自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成

文献情報

文献番号
201911070A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
課題番号
H30-難治等(難)-一般-015
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今田 恒夫(山形大学大学院医学系研究科)
  • 惣宇利 正善(山形大学大学院医学系研究科)
  • 尾崎 司(山形大学大学院医学系研究科)
  • 森兼 啓太(山形大学医学部附属病院)
  • 横山 智哉子(山形大学大学院理工学研究科)
  • 和田 英夫(三重大学医学系研究科)
  • 朝倉 英策(金沢大学附属病院高密度無菌治療部)
  • 家子 正裕(北海道医療大学歯学部生体機能病態学系内科学分野)
  • 橋口 照人(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 孔幸(群馬大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「後天性出血症」は誰でも罹患する可能性がある疾病であり、これまでは希少であったが、超高齢社会となった我が国では次第に症例数が増加している。特に「自己免疫性出血症」は難治性疾患であるため、本事業は、本症に含まれる各疾患の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定することが主な目的であり、その治療の均てん化を可能にする。
研究方法
3年間本症症例のデータを集積・分析し、そのエビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の作成や改定、総合的な診療指針の確立や改定及び普及等を行って臨床現場における医療の質の向上を実現させ、広報、講演、ホームページでの公開等を通じて国民へ研究成果を還元する。

全期間:
1)広報活動
 チラシ配布や学会発表で本症の周知を図り、調査活動の成果を研究班、難病情報センターや日本血栓止血学会等のHPで無料公開
2)全国症例調査
a) 毎年同一時期にアンケート用紙を送付して、症例を発掘
b) 症例データベース構築に必須な項目を決定し、厚労省の「難病プラットフォーム(難プラ)」を利用して、症例レジストリを構築
3)臨床研究・調査
a) 症例相談の受付、全国アンケート調査からの症例発掘とJBATによるスクリーニング
b) 統一特別委託検査(計30項目)の実施と解析
c) 研究的精密検査の実施
d) 一次基礎疾患別に、二次性欠乏の機序、要因のデータ収集と解析
e) 危険因子のデータ収集と解析
f) 免疫抑制療法の追跡調査
g) 止血と寛解段階での治療効果の判定等
h) 対象5疾患の症例報告を定期的に文献検索

令和元年度:各疾患の研究結果に基づき診断基準、検査アルゴリズム等を検証、改定する。
1)AiF13D:抗F13自己抗体検出迅速検査を改良し、確定診断した症例情報を蓄積
2)AiF8D:合成基質法によるF8活性測定、残存抗F8自己抗体量による寛解判定等、診療ガイドの更新を検討
3)AiVWFD:抗VWF自己抗体測定システムを改良し、疑い症例の研究的精密検査に試用
4)AiF5D:F5インヒビターと抗F5自己抗体の測定により非中和抗体型症例を確実に診断
5)AiF10D:ALアミロイドーシスとの鑑別診断法を提唱

結果と考察
結果
 今年度は、本症の検査、診断、治療のデータを集積・分析しながら、難プラの患者レジストリ構築の準備をした。具体的な成果としては、症例相談とアンケート調査の結果、合計29症例を研究班事務局リストに登録したこと、研究班ホームページを維持・更新して広報活動に活用したこと、新たにモデル医療機関を追加指定して新規症例の迅速な確定診断と治療開始を可能にする試みを拡大したこと、AMEDプロジェクトで開発した抗F13-Bサブユニット自己抗体検出法を高性能なモノクローン抗体を内製化することによって改良したこと等が挙げられる。

考察
 今年度は難プラレジストリに使用する項目リストを作成して参加経費の見積書を取得したが、追加予算申請が不採択に終ったので、参加は実現しなかった。しかし、難プラに参加する意義は極めて大きいので、来年度は研究班の活動の一部を抑制してでも経費を当初予算に組み込んで実現させたい。 
 本疾患群の「スクリーニング検査」に必要な抗原量の測定、「確定診断」と「治療効果判定」に必要な自己抗体の検出を一般化し、普及させるために、凝固因子に対するモノクローン抗体を内製して、AMED実用化研究で開発した自己抗体検出・測定システムを改良しつつある。今年度は、抗F13Bサブユニット自己抗体検出システムを高感度化することに成功した。今後も、研究班で作製したモノクローン抗体を用いて自家製ELISAキットやイムノクロマトグラフィキットを安定的に使用できるようにしたい。
 自己免疫性凝固因子欠乏症の見逃しを防止するため、非中和型自己抗体を検索すること、治療効果や寛解判定のために抗凝固因子自己抗体量を測定すること、複数の凝固因子に対するインヒビター疑い症例を正確に診断するために、高力価インヒビターの影響を考慮した検査診断アルゴリズムを再構築すること、AiF10Dの鑑別疾患として最も重要なALアミロイドーシスの凝固異常の特徴と抗F10自己抗体の有無等を診断ガイドに追加すること等々を提案・推奨する。


結論
今年度は症例相談と全国アンケート調査の結果、合計29症例を登録することができた。自己免疫性出血症治療の「均てん化」のためには、疾患の周知、スクリーニング用、確定診断用検査の一般化、実態調査が不可欠である。特に疾患の実態把握については、難プラに参加して、新しい症例レジストリを構築することによって長期的な症例の追跡調査が可能になり、より正確な予後を明らかにすることができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911070Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,377,885円
人件費・謝金 1,665,660円
旅費 612,740円
その他 1,343,715円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14