検討では、MTXが80-90%に使用されており、生物学的製剤使用例が16-23 %みられた。MTXの平均投与量は約週8mg,投与期間は中央値で週6mg前後、累積投与量は中央値で2000mg前後であった。多変量解析により、年齢、MTXがLPDの危険因子として抽出された。RA診療ガイドライン分科会では、各クリニカルクエスチョンの担当者が作成したエビデンスプロファイルを踏まえてガイドラインパネル会議で討議し、55の推奨文とその推奨の強さ、同意度を決定した。薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、メトトレキサート(MTX)を含む疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)については、文献を追加して検討し、RA診療ガイドライン2014をアップデートした。生物学的製剤は、MTX効果不十分時の薬剤選択や減量にも言及し、前回のガイドラインの項目になかった高齢者治療やJAK阻害剤の推奨を加えた。非薬物療法では、手術療法、リハビリテーションもRA診療ガイドライン2014をアップデートし、また、主な罹患関節の手術手技の推奨の項目を増やして作成した。ライフイベントに対応したガイドラインとしての役割を考慮し、成人移行期、周産期、医療経済についても今回の改訂に含めることとしたが、これらの領域はエビデンスが十分でないため、薬物治療・非薬物治療とは別章にしてその解説を記載する方針とした。
結論
本研究班に設置した3分科会での研究は順調に進んだ。2020年度には各分科会での研究を完成させ、結果を学会・論文発表すると共に、それらを統合したRA診療ガイドライン2020を公表する。これらの成果により、RA患者QOLの最大限までの改善、ライフイベントに対応したきめ細やかな支援に寄与することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2020-10-12
更新日
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