文献情報
文献番号
201912002A
報告書区分
総括
研究課題名
腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築
課題番号
19FD2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 浩一(学校法人埼玉医科大学 医学部)
- 守山 敏樹(国立大学法人 大阪大学 キャンパスライフ健康支援センター)
- 南学 正臣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
- 山縣 邦弘(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
- 要 伸也(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部)
- 伊藤 孝史(国立大学法人 島根大学 医学部)
- 旭 浩一(学校法人岩手医科大学 医学部)
- 向山 政志(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 内田 治仁(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 服部 元史(学校法人東京女子医科大学 医学部)
- 北村 健一郎(国立大学法人山梨大学 総合研究部)
- 福井 亮(学校法人慈恵大学 東京慈恵会医科大学 医学部)
- 丸山 彰一(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 猪阪 善隆(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
- 花房 規男(学校法人東京女子医科大学 医学部)
- 石倉 健司(学校法人北里研究所 北里大学 医学部)
- 中島 直樹(国立大学法人 九州大学 大学病院)
- 神田 英一郎(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
17,046,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成30年に発出された「腎疾患対策検討会報告書~腎疾患対策の更なる推進を目指して~」に基づき、CKD対策の進捗管理、社会実装への展開を行う。全国各地の腎疾患対策を評価・分析し、PDCAサイクルを回し、継続的に腎疾患対策を実施する体制を構築することを目的とする。
研究方法
次の分科会・WGを構築して実施する。1)普及、啓発:医療従事者、行政機関、患者・家族、国民全体にCKDにいて普及啓発を行いより多くの人が腎疾患対策を実践する体制を構築することを目標とする。2)診療連携体制構築:かかりつけ医、腎臓専門医、地方公共団体等の連携推進によるCKD重症化予防に取り組む。3)好事例の共有:大都市・小都市、地方での好事例を把握し、構造化して横展開を促進する。4)人材育成:CKDに関する基本的な知識を有する療養指導士等の人材を育成する。5)研究開発・国際比較:ESRD・腎代替療法の実態の国際比較、CKDの成因の相違・特徴、海外のCKD診療体制の調査、ESRD,RRT(移植を含む)の海外動向、海外のCKD対策成功事例の調査を行う。6)トランジション・移行期医療:小児期発症CKD患者の成人医療への移行に関する実態把握及び、円滑な移行支援策を構築する。7)高齢者CKD診療のあり方:高齢者CKD診療における論点を整理し、QOLを配慮した高齢者腎代替療法、在宅腎代替療法のあり方について調査する。8)CKD患者のQOLの維持向上を図る体制の構築:論点整理を行い、適切な療法選択の推進、QOL維持向上に資する提言を行いガイドラインへの反映を目指す。
結果と考察
1)普及、啓発:各地で行政との連携が不十分であることが判明した。これを解消するために、厚労省の支援のもと、全国12ブロック単位で腎臓病協会CKD対策部会の都道府県代表と行政担当者も含めたブロック会議を開催することとした。本年度は中国、東京・南関東ブロックで開催した。行政担当者の参加を得て各地の事例共有、両者が顔の見える関係になったことは有意義であり、問題の解決に向けて協働していくことを確認した。今後は他ブロックにも拡大していく。また、アンケート、認知度調査の実施によりCKD対策の現状やCKD認知度はまだ低く地域差があることが分かった。2)診療連携体制構築3)好事例の共有:CKD対策部会の都道府県代表、腎臓専門医およびかかりつけ医を対象としたアンケート調査を行った。CKD診療における病診連携体制の構築および診療レベルの向上については課題が残されていることが判明した。4)人材育成:腎臓病療養士の制度完備を行い第3回目の資格認定に向けた準備を進めた。今後は地域偏在も考慮したさらなる育成を進めるとともに、腎臓専門医と連動した地域活動、糖尿病療養指導士等の他の療養士との連携を推進していく。5)研究開発・国際比較:CKDおよびESRD診療体制の海外での実態の情報収集を行い、特に国際的な臨床研究のエンドポイントの在り方およびConservative Kidney Management の状況の情報を収集した。腎臓病治療薬開発のハードルとなっているエンドポイントを検討して臨床試験を行いやすくする環境作りが重要であるという点で、国際的に認識が一致した。6)トランジション・移行期医療:日本小児腎臓病学会ならびに本班の普及・啓発資材開発ワーキンググループと連携して小児CKD患者の移行期医療支援ツール(患者・家族・関係者向けパンフレット)を作成し、日本小児腎臓病学会HPで公開した。7)高齢者CKD診療のあり方:現在の欧米における当該分野の進展について国際学会、国際学術誌を通じて情報を得、わが国での普及啓発に資する資料を作成した。8)CKD患者のQOLの維持向上を図る体制の構築:今年度の検討からは①低栄養や消耗といった高齢者にみられる症状・所見②抑うつ、不安といった精神心理的な徴候③介助者、社会・経済という患者自身を取り巻く環境が、QOLと深い関連を持つ可能性が示唆された。多職種介入(栄養士,理学療法士、臨床心理士、看護師、ケアマネジャー他)の重要性が再認識されるとともに、実際の介入の方策・その効果の評価についての検討が必要と考えられた。
結論
本研究課題は、腎疾患検討会報告書で設定されている今後のCKD対策の全体目標を達成するために、全国のCKD対策の司令塔の確立、役割の明確化、各地における診療連携体制の構築、好事例の共有と横展開、普及啓発共通資材の作成と配布、紹介基準の普及と診療レベルの向上、移行期医療の実態把握と支援策の構築、人材育成、CKD患者QOL維持向上を図る体制構築に取り組んでいる。今年度の研究結果よりこれらの取り組みの重要性と問題点がますます明らかとなった。研究成果を次年度以降さらに発展させ、本邦の腎臓病診療の質向上、医療への貢献を果たしたい。
公開日・更新日
公開日
2020-05-26
更新日
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