健康づくりの成果に関する客観的評価法の確立に関する研究-あいち健康プラザにおける新しい健康度評価-

文献情報

文献番号
199800742A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりの成果に関する客観的評価法の確立に関する研究-あいち健康プラザにおける新しい健康度評価-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
井形 昭弘(あいち健康の森、健康科学総合センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
愛知県では平成9年10月28日に21世紀の長寿社会における健康づくりの拠点として、あいち健康プラザ・健康科学総合センターをオープンし、一次予防時代の具体的な健康づくりの手法として、「健康度評価」と「健康づくり教室」の二つの主要な事業を展開している。
このたびの研究では、これらの事業のうち、「健康度評価」の簡易コースの受検者と「健康づくり教室」の1日コースの受講者のデータを基に、健康づくりの有効性や「健康度評価」の問診、検査、測定項目及び内容の妥当性を評価検証することにより、健康づくりの成果を客観的、実際的に証明することを目的とした。
研究方法
「健康度評価」の「簡易コース」受検者6,459名と「健康づくり教室」の「1日コース」受講者1,135名を対象として、医学的検査、体力測定、問診等のデータについて基本的分析を行なった。これら受検、受講者を対象として生活習慣改善アンケート調査を行なった。また、簡易コースでは、再受検を行いデータ比較を行った。
結果=(1)健康度評価(簡易コース)のデータの基本分析から、全体6,459名の内、21.6%にあたる1,401名が治療中の疾病があり、多いものでは高血圧、糖尿病等の内科系の疾患が533名、腰痛、関節痛系の疾患が713名、両方の疾患が154名であった。健康観では、「非常に健康」(11.6%)、「健康な方だと思う」(73.5%)で、合わせて約85%の人がある程度健康を実感できており、自覚症状との相関がみられた。
生活習慣において、運動習慣のある者は、男性で35.3%、女性で31.1%であった。運動習慣のある者の方がない者より相対的に体力評価は良い傾向を示した。また、休養習慣は、加齢とともに習慣化されている傾向を示した。さらに、栄養習慣は年代間で顕著な差異はないが、女性は男性より評価結果が良い傾向が示された。
高血圧の関連要因は、高血圧者は正常グループと比較して、成人で肥満度、全身持久力で高い傾向を、栄養バランスで低い傾向を示した。高齢者では肥満度で高い傾向を、柔軟性と栄養バランスで低い傾向を示した。
肥満の関連要因は、肥満者は標準グループと比較して、成人は血圧で高い傾向を、全身持久力、筋持久力、運動習慣、休養習慣、食生活習慣、栄養バランスで低い傾向を示した。高齢者では血圧、平衡性、食生活習慣、栄養バランスで高い傾向を示した。
喫煙、飲酒習慣の有無による影響については、喫煙者は非喫煙者と比較して、全身持久力、筋持久力、柔軟性で低い傾向を示した。飲酒習慣の有無による差異は認められなかった。
(2)生活習慣改善アンケートの集計、分析から、健康意識の変化については、「健康をかなり又はある程度実感できる」人の割合が84.1%から89.2%と約5ポイント上昇した。生活習慣の変化については、運動習慣で加齢とともに習慣が身につく傾向を示し、男性より女性に運動習慣の改善意識が高いことを示した。喫煙習慣は男性で喫煙率が下降し、女性で僅かながら上昇しており、特に20代が目立った。飲酒習慣は男性で飲酒を止める傾向を示し、酒量については、男女とも減らす傾向を示した。歯磨き習慣は男性より女性の方が身についていることを示した。
(3)健康づくり教室(1日コース)のデータの基本分析から、健康状態については、既往歴は男女とも腰痛が多く、現病歴で1135名中338名(29.8%)が「あり」と回答し、高血圧、高脂血症、腰痛等が多かった。自覚症状は、男性には腰痛や胃の不調が多く、女性には頭痛や関節痛が多かった。
生活習慣については、ほとんどの受検者が何らかの休養・保健行動を実施していた。男性はスポーツ、女性では食事が多く、次いで男女とも定期検診、体重測定であった。しかし、自由時間の過ごし方は男女とも「テレビ・新聞」が多かった。運動習慣については男女とも年代が高くなるにつれ多くなったが、その習慣がないと回答した者の理由は「時間がない」であった。
(4)生活習慣改善アンケートの集計・分析から、生活習慣の変化は、「変化あり」の人で健康のために始めたことについて全体では「食事・栄養に気をつける」(47.9%)「体調に関心を持つようになった」(44.4%)、「運動をする」(25.4%)、「休養をとる」(12.5%)の順となった。
身体活動量の変化は、「かなり動かす」「少し動かす」を合わせて53%であった。受講後、健康を意識して始めた事柄については栄養・運動・休養の順に意識が高い結果となった。
結果と考察
考察=(1)現病歴の問診項目は、受検、受講者には何らかの疾病を有する人が多く含まれていることから重要と考える。また、健康づくりの処方とその実践指導上も必要性が高いといえる。
健康観と自覚症状には、明らかな相関が認められることから、検査測定結果と平行して本人の自覚や行動力(ADL)に関する問診項目も有効と考えられる。
(2)今回、生活習慣に関する問診と検査測定結果から、血圧、肥満度(BMI)、喫煙習慣および飲酒習慣に関する要因についての検討を行ったが、高血圧者では肥満度、栄養バランス、肥満者では血圧、体力、栄養バランス等との関連が認められ、従来の知見を裏付ける結果となった。ただ、成人の高血圧者に全身持久力が高い傾向が認められた点は、全身持久力の評価が運動負荷に対する心拍数から推定する間接法であることの考慮が必要と考える。また、飲酒習慣では、他の要因との関連に特徴的な点は認められなかったが、喫煙習慣では、体力との関連が認められ、喫煙が体力低下の要因であることを示唆する結果となった。
健康度評価は、その結果から個々の健康、体力、生活習慣の状況を総合的に把握することと、健康づくりへのアドバイス、具体的な処方の根拠となる情報の収集、及び健康、体力、生活習慣の改善状況が評価できることが必要であり、今後、さらに問診、検査測定の項目間における関連性の追加検討が必要と考える。
(3)健康度評価、健康づくり教室を受検、受講した人の多くが、その後、健康づくりを実践している。このことは、二つの手法が健康づくり実践の動機づけとして有効であることを示唆するもので、今後、広くこれらの事業を展開していくための大きな自信が得られた。
結論
今回の研究調査で、あいち健康プラザが、一次予防時代の具体的な健康づくりの手法として提案している「健康度評価」、及び健康度評価と実践指導からなる「健康づくり教室」についての客観的な評価に関するいくつかの手がかりが得られた。
(1)健康度評価(簡易コース)では年間18,000人の受検者が、1日健康づくり教室では1,500人の受講者があり、1次予防の健康増進を意識する人達のニーズに応えることの重要さが認識できた。
(2)健康づくりの「Check and Do」を基本コンセプトとした健康度評価、健康づくり教室の内容について、妥当性の確認と再検討をすすめる糸口が得られた。
(3)調査対象数がやや少ないが、健康づくりへの実践行動の動機づけとして、有効であることの客観的なデータが得られた。今後、調査対象数の積み上げ、再検査、追跡調査の実施、行動変容や医療に対する意識等の調査を行うことで当初の目的を完遂したい。

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