指定難病患者データベース、小児慢性特定疾病児童等データベースと他の行政データベースとの連携についての研究

文献情報

文献番号
201911074A
報告書区分
総括
研究課題名
指定難病患者データベース、小児慢性特定疾病児童等データベースと他の行政データベースとの連携についての研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-019
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
野田 龍也(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 久保 慎一郎(公立大学法人奈良県立医科大学・ 医学部附属病院・技師)
  • 和田 隆志(国立大学法人 金沢大学・ 医薬保健研究域医学系・教授)
  • 原 章規(国立大学法人 金沢大学・ 医薬保健研究域医学系・准教授)
  • 古澤 嘉彦(武田薬品工業株式会社・ジャパンメディカルオフィス・メディカルエキスパート)
  • 盛一 享徳(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・ 小児慢性特定疾病情報室・室長)
  • 秋丸 裕司(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所・ 難治性疾患研究開発・支援センター  難治性疾患治療開発・支援室・ 研究調整専門員)
  • 小松 雅代(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の保健医療分野のデータベース(DB)は、政府主導でDB間の連携等が推進されている。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は我が国の保険診療の悉皆調査であり、世界最大級のヘルスデータである。本研究は、難病施策への反映を念頭に、NDBや介護保険総合データベース(介護DB)と指定難病患者データベース(難病DB)、小児慢性特定疾病児童等データベース(小慢DB)との連携及び結合に関する利点や課題を整理し、DB間の連携及び結合に必要な解決策を具体的に提示するとともに、実際にNDBを利用して指定難病等に係る臨床上、施策上の集計を行うことである。
研究方法
令和元年度(2019年度)は、難病DB及び小慢DBとNDB・介護DBとの結合・連携に関する論点整理を行うとともに、NDB等を用いた個別疾患の疾患定義確立(バリデーション研究)に着手し、全指定難病のNDB集計を試行的に実施した。
1.データベース結合の論点整理:DBの連携と結合の違いを整理するとともに、DB同士の結合を行う際、一意かつ共通の識別子(医療等IDなど)の存在が重要であること、そのような識別子が存在しない現状においては、DBの連携にはいくつかの段階があること、DBの連携・結合に向けた課題は、医療等ID(一意かつ共通のID)の実現前と後で異なると考えられ、また、法令、行政手続、倫理、技術的課題といった課題の種別ごとの検討が重要であること、これらの課題が解決されてDBが結合された場合のメリット・デメリットは現在の患者・家族、主治医、未来の患者、当事者(患者・家族・主治医)以外の一般市民、行政、研究者、民間の7つのステークホルダー別に検討する必要があることをまとめた。2.NDBを用いた疾患定義・集計:指定難病の疾患定義について、疾患名と難病加算を同時に用いる手法を提示した。指定難病の3疾患を例とするNDB疾患定義(疾患バリデーション)の試行的な構築やステロイドパルス療法の患者数の集計、医療費の集計を行い、対象を全指定難病に広げた患者数集計や医療費分析(平均医療費、医療費の時系列分析)を本邦で初めて実施し、結果を公表した。(1)3疾患を例とするNDB疾患定義 (疾患バリデーション)実際のバリデーション研究の前段階(予備研究)として、指定難病のうち、潰瘍性大腸炎(UC)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)の3疾患について推計した。(2)ステロイドパルス療法 3疾患に対するステロイドパルス療法の実施状況についてNDB集計を行った。(3)指定難病患者の医療費分析(3疾患)33疾患を対象に、難病加算が初めて算定された(≒難病の診断を初めて受けた)と推定される全国の患者について、その前後12ヶ月間の医療費を集計した。(4)全指定難病(333疾患)の患者数集計 指定難病333疾患について、病名のみ、病名と難病加算あり、病名と難病加算なしの3パターンでNDB集計を行った。(5)全指定難病患者の医療費分析 指定難病333疾患について、(3)と同様の医療費分析を行った。
結果と考察
1.データベース結合の論点整理
医療系DBの連携と結合にはいくつかの段階があることを示した。DBの連携・結合の課題は、医療等ID(一意かつ共通のID)の実現前と後で異なる。また、法令、行政手続、倫理、技術といった課題の種別ごとの検討も重要である。DBの連携・結合に関する幅広い論点を提示し、一部については解決策を提示した。
2.NDBを用いた疾患定義と集計
潰瘍性大腸炎(UC)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)について、NDBを用いたバリデーションを行った。臨床専門家の意見も聞き、多くのパターン(MRIを月に1回使用しているか、特有の薬剤の処方があるか、など)で衛生行政報告例の数値を参照基準として検討した。「当該病名あり(疑い含む)」と「観察期間中に難病加算を算定していること」の2条件が衛生行政報告例の数値に近かった。
3.名寄せの議論
 奈良医大で作成したNDBの名寄せ技術(ID0)を利用すれば、NDBの名寄せだけでなく、小慢から難病に患者が移った際(トランジション)も、NDBをハブとして個人の追跡が可能となる。これは医療等IDの実現前の時期のデータにおいても活用できる。
結論
DBの結合に複数のステージがあることが明らかとなり、結合の感度・特異度が重要であることを提示した。DBの連携・結合の実現に向けた課題と結合のメリット・デメリットを整理した。NDBを用いたバリデーションと集計では、難病加算を同時に用いる手法を提示した。指定難病の患者数の試行的算出と平均医療費を算出した。次年度(最終年度)は、DBの連携・結合に係る課題をさらに整理し、解決策をまとめ、DBの連携・結合のユースケースとメリット・デメリットについて提案する。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911074Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,407,584円
人件費・謝金 809,878円
旅費 934,400円
その他 3,848,138円
間接経費 0円
合計 8,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14