難病ゲノム医療に対応した遺伝カウンセリングの実態調査と教育システムの構築に資する研究

文献情報

文献番号
201911084A
報告書区分
総括
研究課題名
難病ゲノム医療に対応した遺伝カウンセリングの実態調査と教育システムの構築に資する研究
課題番号
19FC1010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 秀彦(お茶の水女子大学 基幹研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 小杉 眞司(京都大学 大学院医学研究科)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 川目 裕(東京慈恵会医科大学附属病院 遺伝診療部・小児科学講座)
  • 松尾 真理(東京女子医科大学 遺伝子医療センターゲノム診療科)
  • 佐々木 元子(お茶の水女子大学 基幹研究院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム医療の実現において、難病診療における遺伝カウンセリングの実施が要求されるが、実診療における実装は十分に進んでいるとは言い難い現状がある。そして、ゲノム医学の進展により、遺伝カウンセリング自体も新たな技術に対応する必要が求められるようになってきた。そこで、本研究班では、国内の難病診療施設を対象とした遺伝カウンセリングの現状調査とゲノムカウンセリング教育を構築に資する研究を実施することとした。
研究方法
難病診療施設を対象とした遺伝カウンセリングの現状調査の対象は、令和2年1月の時点で難病情報センターホームページの「難病の医療提供体制」(https://www.nanbyou.or.jp/entry/5215)に掲載された難病診療連携拠点病院、難病診療分野別拠点病院、難病医療協力病院、1543施設である。難病に対する遺伝カウンセリングの提供体制に関する質問紙票調査を実施した。
ゲノムカウンセリング教育の構築に関しては、ゲノム医療に対応した遺伝カウンセリング(以下、ゲノムカウンセリング)の目標を定め、その教育システムを構築するために、国内の遺伝カウンセリング教育を行う専門家を対象とする実地調査とgenomic counsellingの実装が始まっている英国の現地調査実施に関する準備を行った。
結果と考察
難病診療施設を対象とした遺伝カウンセリングの現状調査の調査期間は令和2年2月10日より令和2年3月9日であった。150施設から回答があり(回答率 9.7%)、解析対象は84施設(41都道府県)であった。84施設の内訳は、難病診療連携拠点病院が17施設、難病診療分野別拠点病院が4施設、難病医療協力病院が63施設であった。難病診療における遺伝医療は、難病診療連携拠点病院を軸に、難病診療分野別拠点病院、難病診療協力病院で分業がなされていた。しかし、難病に関わる各種コーディネーターやカウンセラーは比較的少人数で業務を担っていることが明らかになった。施設における難病診療の遺伝カウンセリングの実施・導入における課題としては、「専門職(臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー)がいない」 という回答の4割を占め、次いで「人員が少ない」「遺伝子診療部門がない」が挙げられた。
ゲノムカウンセリング教育の構築に関する調査準備では、まず、網羅的ゲノム解析の臨床応用と関連した職業別能力水準を評価する項目として以下の10項目抽出することができた[1. 網羅的遺伝学的検査で得られたゲノムデータの意義づけをできる。2. 報告されたゲノムバリアントの解釈を各種データベースで再確認できる。3. 検査で得られた病的/病的の可能性が高いバリアントの意味について患者/クライエントに説明できる。4. 検査で得られた意義不明のバリアントの意味について患者/クライエントに説明できる。5. 検査で得られた良性/良性の可能性が高いバリアントの意味について患者/クライエントに説明できる。6. 検査の結果から本人に生じうる心理社会的課題について患者/クライエントと相談できる。7. 検査の結果から家族に生じうる心理社会的課題について患者/クライエントと相談できる。8. 検査で生じる二次的所見の可能性について患者/クライエントに検査前に説明できる。9. 網羅的検査で発見された二次的所見について患者/クライエントに説明できる。10. 検査で得られた結果の解釈が変更される可能性について患者/クライエントに説明できる]。また、英国のgenomic counselling 教育において、コンピテンシーや評価方法は明示されているが、実際の教育場面は明らかではなく、使用している教育資材・誰がどのように指導しているのかといった具体的な教育手法などを読み取ることはできなかった。以上の結果を元に、遺伝カウンセリング教育を行う専門家を対象とする実地調査および英国における現地調査を次年度に実施することとした。
結論
今回の現状調査と教育に関する調査準備から、難病ゲノム医療に対応する遺伝カウンセリングにおいては、遺伝カウンセリングを担当できる職種の雇用と、それに見合う人材養成を促進するために、教育システムの構築に加えて、遺伝カウンセリングを行うことによるインセンティブの形成が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911084Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,640,000円
(2)補助金確定額
3,187,000円
差引額 [(1)-(2)]
453,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 202,939円
人件費・謝金 94,519円
旅費 115,124円
その他 1,935,147円
間接経費 840,000円
合計 3,187,729円

備考

備考
自己資金:729円

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-