アレルギー疾患における標準治療の普及と均てん化に向けた研修プログラムの開発研究

文献情報

文献番号
201913001A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患における標準治療の普及と均てん化に向けた研修プログラムの開発研究
課題番号
H29-免疫-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター アレルギーセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター )
  • 成田 雅美(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,144,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国を含む先進国では、約半世紀前からアレルギー疾患が急増し、今や国民の半数近くが何らかのアレルギー疾患を経験する時代になっている。なかでも、アトピー性皮膚炎はアトピーマーチの起点に位置する疾患であるが、アレルギー疾患の中では薬剤の貢献度が高いにも関わらず、治療満足度が低い疾患であり、医師や医療スタッフへの教育による診療水準の向上と患者満足度の改善が期待できる疾患である。食物アレルギーに関しては、根拠のない指導をしている専門医が多いという調査結果が平成25年度のアレルギー疾患対策の均てん化に関する研究(研究代表者:斎藤博久)により明らかとなり、日本アレルギー学会は専門医教育の改善に努力することとなった。そこで、本研究はアレルギーマーチの起点となるアトピー性皮膚炎と問題の多い食物アレルギーの診療の改善を中心に気管支喘息や消化管アレルギーの診断と治療に関する基本的知識と治療技法も加えた総合アレルギー診療の水準を向上させ均てん化を推進するための医師および医療スタッフの教育と診療支援および効果測定を目的とするプログラムを開発する。
研究方法
令和元年度は、平成29年度・平成30年度において実施された医師向け研修プログラムの評価結果のもと、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の二本柱に加えてさらに気管支喘息、アレルギー性鼻炎(アレルゲン免疫療法を含む)を充実させ開発された教育研修プログラム「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」を実施し、地域の小児科医だけでなく都道府県拠点病院に既に在勤する医師をも対象に、本研修プログラムの評価結果を検討した。
教育研修プログラムの評価方法は、前年度までと同様にKirkpatrickの4段階の評価概念に基づき,反応(満足度)評価、学習(知識スキル)評価、行動(実際の行動変容)評価を参加者による評価を通して行い、評価項目である行動評価(自己評価)は研修開始時と終了後約半年における自己評価により行った。
多施設共同ランダム化比較研究により小児アトピー性皮膚炎の患者指導をPAEと医師の指導を比較した。
アレルギー非専門医が「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」を簡便かつ的確に作成できる支援プログラムの開発を行った。
結果と考察
令和元年度の小児科専門医向け研修には、全国より15名の小児科医が本研修に参加し、うち約半数がアレルギー疾患医療都道府県拠点病院から参加した。研修参加者の知識・スキルに関する評価では概ね効果が認められ、研修前後の行動変容が得られたことが確認された。一方で、評価項目には載らない入院加療中の超重症難治症例への診療実際や患者教育などに接することで、都道府県拠点病院の重要な責務である重症患者の診療連携の構築にも寄与することが想定された。
小児アレルギーエデュケーター(PAE)によるアトピー性皮膚炎患者への治療初期の患者教育の効果に関する研究は51例のエントリーにて終了した。小児アレルギー診療の患者教育について、施設、医師、看護師を対象に、実態調査、意識調査を実施し80施設からの回答があった。
アレルギー非専門医向け「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」作成できるウェブ支援プログラムを完成させた。
「小児アレルギースキルアップセミナー」に第1回は71名、第2回は76名(平均年齢30, 31才)が参加し、基本的診療スキルへの理解度が大きく向上した。6ヶ月後に行った行動評価では、喘息アドヒアランス評価、呼吸機能検査の実施、アトピー性皮膚炎の重症度評価実施が大きく伸びた。経口負荷試験の実施は前37.6%、後41.1%と改善は少なかった
「食物アレルギーの診療の手引き2017」に関するQ&Aを作成し、web上に公開した
結論
小児科専門医向け小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラムをはじめ、若手医師向けスキルアップセミナー、非専門医向け学校生活管理指導票作成プログラム、食物アレルギー診療の手引き2017に関するQ&A、等、幅広い層の医師向けに提供した研修には顕著な学習効果が認められた。

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201913001B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー疾患における標準治療の普及と均てん化に向けた研修プログラムの開発研究
課題番号
H29-免疫-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大矢 幸弘(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター アレルギーセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
  • 成田 雅美(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
  • 藤澤 隆夫(国立病院機構三重病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国を含む先進国では、約半世紀前からアレルギー疾患が急増し、今や国民の半数近くが何らかのアレルギー疾患を経験する時代になっている。なかでも、アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患の中では薬剤の貢献度が高いにも関わらず、治療満足度が低い疾患であり、医師や医療スタッフへの教育による診療水準の向上と患者満足度の改善が期待できる疾患である。食物アレルギーに関しては、根拠のない指導をしている専門医が多いという調査結果が平成25年度のアレルギー疾患対策の均てん化に関する研究(研究代表者:斎藤博久)により明らかとなり、日本アレルギー学会は専門医教育の改善に努力することとなった。そこで、本研究はアレルギーマーチの起点となるアトピー性皮膚炎と問題の多い食物アレルギーの診療の改善を中心に気管支喘息や消化管アレルギーの診断と治療に関する基本的知識と治療技法も加えた総合アレルギー診療の水準を向上させ均てん化を推進するための医師および医療スタッフの教育と診療支援および効果測定を目的とするプログラムを開発する
研究方法
①医師向け教育研修プログラムにおける研修後の診療への影響と行動変容の評価
2018年度までの研修対象者「一般小児科臨床の十分な経験を有し,自施設でのアレルギー診療を向上させる意志のある卒後3~20年の医師」に加え2019年度からは都道府県拠点病院から参加者を募った。
研修は国立成育医療研究センターアレルギーセンター外来・病棟で行った。新たなプログラムに対応するspecific behavioral objectives(SBOs)とそれに準じたテキスト・指導要項を作成し、教育方略や指導担当者もそれに準じて設定した。参加者の指導はアレルギーセンターの医師が行った。
教育研修プログラムの評価はKirkpatrickの4段階の評価概念に基づき,反応(満足度)評価、学習(知識スキル)評価、行動(実際の行動変容)評価を参加者による評価を通して行った。反応評価は,研修プログラムの内容・量・教育方略・支援体制について研修終了時に4段階リッカートスケールで行い、学習評価は研修開始時と終了時に4段階リッカートスケールの自己評価で行った。行動評価(自己評価)はこれまでと同様に、診療行動に関して研修開始時と終了後約半年における、可否二区分の自己評価を実施した。
②小児アレルギーエデュケーター(PAE)によるアトピー性皮膚炎患者への治療初期の患者教育の効果に関する研究:初診で受診した年齢6ヶ月から10歳未満のアトピー性皮膚炎の患者およびその保護者を対象に、A群はPAEによる患者教育群、B群は医師による患者教育群とし、ランダム化比較試験を行った。
③小児アレルギー診療における患者教育の現状調査:日本小児臨床アレルギー学会会員を対象に、小児アレルギーの患者教育に関して、施設対象の実態調査、医師対象の意識調査、看護師対象の意識調査を実施。調査方法は、web回答による無記名調査方法。
④学校生活管理指導表作成支援ツールの開発:管理指導表記載に関する問題について、医師と学校の教師に対してアンケート調査を行い、その結果をもとに、「学校生活管理指導表」作成支援ツール(ウエブプログラム)の開発を行った。その他、卒後10年までの小児科医を対象とした「小児アレルギースキルアップセミナー」を開催して、Kirkpatrickの4段階の評価概)に基づき,参加者の反応(満足度)、学習(知識スキル),行動(実際の行動変容)について研修開始時と6ヶ月後にそれぞれ評価した。
結果と考察
医師向けの研修プログラムにおける反応評価では研修内容について高い満足度が得られ、研修前後での学習到達度の変化は全ての設問項目において向上していた。6か月後の行動変容に関しては、全ての項目で前後での向上が認められた。これらの結果を考慮し、さらに気管支喘息やアレルギー性鼻炎の内容を充実された医師向けの教育研修プログラム「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」を作成した。また、非専門医向けのアレルギー管理指導票作成プログラムの開発やメディカルスタッフを活用した患者教育の充実も膨大な数の患者の診療における診療水準の均てん化には貢献が期待される
結論
「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」は研修参加者の知識・スキルの向上に概ね効果的であったと考えられ、研修前後における研修参加者の行動変容に寄与していた。食物アレルギー診療に加え、アトピー性皮膚炎、気管支喘息やアレルギー性鼻炎におけるガイドラインに基づいた標準的診療についての内容がプログラムに追加されたが、新規の内容についての学習評価、行動変容も得られていることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2020-08-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-08-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201913001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アレルギー疾患対策基本法の基本理念を実現するため、「小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラム」として医師向け教育研修プログラムを開発・実施した。Kirkpatrickの4 段階の評価概念に基づく医師の学習目標到達度、行動変容における研修前後の設問項目は全てにおいて向上、6か月後の行動変容に関してもほぼ全ての項目で前後での向上が認められ、本研修プログラムが標準治療の普及と医療資源の地域格差の解消に貢献し、診療水準・診療効率の向上に寄与することが期待される。
臨床的観点からの成果
アレルギー疾患の良好なコントロールにはチーム医療実践が重要であり、アレルギー専門メディカルスタッフの養成と活用が必要である。本研究により専門メディカルスタッフによる患者指導の効果は医師と劣らないことが証明され、今後より多くの適切な患者教育により医療均てん化の貢献が期待される。またアレルギー非専門医でも簡便にかつ的確に学校生活管理指導表を記入するための支援アプリを作成した。日本学校保健会のホームページに掲載して全国から利用可能としており、今後の医療均てん化への寄与が期待される。
ガイドライン等の開発
作成に関わったガイドラインは、「小児気管支喘息治療管理ガイドライン2020と2023」、「食物アレルギーの診療の手引き2023」及びそれに関するQ&A、2021年には「食物アレルギー診療ガイドライン2023」、「アトピー性皮膚炎診療管理ガイドライン2021」が発行された。2024年は、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」の作成中である。
その他行政的観点からの成果
本研究班において検討された内容や、開発された教育研修プログラムは、研究終了後においてもアレルギー疾患対策基本法に基づくアレルギー疾患医療提供体制整備事業において、アレルギー疾患医療中心拠点病院ならびに都道府県拠点病院において実践される施設専門研修に活用されている。
その他のインパクト
本研修プログラムにおいては、回診を含めた実際の入院患者の診療を見学するため、最重症アレルギー患者に対する診療の実際、応用行動分析に基づいた患者教育や信頼関係の構築なども体験することが出来る。研修評価項目に載らないものの、重症患者に対する治療ニーズを認知出来ることは重要な評価点の1つである。重症患者への適切な診療連携は都道府県拠点病院の重要な責務であり、国民の診療満足度向上にも繋がる課題であることから、本研修プログラムが診療連携に貢献することも期待されている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
アレルギー疾患医療提供体制事業における「アレルギー疾患に係る医師等に対する研修支援」のB研修プログラムに反映されている。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
2024-11-14

収支報告書

文献番号
201913001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,287,000円
(2)補助金確定額
9,287,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,039,353円
人件費・謝金 4,652,724円
旅費 528,640円
その他 659,868円
間接経費 2,143,000円
合計 9,023,585円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-05-08
更新日
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