文献情報
文献番号
201911090A
報告書区分
総括
研究課題名
スモンに関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
久留 聡(独立行政法人国立病院機構 鈴鹿病院)
研究分担者(所属機関)
- 新野正明(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター臨床研究部)
- 千田圭二(独立行政法人国立病院機構岩手病院脳神経内科)
- 中嶋秀人(日本大学医学部内科学系神経内科学分野)
- 小池春樹(名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学)
- 小西哲郎(警察共済組合京都府支部京都警察病院内科)
- 坂井研一(独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター臨床研究部)
- 笹ケ迫直一(独立行政法人国立病院機構大牟田病院神経内科)
- 橋本修二(藤田医科大学医学部衛生学講座)
- 青木正志(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
- 浅井清文(名古屋市保健所)
- 浅田留美子(大阪府健康医療部保健医療室地域保健課)
- 阿部康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学)
- 井上 学(大阪市立総合医療センター神経内科)
- 大江田知子(独立行政法人国立病院機構宇多野病院臨床研究部)
- 大竹敏之(東京都医学総合研究所運動・感覚システム研究分野難病ケア看護プロジェクト)
- 大西秀典(岐阜大学医学部附属病院)
- 尾方克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院臨床研究部)
- 越智博文(愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学)
- 勝山真人(京都府立医科大学医学研究科)
- 川井元晴(山口大学大学院医学系研究科臨床神経学)
- 菊地修一(石川県健康福祉部)
- 木村暁夫(岐阜大学大学院医学系研究科)
- 吉良潤一(九州大学大学院医学研究院)
- 楠 進(近畿大学医学部)
- 小池亮子(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院臨床研究部)
- 齋藤由扶子(独立行政法人国立病院機構東名古屋病院脳神経内科)
- 佐伯 覚(産業医科大学リハビリテーション医学講座)
- 坂口 学(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター脳神経内科)
- 軸丸美香(大分大学医学部神経内科学講座)
- 嶋田 豊(富山大学大学院医学薬学研究部(医学))
- 白岩伸子(高松伸子)(筑波技術大学保健科学部)
- 杉江和馬(奈良県立医科大学脳神経内科学講座)
- 杉本精一郎(独立行政法人国立病院機構宮崎東病院神経内科)
- 鈴木義広(日本海総合病院)
- 関島良樹(信州大学医学部)
- 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 高田博仁(独立行政法人国立病院機構青森病院脳神経内科)
- 高橋美枝(医療法人高田会高知記念病院神経内科)
- 高橋光彦(日本医療大学保保険医療学部)
- 瀧山嘉久(山梨大学大学院総合研究部医学域神経内科)
- 田中千枝子(日本福祉大学社会福祉学部)
- 谷口 亘(和歌山県立医科大学運動機能障害総合研究開発講座)
- 築島恵理(北海道庁保健福祉部健康安全局地域保健課)
- 津坂和文(独立行政法人労働者健康安全機構釧路労災病院神経内科)
- 土居 充(独立行政法人国立病院機構鳥取医療センター神経内科)
- 峠 哲男(香川大学医学部)
- 豊岡圭子(独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター脳神経内科)
- 豊島 至(独立行政法人国立病院機構あきた病院脳神経内科)
- 鳥居 剛(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター脳神経内科)
- 長嶋和明(群馬大学医学部附属病院脳神経内科)
- 中村 健(横浜市立大学医学部リハビリテーション科学)
- 西岡和郎(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)
- 狭間敬憲(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター神経内科)
- 長谷川一子(独立行政法人国立病院機構相模原病院神経内科)
- 花山耕三(川崎医科大学リハビリテーション医学教室)
- 濱田晋輔(医療法人北祐会北祐会神経内科病院)
- 濱野忠則(福井大学医学部付属病院脳神経内科)
- 原 英夫(佐賀大学医学部神経内科)
- 福留隆泰(独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター臨床研究部)
- 舟川 格(独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院神経内科)
- 古川大祐(愛知県保健医療局健康医務部)
- 寳珠山稔(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 松田 希(福島県立医科大学脳神経内科学講座)
- 松本理器(神戸大学大学院医学研究科)
- 眞野智生(奈良県立医科大学医学部)
- 溝口功一(独立行政法人国立病院機構静岡医療センター)
- 三ツ井貴夫(独立行政法人国立病院機構徳島病院臨床研究部)
- 南山 誠(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院)
- 武藤多津郎(藤田医科大学病院神経内科)
- 森田光哉(自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター/医学部内科学講座神経内科学部門)
- 矢部一郎(北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野神経内科内科学教室)
- 山川 勇(滋賀医科大学内科学講座(脳神経内科))
- 山下 賢(熊本大学大学院生命科学研究部)
- 山中義崇(千葉大学医学部附属病院浦安リハビリテーション教育センター)
- 吉田宗平(関西医療大学神経病研究センター)
- 里宇明元(慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)
- 鷲見幸彦(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本班は、スモンに対する恒久対策の一環として患者の健康管理、原因の追究と治療法の開発を目的とする。本研究では、スモン患者の検診を実施し、神経学的及び老年医学的な観点から全身状態を把握し、療養の状態、福祉サービス利用状況を明らかにしアドバイスや患者支援を行う。同時に、基礎医学的な研究からキノホルム毒性や発症患者の遺伝素因の検討を行う。
研究方法
検診は原則として各都道府県に一人以上配置された班員により毎年行い、全国のデータを集積・解析して、医学的福祉的状況を把握し、対症療法の開発や療養状況の悪化予防を行う。
スモン患者に対する検診は過去30年以上にわたって行われており、データベース化し、時系列的解析を行うことにより、障害者の身体的、機能的、福祉的予後を明らかにする。また、スモンと慢性疼痛の関連性と磁気刺激治療の可能性、リハビリテーション、東洋医学、キノホルム神経毒性、認知症との関連性、スモン患者のキノホルム感受性についても検討を行う。
スモン患者に対する検診は過去30年以上にわたって行われており、データベース化し、時系列的解析を行うことにより、障害者の身体的、機能的、福祉的予後を明らかにする。また、スモンと慢性疼痛の関連性と磁気刺激治療の可能性、リハビリテーション、東洋医学、キノホルム神経毒性、認知症との関連性、スモン患者のキノホルム感受性についても検討を行う。
結果と考察
令和元年度全国スモン検診で484名を診察し、男女比は134:349、平均年齢は81.20±8.3歳であった。検診率は42.7%である。75歳以上の後期高齢者の比率は78.6%、高齢層になるほど女性の比率が高くなった。身体症状としては、指数弁以下の高度視覚障害が9.0%、杖歩行以下の高度運動機能障害が65.7%、中等度以上の異常知覚が69.9%であった。身体随伴症状は98.5%にみられ、白内障、高血圧、脊椎疾患、四肢関節疾患が多く、特に日常生活に対しては白内障と脊椎疾患と四肢関節疾患が大きな影響を及ぼしていた。精神徴候は62.0%、認知症15.4%であった。療養状況は、長期入院または入所の比率の増加傾向となり、全体の3割を占めるに至った。ADLが低下した為に自宅療養から入院・入所をせざるを得ない状況になった患者がさらに増加したと考えられる。
スモン患者検診データベースに2018年度データを追加・更新し、1977~2018年度の延べ人数32,711人と実人数3,857人となった。
介護保険の申請率は80才以上の一般高齢者全体の44.6%と比較しても高い申請率であった。しかし要介護度4~5の重度は17.7%であり、介護保険全体で21.7%なのに比べ介護度は軽くでている。一方スモン患者の要支援1~2が34.5%に対して、全体では28.2%と、スモン患者の障害程度が軽く認定される傾向がみられた。
機能評価ツールNCGG-FATを使用したMCI(軽度認知障害)の検討では、スモン患者は地域高齢者に比べて有症率がやや高く、サブタイプの割合はほぼ同様で非健忘型が多数を占めた。
キノホルム毒性機序に関しては、銅・亜鉛関連蛋白の発現変化、astrocyteに及ぼす作用、脊髄後角における疼痛増強作用の観点から検討がなされた。スモン発症に関する感受性遺伝子の検討も行われ、抗酸化酵素NQO1のC609Tの機能喪失変異は、日本人における平均的頻度と比較し差が見られなかった。またABCCrs3765334(c.G2268A, E857K),ABCC11rs17822931(c.538A, G180R)の両多型についても検討したが差が見られず、SMONとの関連性は低いと考えられた。スモンバイオバンク構築準備を国立長寿医療センターと協力しながら行った。
スモン患者検診データベースに2018年度データを追加・更新し、1977~2018年度の延べ人数32,711人と実人数3,857人となった。
介護保険の申請率は80才以上の一般高齢者全体の44.6%と比較しても高い申請率であった。しかし要介護度4~5の重度は17.7%であり、介護保険全体で21.7%なのに比べ介護度は軽くでている。一方スモン患者の要支援1~2が34.5%に対して、全体では28.2%と、スモン患者の障害程度が軽く認定される傾向がみられた。
機能評価ツールNCGG-FATを使用したMCI(軽度認知障害)の検討では、スモン患者は地域高齢者に比べて有症率がやや高く、サブタイプの割合はほぼ同様で非健忘型が多数を占めた。
キノホルム毒性機序に関しては、銅・亜鉛関連蛋白の発現変化、astrocyteに及ぼす作用、脊髄後角における疼痛増強作用の観点から検討がなされた。スモン発症に関する感受性遺伝子の検討も行われ、抗酸化酵素NQO1のC609Tの機能喪失変異は、日本人における平均的頻度と比較し差が見られなかった。またABCCrs3765334(c.G2268A, E857K),ABCC11rs17822931(c.538A, G180R)の両多型についても検討したが差が見られず、SMONとの関連性は低いと考えられた。スモンバイオバンク構築準備を国立長寿医療センターと協力しながら行った。
結論
スモン患者は高齢化しており、本来の運動機能障害、感覚障害に加え加齢に伴う併発症がADLを低下させている。これに対して、医療、福祉両面からの支援が必要である。スモン風化防止に向けた啓発活動、キノホルム毒性解明の基礎研究が今後も重要である。
公開日・更新日
公開日
2020-08-07
更新日
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