小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究

文献情報

文献番号
201911072A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の発展に資する研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-017
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
檜垣 高史(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 掛江 直子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床研究センター生命倫理研究室・室長)
  • 三平 元(国立大学法人千葉大学 附属法医学教育研究センター・特任講師)
  • 石田 也寸志(愛媛県立中央病院 小児医療センター・小児医療センター長)
  • 高田 秀実(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科 小児科学講座・准教授)
  • 落合 亮太(公立大学法人横浜市立大学 学術院医学群医学研究科 看護学専攻 がん・先端成人看護学・准教授)
  • 滝川 国芳(学校法人京都女子学園 京都女子大学 発達教育学部教育学科・教授)
  • 及川 郁子(学校法人渡辺学園東京家政大学 短期大学部・教授)
  • 樫木 暢子(国立大学法人愛媛大学 大学院教育学研究科教育実践高度化専攻・准教授)
  • 三沢 あき子(京都府立医科大学 小児科・講師)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,232,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成27年1月より、都道府県、指定都市、中核市、児童相談所設置市(以下「実施主体」という)は、幼少期から慢性的な疾病に罹患していることにより、自立に困難を伴う小児慢性特定疾病児童等(以下「小慢児童」という)について、地域支援の充実により自立促進を図るため、小児慢性特定疾病児童等自立支援員(以下「自立支援員」という)を配置する等して小児慢性特定疾病児童等自立支援事業(以下「自立支援事業」という)を実施している。
自立支援事業の実施内容は、実施主体間で差異があることが指摘されており、保育所・幼稚園の就園、就学・学習支援など教育に関連すること、きょうだい、就労に関連すること、等の支援ニーズが高いことが明らかにされた。
自立支援事業の積極的な実施及び内容の充実を図るとともに、地域間格差が生じないようにするため、実態調査をもとに経年的変化を把握して課題を抽出し、引き続き好事例を周知し、自立支援事業実施の手引き及び自立支援員研修教材の作成をすすめるために、ニーズに基づいて以下の研究を計画・施行した。
研究方法
研究1:自立支援事業実施手引き・自立支援員研修教材作成
研究2:自立支援事業の先進事例・好事例等に関する情報収集・分析および保健所における相談支援の実態調査
研究3:自立支援事業全国実施状況調査・分析、移行期医療支援事業との連携に関する情報収集・分析および患者団体における「生活アンケート」調査の監修
研究4:小慢児童の保育所・幼稚園就園実態調査及び就園支援に関する情報収集・分析
研究5:小慢児童の就学・学習支援に関する情報収集・分析
研究6:小慢児童の就職支援、就労支援に関する情報収集・分析
研究7:小慢児童のきょうだい支援に関する情報収集・分析
結果と考察
研究1では、小慢自立支援員として相談支援を担当している研究協力者の相談支援経験をもとに相談概要を収集して架空事例を作成し、収集した架空事例のうち5つの事例について、相談支援対応モデルを作成した。
研究2では、全国保健所を対象とした1次調査を踏まえ2次調査を実施し、好事例集を作成した。小慢医療費助成申請の機会等を活用し、地域支援を必要としている小慢児童を把握し、関係機関と連携のもとに支援を「つなぐ」役割を果たしており、自立支援事業の充実につながることが期待された。
研究3では、経年変化を捉えて課題を抽出し、「生活実態調査」における自立支援関係項目もあわせて分析した。
患者団体が実施した「生活アンケート」結果について監修し、小慢児童の支援、自立支援事業の今後の方向性を検討するうえで、示唆に富む調査結果となった。
研究4では、実態調査とインタビュー調査の2段階で実施した。小児慢性疾患児が保育所で安定的生活を送ることや、保育活動へのスムーズな導入のために、疾病等子どもの状態から保育活動や生活レベルをどの程度整えられるか、入園前の準備・確認など、段階的に支援していくことが必要と考えられた。
研究5では、教育に関する公的施策と自立支援事業との連携の実態を、都道府県等教育委員会および特別支援学校(病弱)への聞き取り調査等により情報収集し分析した。京都府と北九州市において自立支援事業(任意事業)による教育委員会や学校との新たな教育支援システムが構築された事例が確認された。
研究6では、大企業に加えて中小企業を対象に調査し、1516名から有効回答を得た。小慢患者の雇用経験は、「一般枠」は大企業8.4%、中小企業1.7%、「障害者枠」は13.6%、中小企業1.0%であった。雇用にあたって知りたいことは、大企業、中小企業ともに「どのような配慮が必要か」が最多で、中小企業では労働意欲、スキル、能力などがより重視される傾向にあった。雇用にあたり心配なことは、「適当な仕事があるか」が最多であった。自立支援員がいれば役立つと回答した者が大企業54.7%、中小企業73.6%であり、中小企業でニーズが有意に高かった。
研究7では、44のきょうだい支援団体より取組事例について情報収集し、「きょうだい支援団体取組事例集」としてまとめた。日本小児科学会専門医研修施設207施設(回収率42.8%)におけるきょうだい支援の実態を調査した。全体で取り組んでいるのは25.1%に対して、一部スタッフが取り組んでいる17.9%、取り組んでいない56.5%であった。
結論
自立支援事業に関する実態を把握し情報提供することで、全国の自立支援員は、より多くの患者や家族に対して、医療と福祉と教育と就労の機能的融合を視野に入れた、尚一層質の高い相談支援を行うことが可能となる。本研究において収集した支援内容に関する情報を集約した自立支援事業実施の手引き及び自立支援員研修教材を公表することで、自立支援事業の均てん化が可能となり、自立支援事業の尚一層の発展が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911072Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
12,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,526,966円
人件費・謝金 816,876円
旅費 3,621,308円
その他 2,266,850円
間接経費 2,768,000円
合計 12,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14