成育医療からみた小児慢性特定疾病対策の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201911089A
報告書区分
総括
研究課題名
成育医療からみた小児慢性特定疾病対策の在り方に関する研究
課題番号
19FC2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 医学部)
  • 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 小松 雅代(奈良県立医科大学 医学部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
33,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童福祉法改正法(平成26年法律第47号)及び「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成27年厚生労働省告示第431号)に示された小児慢性特定疾病対策の適正な実現のため、その推進に寄与する基礎資料を提示することや、実践的基盤を提供することを目的とした。
研究方法
各分担研究者が以下の研究を実践した。
1)小児慢性特定疾病児童等データベースの登録状況(現況値)-平成27~30年度の疾病登録状況-
2)小児慢性特定疾病対策の実施主体ごとの運用の違いに関する検討
3)小児慢性特定疾病を抱える児童等に対する国際生活機能分類(ICF)を用いた支援に関する検討
4)川崎病に対するインフリキシマブ投与の医療経済学的な評価:予備的な研究報告
5)神奈川県国民健康保険診療報酬明細書データを用いた子ども医療費助成の利用状況の分析と小児慢性特定疾病への影響に関する研究
6)小児慢性特定疾病に対するICD-10コード附番に関する検討
7)「小児慢性特定疾病情報センター」ポータルウェブサイトの利用状況と情報発信のあり方に関する検討
8)小児慢性特定疾病指定医の研修プログラム(e-learning)の構築及び運用の検討
9)慢性疾病を有する子どものQOLおよび社会支援等に関する実態調査
結果と考察
現行の小児慢性特定疾病対策の施行に合わせ、新たに構築された小児慢性特定疾病児童等データベースのうち、平成27年度から29年度のデータについて、令和2年3月末日時点の医療意見書の登録数を示した。さらに、年度ごとの登録数を、疾患群別、実施主体別、男女別、年齢階層別に集計した。集計時点での推定登録率は7~8割であり、新制度へ移行されたデータベースにより、登録状況の概要を把握することが可能であると考えられた。全国の実施主体における受給者証の更新月および支給認定の独自運用の有無を調査したところ、更新月は実施主体により差異があり、一部の実施主体では支給認定に独自の追加基準が設けられていた。小児慢性特定疾病患児の生活機能の適切な評価と社会参加の支援のために、疾患群別の上位申請疾患の8疾患について、国際生活機能分類のコードによる医療意見書の情報項目のコーディングを行い、疾患ごとに生活機能を分類し得ることを示した。小児慢性疾病領域への医療経済評価の導入として行った、医療経済ビッグデータを用いた川崎病の治療法選択の費用対効果の分析では、より発展的な検証が、限られた資源の公正な再分配の在り方を検討する際に有用であると期待される結果が得られた。また、国民健康保険の診療報酬明細書データを利用した公費医療の実態に関する検討では、子ども医療費助成の拡充が小児慢性特定疾病の受給に与える影響は、年長児においては少ないことが示唆された。慢性疾病を抱える子どもたちの実情を把握するために行った患者実態調査より、望まれる社会支援の内容は、患児の病状や年齢によって異なること、及び患児の生活の質と学校病院間の連携についての保護者の捉え方には関連が認められることが明らかとなった。
結論
小児慢性特定疾病対策のあり方として、慢性疾病を抱える子どもたちの実情に沿った支援を実現するために、新たな知見を取り入れつつ、国際生活機能分類や医療経済の概念の導入等、制度の方向性について検討するとともに、制度の実施状況や公費医療の実態、および患児の実態に関し、調査分析を行った。それぞれの研究成果を踏まえ、更なる検討を重ねる予定である。また、小児慢性特定疾病児童等データベースが新制度へ移行されてから初めての登録状況の集計を行った。小児慢性特定疾病児童等データベースは、患児の治療状況や病状を横断的に把握し得るデータとしてだけでなく、小児期から成人期へ向けての縦断データとしての利活用を期待されている。さらに、成人を迎えた後を視野に入れた小児慢性特定疾病対策と難病対策の連携強化も求められる課題である。今後も引き続き研究を行い、慢性疾病に対する政策決定に資する資料を提供してゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2020-08-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-30

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911089Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,000,000円
(2)補助金確定額
43,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 182,107円
人件費・謝金 14,086,707円
旅費 136,500円
その他 18,694,686円
間接経費 9,900,000円
合計 43,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
2021-01-29