文献情報
文献番号
201911045A
報告書区分
総括
研究課題名
間脳下垂体機能障害に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-一般-052
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 寛(名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学)
研究分担者(所属機関)
- 沖 隆(浜松医科大学 医学部 )
- 中里 雅光(宮崎大学 医学部 )
- 岩崎 泰正(高知大学 教育研究部 )
- 高野 幸路(北里大学 医学部 )
- 山田 正信(群馬大学 大学院医学系研究科 )
- 菅原 明(東北大学 大学院医学系研究科 )
- 椙村 益久(藤田医科大学 医学部)
- 高橋 裕(神戸大学 大学院医学系研究科)
- 田原 重志(日本医科大学 医学部 )
- 大月 道夫(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 井野元 智恵(東海大学 医学部 )
- 蔭山 和則(弘前大学 大学院医学研究科 )
- 堀川 玲子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 内分泌代謝科)
- 杉野 法広(山口大学 大学院医学系研究科 )
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部 )
- 水野 晴夫(藤田医科大学 医学部 )
- 西岡 宏(虎の門病院 間脳下垂体外科 )
- 松野 彰(帝京大学 医学部 )
- 有安 宏之(和歌山県立医科大学 医学部 )
- 伊達木 澄人(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
間脳下垂体疾患の診療に資する診断ガイドラインを策定する。
研究方法
間脳下垂体疾患をACTH分泌異常症・GH分泌異常症(成人)・GH分泌異常症(小児)症・TSH分泌異常症・PRL分泌異常・ゴナドトロピン分泌異常症・バソプレシン分泌異常症および腎性尿崩症・偶発的下垂体腫瘍・自己免疫性視床下部下垂体炎に分類し、それぞれの疾患を担当するチームにおいて最新の文献や諸外国の診療ガイドラインを参考にして現行の診療ガイドラインにおける問題点を明らかにしたうえで、診療ガイドラインの策定・改訂を行った。
結果と考察
クッシング病では、保健適応となっている方法や薬剤を用いるように改訂した。治療においては、急激な血中コルチゾール低下によってサイトカインストーム等が生じる例もあり、注意深い観察や十分なグルココルチコイド補充が必要である事を追記した。
先端巨大症について、エビデンスに基づいて診断基準における副症候および参考所見、診断、治癒基準における75gOGTTのGH底値を修正、治療の手引きにおける治療薬を最新の状況にアップデート、治療指針についてもより具体的に改定した。
成人GH分泌不全症について、GH分泌不全症の小児期から成人期への移行・トランジションの診断と治療の手引きを作成した。成人GH分泌不全症の診断基準では、成人に対するGH治療適用基準(薬剤添付文書)と診断基準の乖離を修正した。
小児GH分泌不全症については、主症候の中に「頭蓋内器質性疾患や他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合は、成長速度の観察期間は2年未満でもよい」とし、注として6か月~1年間の成長速度が標準値の−1.5SD以下で経過していることを目安とすることを附記した。
下垂体性TSH分泌亢進症では、参考事項の項目に、見かけ上のSITSHを示す病態について追加した。また、甲状腺ホルモン不応症との鑑別診断が可能となるように、改訂案を作成した。下垂体性TSH分泌低下症に関しては、検査所見の項目については、重要な検査所見を上位に配置し、間脳下垂体に器質的疾患を認める場合と、認めない場合で確実例の診断を分けた。
高PRL血症について、主症候では男女共通項目の追記、検査所見では各施設での基準値の違いを考慮した高PRL血症の判定基準の変更を行った。また高PRL血症の鑑別診断に関しては、下垂体病変における先端巨大症(PRL同時産生)の追記、高PRL血症をきたす薬剤に関しては最近使用されるようになった薬剤を追記した。
PRL分泌低下症について、検査所見では各施設での基準値の違いを考慮したPRL低下の判定基準の変更を行った。
下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍の定義及び小児における中枢性思春期早発症の定義、これら疾患の診断等に配慮した診断基準改定版を作成した。治療においては、男性ゴナドトロピン分泌低下症、小児女性ゴナドトロピン分泌低下症、成人女性ゴナドトロピン分泌低下症と分けて記載し、他学会の手引きとも整合性がとれるように配慮した。
バソプレシン分泌異常症については、体重に基づいた多尿の定義、小児における多尿の定義、SIADHにおける尿浸透圧の基準、中枢性尿崩症の診断に用いる高張食塩水負荷試験と水制限試験の注意点、高ナトリウム血症を呈する場合の腎性尿崩症の診断等に配慮した診断基準を作成した。治療においては、SIADHの低ナトリウム血症の補正に際して急激に血清ナトリウム濃度が上昇した際には血清ナトリウム濃度を再度低下させることを推奨する指針を加えた。
偶発的下垂体腫瘍については、ラトケ嚢胞に代表される嚢胞性病変や、他の下垂体疾患も多いため、今回はこれらの病変も対象とした。偶発的下垂体腫瘍(インシデンタローマ)の対象は腫瘍性病変、腫瘍類似疾患、および非腫瘍性疾患と多岐にわたるため、疾患の一覧表を作成した。
下垂体腺腫の経過観察を行う場合、若年者の増殖能の高い下垂体腺腫や、下垂体腺腫以外の悪性腫瘍の可能性もあることから、当初3ヶ月後にも画像、および内分泌機能の検査を行うこととした。
リンパ球性下垂体前葉炎、リンパ球性漏斗下垂体後葉炎、リンパ球性汎下垂体炎それぞれについて、画像検査および病理所見で異常を呈する部位を明示し、診断基準を明確にした。
IgG4関連下垂体炎について、諸外国の診断基準およびIgG4関連疾患(指定難病300)の診断基準を参考にしつつ、新たに診断と治療の手引きを作成した。
先端巨大症について、エビデンスに基づいて診断基準における副症候および参考所見、診断、治癒基準における75gOGTTのGH底値を修正、治療の手引きにおける治療薬を最新の状況にアップデート、治療指針についてもより具体的に改定した。
成人GH分泌不全症について、GH分泌不全症の小児期から成人期への移行・トランジションの診断と治療の手引きを作成した。成人GH分泌不全症の診断基準では、成人に対するGH治療適用基準(薬剤添付文書)と診断基準の乖離を修正した。
小児GH分泌不全症については、主症候の中に「頭蓋内器質性疾患や他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合は、成長速度の観察期間は2年未満でもよい」とし、注として6か月~1年間の成長速度が標準値の−1.5SD以下で経過していることを目安とすることを附記した。
下垂体性TSH分泌亢進症では、参考事項の項目に、見かけ上のSITSHを示す病態について追加した。また、甲状腺ホルモン不応症との鑑別診断が可能となるように、改訂案を作成した。下垂体性TSH分泌低下症に関しては、検査所見の項目については、重要な検査所見を上位に配置し、間脳下垂体に器質的疾患を認める場合と、認めない場合で確実例の診断を分けた。
高PRL血症について、主症候では男女共通項目の追記、検査所見では各施設での基準値の違いを考慮した高PRL血症の判定基準の変更を行った。また高PRL血症の鑑別診断に関しては、下垂体病変における先端巨大症(PRL同時産生)の追記、高PRL血症をきたす薬剤に関しては最近使用されるようになった薬剤を追記した。
PRL分泌低下症について、検査所見では各施設での基準値の違いを考慮したPRL低下の判定基準の変更を行った。
下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍の定義及び小児における中枢性思春期早発症の定義、これら疾患の診断等に配慮した診断基準改定版を作成した。治療においては、男性ゴナドトロピン分泌低下症、小児女性ゴナドトロピン分泌低下症、成人女性ゴナドトロピン分泌低下症と分けて記載し、他学会の手引きとも整合性がとれるように配慮した。
バソプレシン分泌異常症については、体重に基づいた多尿の定義、小児における多尿の定義、SIADHにおける尿浸透圧の基準、中枢性尿崩症の診断に用いる高張食塩水負荷試験と水制限試験の注意点、高ナトリウム血症を呈する場合の腎性尿崩症の診断等に配慮した診断基準を作成した。治療においては、SIADHの低ナトリウム血症の補正に際して急激に血清ナトリウム濃度が上昇した際には血清ナトリウム濃度を再度低下させることを推奨する指針を加えた。
偶発的下垂体腫瘍については、ラトケ嚢胞に代表される嚢胞性病変や、他の下垂体疾患も多いため、今回はこれらの病変も対象とした。偶発的下垂体腫瘍(インシデンタローマ)の対象は腫瘍性病変、腫瘍類似疾患、および非腫瘍性疾患と多岐にわたるため、疾患の一覧表を作成した。
下垂体腺腫の経過観察を行う場合、若年者の増殖能の高い下垂体腺腫や、下垂体腺腫以外の悪性腫瘍の可能性もあることから、当初3ヶ月後にも画像、および内分泌機能の検査を行うこととした。
リンパ球性下垂体前葉炎、リンパ球性漏斗下垂体後葉炎、リンパ球性汎下垂体炎それぞれについて、画像検査および病理所見で異常を呈する部位を明示し、診断基準を明確にした。
IgG4関連下垂体炎について、諸外国の診断基準およびIgG4関連疾患(指定難病300)の診断基準を参考にしつつ、新たに診断と治療の手引きを作成した。
結論
間脳下垂体疾患の診療ガイドラインの策定・改訂を行った。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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