文献情報
文献番号
201911077A
報告書区分
総括
研究課題名
新規の小児期の疼痛疾患である小児四肢疼痛発作症の診断基準の確立と患者調査
課題番号
19FC1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 野口 篤子(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 原田 浩二(京都大学 大学院医学研究科)
- 奥田 裕子(京都大学 大学院医学研究科)
- 秋岡 親司(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
- 吉田 健司(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は、家族性に乳幼児期から発作性に四肢の激烈な疼痛を反復する、という症状を示す日本人家系を対象に原因遺伝子の探索を行い、SCN11A遺伝子(Nav1.9)の病的バリアントを特定し(Okudaら,PLOS ONE 2016)、2016年に「小児四肢疼痛発作症」と命名した。本疾患はこれまで見過ごされてきた疾患であり、著しいQOLの低下と長期の療養を必要とすることからも、診断・病態解明・治療の確立が必要と考えた。
本研究では、全国的な症例の実態把握を行った上で診断基準の確立、ガイドラインの策定を行うことを目的とする。
本研究では、全国的な症例の実態把握を行った上で診断基準の確立、ガイドラインの策定を行うことを目的とする。
研究方法
最初に全国患者調査に向けて、これまでに把握された患者情報に基づく疾患基準案、全国一次調査での拾いあげ基準を作成した。 それを踏まえ以下の方法で疫学調査を実施した。
1)抽出された全国の対象医療機関にむけ、一次調査の依頼文書、疾患の概要説明文書、本調査における臨床症状の拾い上げ基準を郵送する。約1ヶ月の回収期間を経て2020年4月を目処に一次調査結果をまとめた。
一次調査における調査内容:過去3年間(2017-2019)における、各施設での診療経験の有無と人数。同封の臨床症状の調査基準を参考に回答いただくこととした。
調査の実施にあたり、「(難治性疾患政策研究事業)難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究班(中村班:中村好一教授)」との共同研究としてリエゾンとしての研究協力者(岐阜大学和田恵子准教授)が研究班に参加された。前述の暫定診断基準をもとに「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第3版」に則り、配布文書を作成して倫理申請書と共に秋田大学医学部倫理審査委員会へ提出し、承認を得た。抽出率は以下のように設定した。
1)特別階層病院として全国のこども病院を含める。患者が集中する小児神経研修認定施設152(うち大学病院76)、小児膠原病専門施設59(うち大学病院36)は、これらに包含される。
2)本来299床以下の機関抽出率は20%、10%、5%と推奨されているが、症例が少ないことが予想され、299床以下の病院の抽出率を4倍引き上げて実施する。
2)二次調査(次年度に継続)
1)抽出された全国の対象医療機関にむけ、一次調査の依頼文書、疾患の概要説明文書、本調査における臨床症状の拾い上げ基準を郵送する。約1ヶ月の回収期間を経て2020年4月を目処に一次調査結果をまとめた。
一次調査における調査内容:過去3年間(2017-2019)における、各施設での診療経験の有無と人数。同封の臨床症状の調査基準を参考に回答いただくこととした。
調査の実施にあたり、「(難治性疾患政策研究事業)難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究班(中村班:中村好一教授)」との共同研究としてリエゾンとしての研究協力者(岐阜大学和田恵子准教授)が研究班に参加された。前述の暫定診断基準をもとに「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第3版」に則り、配布文書を作成して倫理申請書と共に秋田大学医学部倫理審査委員会へ提出し、承認を得た。抽出率は以下のように設定した。
1)特別階層病院として全国のこども病院を含める。患者が集中する小児神経研修認定施設152(うち大学病院76)、小児膠原病専門施設59(うち大学病院36)は、これらに包含される。
2)本来299床以下の機関抽出率は20%、10%、5%と推奨されているが、症例が少ないことが予想され、299床以下の病院の抽出率を4倍引き上げて実施する。
2)二次調査(次年度に継続)
結果と考察
結果
A. 全国疫学調査前の暫定診断基準作成
全国患者調査に向けて、まずこれまでの患者調査に基づき暫定診断基準を作成した。
B. 本疫学調査において用いた調査基準と疾患概要説明
一次調査にていかの調査基準を用いることとした。
以下のA).B).C) の3項目に加え、 1)-3) のうち2項目以上を満たすもの。
A) 乳幼児期に始まる、反復性の発作性疼痛
B) 疼痛発作は四肢に限局され、体幹には生じない。
C) 疼痛発作は月に数回以上の頻度を有する。
1) 家族歴を有する。
2) 寒冷、低気圧・悪天候、疲労のいずれかが疼痛発作の誘因となる。
3) 疼痛は耐え難く、日常生活上の支障や睡眠障害を伴う。
加えて、班員にて討議した疾患概要についてまとめ、一次調査依頼書に付記した。
C. 一次調査回答状況
2020年2月に全国医療機関を対象とした1次調査を行った。一次調査送付先は、方法の項目にて上述した手順に則り、1597施設を抽出した。その結果、
1)返信数:985施設(回答率:61.7%)、基準を満たす症例ありの施設:36施設(班員の6施設を含む)。
2)基準を満たす症例数:62名。このなかには班員の施設からの22名を含む。
考察
班員の討議において合意に達し、疾患概念と診断基準の素案を作成できた。次年度には、全国調査の結果とregistry のさらなる蓄積で、診断基準の疾患概念の最終案の作成が予定通り達成できる見通しである。
A. 全国疫学調査前の暫定診断基準作成
全国患者調査に向けて、まずこれまでの患者調査に基づき暫定診断基準を作成した。
B. 本疫学調査において用いた調査基準と疾患概要説明
一次調査にていかの調査基準を用いることとした。
以下のA).B).C) の3項目に加え、 1)-3) のうち2項目以上を満たすもの。
A) 乳幼児期に始まる、反復性の発作性疼痛
B) 疼痛発作は四肢に限局され、体幹には生じない。
C) 疼痛発作は月に数回以上の頻度を有する。
1) 家族歴を有する。
2) 寒冷、低気圧・悪天候、疲労のいずれかが疼痛発作の誘因となる。
3) 疼痛は耐え難く、日常生活上の支障や睡眠障害を伴う。
加えて、班員にて討議した疾患概要についてまとめ、一次調査依頼書に付記した。
C. 一次調査回答状況
2020年2月に全国医療機関を対象とした1次調査を行った。一次調査送付先は、方法の項目にて上述した手順に則り、1597施設を抽出した。その結果、
1)返信数:985施設(回答率:61.7%)、基準を満たす症例ありの施設:36施設(班員の6施設を含む)。
2)基準を満たす症例数:62名。このなかには班員の施設からの22名を含む。
考察
班員の討議において合意に達し、疾患概念と診断基準の素案を作成できた。次年度には、全国調査の結果とregistry のさらなる蓄積で、診断基準の疾患概念の最終案の作成が予定通り達成できる見通しである。
結論
国内での詳細が明らかになっていない新規疾患「小児四肢疼痛発作症」について、日本での患者頻度、診断、病態、QOLなどの現況を把握する目的で全国調査を開始した。
次年度にかけて引き続き二次調査の継続、および診断基準、診療ガイドラインの作成や関連学会(日本小児科学会や小児神経学会など)における承認を目指す。
次年度にかけて引き続き二次調査の継続、および診断基準、診療ガイドラインの作成や関連学会(日本小児科学会や小児神経学会など)における承認を目指す。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
-