強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究

文献情報

文献番号
201911069A
報告書区分
総括
研究課題名
強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-014
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 公衆衛生学部門)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院 医学研究院)
  • 高木 理彰(山形大学 医学部)
  • 門野 夕峰(埼玉医科大学 医学部整形外科脊椎外科)
  • 小林 茂人(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 大友 耕太郎(慶応義塾大学 医学部)
  • 田村 直人(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 松野 博明(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 中島 利博(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 大久保 ゆかり(小澤 ゆかり)(東京医科大学 医学部)
  • 藤尾 圭志(東京大学 医学部付属病院)
  • 亀田 秀人(東邦大学 医学部)
  • 森 雅亮(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 森田 明理(名古屋市立大学 医学研究科)
  • 中島 亜矢子(三重大学 医学部付属病院)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学 医学研究科)
  • 辻 成佳(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター 臨床研究部 免疫異常疾患研究室)
  • 松井 聖(兵庫医科大学 内科学 リウマチ・膠原病科)
  • 山村 昌弘(岡山済生会総合病院 内科)
  • 中島 康晴(九州大学 医学研究科)
  • 川上 純(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
体軸性脊椎関節炎は世界的に強直性脊椎炎(AS)およびX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎患(nr-axSpA)に分類し、nr-axSpA については仙腸関節X線での構造変化があるか否かの相違のみであり、臨床的症状はASと差がなく、積極的な治療対象となると考えられてきている。我が国でのASおよびnr-axSpAの患者背景、臨床像を明らかにすることを今年度の目的とした。
研究方法
全国疫学調査一次調査で確定診断された症例とに対し二次調査を実施した。
体軸性および末梢性脊椎関節炎診療の手引きに引きの製本化を行った。ベーチェット病に関する調査研究班、難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班にも協力を依頼した。各関連学会(日本脊椎関節炎学会、日本リウマチ学会、日本整形外科学会、日本小児リウマチ学会)でのパブリックコメントを実施した。
難病プラットフォームと連携し脊椎関節炎、SAPHO症候群の疾患レジストリ構築を行った。SAPHO症候群については掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)について、診断・治療ガイドライン策定に向けての検討を開始した。
結果と考察
結果
1)全国疫学調査: AS230人/nr-SpA84人が二次調査の解析対象となった。
ASでは、男女比は3:1、推定発症年齢の中央値は、男性28歳・女性37歳であった。HLA-B27 保有率は検査未実施者及び検査不明者を除くと、55.5%であった。nr-SpAの男女比は1:1で、推定発症年齢の中央値は男女ともに32歳であった。HLA-B27保有率は検査未実施者及び検査不明者を除くと、全体で23.7%であった。男女別では、男性32.3%、女性8.3%であった。鑑別では、49%が鑑別可能であるが、44%が除外不可と回答していた。
治療内容については、NASAIDs実施者は、男性95.3%/女性84.2%であった。DMARSの有効性はASよりも高値であった。生物学的製剤は、男性44.2%/女性47.4%に実施され、TNF阻害剤の高い有効性が示された。
2)脊椎関節炎診療の手引き:体軸性、末梢性、小児脊椎関節炎につき最終案を班会議で議論し、内容につき決定した。各関連学会でのパブリックコメントを実施し、コメントに対する修正を可能な限り実施した。
3)疾患レジストリ構築:脊椎関節炎、SAPHO症候群とも難病プラットフォームと連携して疾患レジストリ構築を行った。
4)SAPHO症候群:本邦でのPAOの臨床像の解析の結果、強直性脊椎炎のように体軸関節の骨強直が進行するタイプが存在することが明らかなとなった。一定の診断基準・治療ガイドラインも存在していないことが明らかとなった。イスラエルとの国際挙動研究解析結果をまとめ国際雑誌に投稿した。
5)市民公開講座
AS友の会、PPP communityの2つの患者団体の協力を得て2019/9/15にASとPAOを取り上げ一般市民向けの講演会を大阪で実施した。

考察
 本邦で初めてnr-ax SpAの臨床像が明らかにされ、本内容は脊椎関節炎診療の手引きにも反映させることができた。HLA B-27保有率はnr-ax SpA女性患者で極端に低くかった。十分な鑑別・除外診断が行われていない可能性が示唆された。わが国では、HLA-B27 の検査を全ての患者に施行することは難しく、正確なHLA-B27保有率は不明であり、今後も継続した調査が必要である。推定患者数が800人とASより更に少なく、実臨床現場で、違う疾患が入り込むことのないように脊椎関節炎診療の手引き中にnr-ax SpA診療ガイダンスを示せた意義は大きいと考えられた。
また脊椎関節炎診療の手引き作成に当たってはご自身がAS患者でもある医師に研究協力者として参画していただき、患者目線からの意見も取り入れながら、作成した。さらに来年度以降関連学会、患者会の協力のもとQ&A集を作成していく予定である。
SAPHO症候群については、今後診断・重症度分類・治療ガイドラインの整備が急務と考えられ令和2年度でPAOに関する診断・治療ガイドラインの骨子を作成する予定である。
疾患レジストリに関して倫理委員会承認後速やかに登録できる環境は整えた。本邦でのAS疾患関連遺伝子検索等AMEDプロジェクトと連携して解析されることが期待される。
市民公開講座は令和2年度は東京で開催予定であり、引き続き一般市民への疾患啓蒙活動を継続する。
結論
体軸性脊椎関節炎の本邦での実態が少しずつ解明され始めてきた。本邦の実情の即した治療指針の修正、および成果を実臨床で診療に携わる医療関係者に浸透するよう活動することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-11-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201911069Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,005,000円
(2)補助金確定額
5,005,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 253,675円
人件費・謝金 284,595円
旅費 2,400,870円
その他 910,860円
間接経費 1,155,000円
合計 5,005,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-03-16
更新日
2021-06-14