指定難病の普及・啓発に向けた統合研究

文献情報

文献番号
201911087A
報告書区分
総括
研究課題名
指定難病の普及・啓発に向けた統合研究
課題番号
H30-難治等(難)-指定-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
和田 隆志(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 勉(京都大学 医学研究科)
  • 古澤 嘉彦(武田薬品工業グローバルメディカルアフェアーズ ジャパンメディカルアフェアーズ)
  • 福井 亮(東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科)
  • 秋丸 裕司(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 楠 進(近畿大学 医学部)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学 医学部)
  • 山科 章(東京医科大学)
  • 大木 隆生(東京慈恵会医科大学 医学部外科学)
  • 佐々木 秀直(北海道大学 医学研究院)
  • 照井 正(日本大学 医学部皮膚科学科系皮膚科学分野)
  • 原 章規(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学研究科大学院先端医療開発学)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 小児慢性特定疾病情報室)
  • 横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 越坂 理也(千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関異動】 研究分担者 古澤 嘉彦 変更前:国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科 (~2019年7月31日) 変更後:武田薬品工業グローバルメディカルアフェアーズ ジャパンメディカルアフェアーズ     (2019年8月1日~)

研究報告書(概要版)

研究目的
病法に基づき、指定難病患者への医療費助成や研究の推進等が実施されている。333疾病にまで指定難病は増加したが、軽症高額等の指定難病制度の国民の理解が不十分であることが指摘されており、必ずしも指定難病制度に係る普及・啓発が十分とはいえない現状がある。また指定難病の選定の公平性及び疾患群間の診断基準や重症度分類の整合性や公平性が担保されていないこと、難病患者のデータベース(以下、DBという)が研究へ十分に利活用されていないこと等が問題点として指摘されている。本研究班では①最適な普及・啓発の推進②公平性を担保した施策の継続③効果的なDBの研究応用のための方策を討議することを目的とした。
研究方法
(普及・啓発分科会)指定難病制度の普及・啓発のために最適な電子カルテシステム及び医事会計システムの改良の方法について検討しシステム改良を進めた。システム改良後に、改良に伴う効果(申請率の向上、指定難病制度の普及状況等)を評価するためにアンケートを実施した。またMEDISに登録されていない病名のMEDISへの登録や難病情報センターホームページの英訳を修正した。
(均霑化分科会)現在の重症度分類の疾患群間の整合性、公平性について評価した。重症度分類の整合性、公平性を検討するにあたり、全指定難病に対して適切な疾患群への分類、整理を行った。その後、各指定難病研究班並びに関連学会と連携し、重症度の判断基準について各疾患群でそれぞれ討議した。
(DB分科会)HTLV-1関連脊髄症(HAM)及びウェルナー症候群を対象に指定難病患者DB(難病DB)と研究レジストリのそれぞれのデータを比較検討することで、信頼性や意義について検証した。小児慢性特定疾病児童等DB(小慢DB)と難病DBの連携に関するアンケート調査を行った。小慢DBと難病DBの連携に向けてミトコンドリア病でデータ比較を行う研究計画の作成を進めた。
結果と考察
(普及・啓発分科会)電子カルテシステム及び医事会計システムの改良を進めた。改良に伴う効果を評価するにあたり、アンケートを実施した。アンケート結果は、今後システム導入後に再度同様のアンケートを実施し評価を予定している。システムの改良により医師、患者、医療事務の3者への指定難病に対する普及・啓発が進み、申請率の向上を始めとした指定難病制度の普及・啓発のさらなる推進ヘ繋がる。またシステム改良を行うために告示病名とMEDIS病名が非対応であるという課題に取り組んだ。一次性ネフローゼ症候群等21疾病が登録されていなかった。令和元年6月より21疾病が登録されたもので運用が開始されている。その他、難病法の英訳化に伴い、難病情報センターホームページの英訳を修正した。本邦における指定難病への取組みの海外への普及・啓発に繋がる。
(均霑化分科会)333疾病を15疾患群に分類し整理を行った。疾患群毎の重症度分類を考える際の基本的な考え方を整理し、各関連学会と議論を重ね、重症度分類について整理した。本検討により各疾患群に個別の重症度分類(NYHA分類、CKD分類等)が適応できる可能性を示した。さらに指定難病全体を通して、多くの疾患でModified Medical Research Council、Barthel Index、EQ5D等の基準が適用できる可能性についても示した。今回の重症度分類の考え方が取り入れられることで、疾患群間の公平性が担保され助成の公平性の維持に繋がると考える。
(DB分科会)HAMに関して、117件の検証結果の公表を行った。ウェルナー症候群に関して、患者数6名8件を解析した。難病DBおよびウェルナー症候群レジストリで共通して収集されている性別、生年月、早老性毛髪変化有無、白内障有無、皮膚萎縮有無、皮膚潰瘍有無、鳥様顔貌有無、音声異常有無、糖、脂質代謝異常有無、血族結婚有無を解析対象とした。これらのうち、性別、発症時期以外は一致度が100%であった。小慢DBおよび難病DBに登録されている疾患を担当している研究班や小児科学会を対象にアンケート調査を実施した。結果として、両DBの連結データ利用の希望があり、疾患の経過に関する項目の利用希望が目立った。また両DBで収集すべき評価スケールについては疾患特定的評価スケールや疾患横断的評価スケール(Barthel Index等)の希望が多かった。令和2年度はミトコンドリア病を対象とした検証的研究を予定している。
結論
本研究班では、現在の指定難病制度の課題として考えられる①普及・啓発②重症度分類の整合性・公平性③難病DBのあり方と研究への利活用について検討を行っている。本研究班の研究成果が活用されることで、指定難病の普及・啓発の促進、公平な制度の担保、DBの研究利用のさらなる促進に繋がる。延いては患者の福音に繋がることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2020-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-07-07
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911087Z