先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201911079A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
19FC1005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 普正(学校法人 東海大学 医学部)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学 大学院医学研究院)
  • 高橋 義行(国立大学法人 名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 仁(学校法人 東京女子医科大学 医学部 )
  • 高田 穣(国立大学法人 京都大学 大学院生命科学研究科 )
  • 大賀 正一(国立大学法人 九州大学 大学院医学研究院)
  • 照井 君典(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科)
  • 古山 和道(学校法人 岩手医科大学 医学部)
  • 多賀 崇(国立大学法人 滋賀医科大学 医学部医学科)
  • 小林 正夫(国立大学法人 広島大学 大学院医系科学研究科)
  • 渡邉 健一郎(地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 金兼 弘和(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山口 博樹(学校法人日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主要な先天性骨髄不全症には、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)、ファンコニ貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血 (SA)、先天性赤血球形成異常症(CDA)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)、先天性角化不全症(DC)、先天性好中球減少症(CN)の7疾患がある。本研究では、CDAと鑑別が問題となる先天性溶血性貧血(CHA)も対象疾患に加えて研究を推進する。先行班研究を発展させ、「先天性骨髄不全症のレジストリ」を確立し、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の作成を目指す。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、オミックス解析拠点、日本小児血液・がん学会の疾患登録事業や原発性免疫不全班とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行う。難病プラットフォームを用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。
研究方法
本研究申請では、発症数が少なく共通点の多い先天性骨髄不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(高橋・真部)、DC (高橋、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CHA(菅野))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。令和1年度は、難病プラットフォームを用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、診療ガイドラインの小改訂を行う。令和2~3年度は、データ収集と観察研究を継続し、正確な先天性造血不全の実態把握を行い、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。
結果と考察
各研究拠点は疫学調査、臨床データおよび検体の収集、既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当した。日本小児血液・がん学会の疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。DBAは、15例が新規登録され、8例(60%)に既報の遺伝子変異を認めた。これまでに215例のDBAの臨床情報と検体の収集および遺伝子解析を行い、127例(59.1%)に原因となるRP遺伝子変異を見出した。DBA患者(165名)の追跡調査を行い、造血幹細胞移植 (SCT)の成績を検討した。移植例(27例)の3年全生存率は95.2%、3年無治療生存率は88.4%と極めて良好であり、骨髄破壊的前処置と強度減弱前処置の間で治療成績に有意差が認めないことが明らかになった。SAは、1例の新規症例が登録され、エクソーム解析を行った結果、本邦では報告のないHSPA9遺伝子の変異が認められ、機能解析を進めている。FA患者の117例中113例(97%)で原因遺伝子を同定し、我が国のFA患者の疫学、臨床病態を解明することができた。なお、FAの新規症例は疑い例を含めて4例であり、3例で原因遺伝子を同定した。SDSは、新たに2例がSBDS遺伝子変異解析により確定診断されたが、うち1例は20歳であった。昨年度も成人骨髄異形成症候群症例で、SDSと診断された例があり、思春期・若年成人で診断される例もあることが確認された。2017年にSDSに類似した疾患群としてフランスから報告されたSRP54遺伝子変異を、CNの2家系3例で初めて同定した。2014年から2019年の5年間に溶血性貧血319例を解析し、全体の72.1%に病型を確定した。本研究班で得られたデータをもとに、治療ガイドラインの小改訂を行った。さらに、難病プラットフォームを用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進めるため、研究計画書を作成し、京都大学医学部の「医の倫理委員会」に中央倫理審査を依頼した。
結論
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。DBA患者(165名)の追跡調査を行い、SCTの成績が明らかになった。3年全生存率は95.2%と極めて良好であり、合併症の少ない強度減弱前処置と骨髄破壊的前処置との間で治療成績に有意差を認めなかった。FA患者のほとんど(97%)に原因遺伝子を同定し、我が国のFA患者の疫学、臨床病態を解明することができた。本年度は、研究班で得られたデータをもとに、診断ガイドラインの小改訂を行った。難病プラットフォームを用いた「先天性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進めた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911079Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,210,000円
(2)補助金確定額
15,210,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,717,138円
人件費・謝金 0円
旅費 715,270円
その他 292,383円
間接経費 3,510,000円
合計 15,234,791円

備考

備考
自己資金:24,790円
利息:1円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14