小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための診療体制の整備に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201911048A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための診療体制の整備に向けた調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-054
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 満(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 雅敬(東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)
  • 賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
  • 櫻井 育穂(埼玉県立大学 保健医療福祉学部看護学科)
  • 田中 恭子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科)
  • 掛江 直子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 生命倫理研究室)
  • 平田 陽一郎(北里大学 医学部 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 小児医療の進歩の結果、小児期発症の慢性疾患の死亡率が減少し、疾患を持ちながら成人する患者が増えている。しかし、小児医療では成人特有の病態に対応できないのにもかかわらず、成人した患者が小児医療に留まることが多く、適切な成人移行支援が提供されているとは言いがたい。
 多くの小児医療機関がこの問題に苦慮しており、また、「移行支援センター」によってそれを支援することになった自治体もどのように対応すればよいかわからなくて困っているのが実情である。
 そのため、本研究班では、「成人移行支援コアガイド」を作成し、全国の小児医療機関、自治体に配付することを目的とした。その際に、わが国の成人移行支援の現状を把握するために、配付と同時にアンケート調査を計画した。
研究方法
 平成27年度から行われた「小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業」で実際に成人移行支援を行った経験や、米国母子保健局の「Six Core Elements of Health Care Transition 2.0 」などを参考に、分担研究者による話し合いを行い、初年度の「成人移行期支援コアガイド」を発展させた「成人移行支援コアガイド」を作成させる。特に参考資料の充実をはかり、実際に使用しやすい「コアガイド」を目指す。また、今後、全国各地の都道府県に設置される「移行期支援センター」で活用できるマニュアルとするために、自治体の担当職員、成人診療科の医師と話し合う。
 完成した「成人移行支援コアガイド」を全国の小児医療機関(小児医療センター、大学病院など)、各都道府県、政令指定都市、中核都市に配付する。また、同時に配布時アンケート調査を行う。
結果と考察
 「成人移行支援コアガイド」の初版を完成させた。参考資料は版権の許可を得て幅広く網羅し、22の参考資料をコアガイドにつけることができた。
 作成した「成人移行支援コアガイド」は、日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)加盟37施設、JACHRI加盟施設を除く113の大学病院、47都道府県庁の担当部署、78の政令指定都市および中核都市の担当部署の、計275か所に配付した。その際に、同時にアンケート調査を行った。この配布時に行ったアンケートによって、現在のわが国における成人移行支援の実態が明確になった。成人診療への移行の現状は、「ほぼ移行できている」は5%のみで、「ほとんど成人診療科に紹介できていない」が約2割を占めていた。成人移行支援プログラムが有ると答えたのは7施設のみであり、多くの病院でプログラムがない中で組織が作られ、現場で多くの問題に直面してる実態が明らかになった。一方で、成人移行支援の組織を作ることができない理由で一番多かったのが、「成人移行支援のプログラムがない」であった。
結論
 小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための「成人移行支援コアガイド」を完成させた。全国計275か所の医療機関と自治体に配付し、現在、使用して頂いている。
 配布時アンケートの結果をみても、「成人移行支援コアガイド」が求められていることは明らかであり、今後も改訂を進め、成人診療科の医学会の協力も得ながら、より良いものにしていく予定である。「成人移行支援コアガイド」によって、少しでも多くの医療機関、自治体で組織作りが進み、現状の問題が一つずつ解決されていくことを期待している。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911048B
報告書区分
総合
研究課題名
小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための診療体制の整備に向けた調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-054
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 満(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 本田 雅敬(東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)
  • 賀藤 均(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
  • 櫻井 育穂(埼玉県立大学 保健医療福祉学部看護学科)
  • 田中 恭子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科)
  • 掛江 直子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 生命倫理研究室)
  • 平田 陽一郎(北里大学 医学部 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 小児医療の進歩の結果、小児期発症の慢性疾患の死亡率が減少し、疾患を持ちながら成人する患者が増えている。しかし、小児医療では成人特有の病態に対応できないのにもかかわらず、成人した患者が小児医療に留まることが多く、適切な成人移行支援が提供されているとは言いがたい。
 多くの小児医療機関がこの問題に苦慮しており、また、「移行支援センター」によってそれを支援することになった自治体もどのように対応すればよいかわからなくて困っているのが実情である。
 そこで、すべての疾患に共通の基本となる、小児診療から成人診療への成人移行支援の普及を目的として、平成27年度から行われた「小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業」で実際に成人移行支援を行った経験や、米国母子保健局の「Six Core Elements of Health Care Transition 2.0 」などを参考に、本研究班で、「成人移行支援コアガイド」を作成・刊行することにした。
 その際に、わが国の成人移行支援の現状を把握することを目的として、配付と同時にアンケート調査も計画した。
 これらの調査研究は、小児期発症慢性疾患を持つすべての患者に対する成人移行支援に大きく寄与すると考えられる。
研究方法
 初年度は分担研究者による話し合いを行い、「成人移行期支援コアガイド」の案を作成する。2年目は初年度の案をもとに、自治体の担当職員とも話し合って、全国各地の都道府県に設置される「移行期支援センター」で活用できるマニュアルとなるように内容を追加する。3年目は、成人診療科の医師とも話し合って、前年度までの成果を発展させた「移行期」にとらわれない「成人移行支援コアガイド」を完成させる。特に参考資料の充実をはかり、実際に使用しやすい「コアガイド」を目指す。
 完成した「成人移行支援コアガイド」を全国の小児医療機関(小児医療センター、大学病院など)、各都道府県、政令指定都市、中核都市に配付する。また、同時に配布時アンケート調査を行う。
結果と考察
 小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための「成人移行支援コアガイド」の初版を完成させた。参考資料は版権の許可を得て幅広く網羅し、22の参考資料をコアガイドにつけることができた。
 作成した「成人移行支援コアガイド」は、日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)加盟37施設、JACHRI加盟施設を除く113の大学病院、47都道府県庁の担当部署、78の政令指定都市および中核都市の担当部署の、計275か所に配付した。その際に、同時にアンケート調査を行った。この配布時に行ったアンケートによって、現在のわが国における成人移行支援の実態が明確になった。成人診療への移行の現状は、「ほぼ移行できている」は5%のみで、「ほとんど成人診療科に紹介できていない」が約2割を占めていた。成人移行支援プログラムが有ると答えたのは7施設のみであり、多くの病院でプログラムがない中で組織が作られ、現場で多くの問題に直面してる実態が明らかになった。一方で、成人移行支援の組織を作ることができない理由で一番多かったのが、「成人移行支援のプログラムがない」であった。
結論
 全国275か所の医療機関、自治体に「成人移行支援コアガイド」を配付し、小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療に移行するために必要な成人移行支援を、全国で推進していただいている。配布時アンケート調査では、ヘルスリテラシー獲得を目的とした自律支援ができていない、成人診療科に紹介できていない、成人移行支援プログラムががない、成人移行支援の組織を作ることができていない、自治体として何から始めれば良いかわからない、などの現状が明らかになった。「成人移行支援コアガイド」にはそれらの解決策が網羅されており、医療機関や自治体が成人移行支援を始める際の重要な指針になると考えられる。「成人移行支援コアガイド」によって、少しでも多くの医療機関、自治体において、組織作りが進み、現状の問題が一つずつ解決されていくことを願ってやまない。
 また、日本小児科学会の移行支援委員会や他の難治性疾患等政策研究班と共に、「成人移行支援コアガイド」と個別の疾患の移行支援プログラムの相補的運用や成人分野の医療機関や医学会との協働も期待される。
 今後、「成人移行支援コアガイド」使用後のアンケートを実施し、その有効性を実証すると共に、それをもとに「成人移行支援コアガイド」に改訂を加えたいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911048C

収支報告書

文献番号
201911048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,760,000円
(2)補助金確定額
6,465,000円
差引額 [(1)-(2)]
295,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 618,390円
人件費・謝金 1,649,451円
旅費 212,400円
その他 2,425,124円
間接経費 1,560,000円
合計 6,465,365円

備考

備考
自己資金:365円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-06-14