文献情報
文献番号
201911022A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H29-難治等(難)-一般-029
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部 皮膚科学教室)
研究分担者(所属機関)
- 青山 裕美(川崎医科大学皮膚科)
- 秋山 真志(名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学分野)
- 池田 志斈(順天堂大学大学院医学研究科)
- 石河 晃(東邦大学医療センター大森病院皮膚科)
- 黒沢 美智子(順天堂大学医学部衛生学講座)
- 澤村 大輔(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座)
- 清水 宏(北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室)
- 下村 裕(山口大学大学院医学系研究科皮膚科学分野)
- 鈴木 民夫(山形大学医学部皮膚科学講座)
- 玉井 克人(大阪大学大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座)
- 照井 正(日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野)
- 秀 道広(広島大学大学院医歯薬保健学研究科皮膚科学)
- 室田 浩之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野)
- 山上 淳(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
原因不明で治療法が確立していない難治性皮膚疾患に対する医療の基盤を強化するため、研究対象となっている各疾患の診断基準・重症度分類基準の策定と普及、疫学調査とデータベースの作成、全国共通で国際的に通用する診療ガイドラインの開発・改訂を目的とする。
研究方法
1.各疾患群の研究
[天疱瘡] 診療ガイドラインの改訂・最適化を行うため、罹患状況の調査、ガイドラインに準拠した天疱瘡の治療成績の評価を行なった。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 薬剤との因果関係を含めた罹患実態および臨床情報の調査を行った。
[膿疱性乾癬] ガイドラインの普及による治療水準の向上をめざして、患者QOL調査を行った。
[表皮水疱症] 現状の指定難病の認定基準が罹患実態に合致しているか、病型の頻度、在宅処置の必要性などについて最新の情報を把握することを目的に疫学調査を行った。
[先天性魚鱗癬] 重症度調査票の記載と患者QOLとの関連を調査した。
[弾性線維性仮性黄色腫] これまでの調査に基づいて作成されたガイドラインの普及に努めるとともに、予後予測因子などの解析を試みた。
[眼皮膚白皮症] ガイドラインの啓蒙・普及を進めるとともに、効率的な診断方法の確立を試みた。
[遺伝性血管性浮腫] 発作時の質問票、患者QOL調査票などを作成し、患者自身が入力したデータをレジストリシステム上で収集した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 各疾患におけるレジストリ作成を進めた。さらに、各疾患の臨床疫学像について、以前に実施された全国調査の結果と比較した。
[生体試料蓄積] 基本的枠組みを生かしつつ、独立行政法人・医薬基盤研究所・難病研究資源バンクと提携しながら生体試料収集を継続した。
[天疱瘡] 診療ガイドラインの改訂・最適化を行うため、罹患状況の調査、ガイドラインに準拠した天疱瘡の治療成績の評価を行なった。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 薬剤との因果関係を含めた罹患実態および臨床情報の調査を行った。
[膿疱性乾癬] ガイドラインの普及による治療水準の向上をめざして、患者QOL調査を行った。
[表皮水疱症] 現状の指定難病の認定基準が罹患実態に合致しているか、病型の頻度、在宅処置の必要性などについて最新の情報を把握することを目的に疫学調査を行った。
[先天性魚鱗癬] 重症度調査票の記載と患者QOLとの関連を調査した。
[弾性線維性仮性黄色腫] これまでの調査に基づいて作成されたガイドラインの普及に努めるとともに、予後予測因子などの解析を試みた。
[眼皮膚白皮症] ガイドラインの啓蒙・普及を進めるとともに、効率的な診断方法の確立を試みた。
[遺伝性血管性浮腫] 発作時の質問票、患者QOL調査票などを作成し、患者自身が入力したデータをレジストリシステム上で収集した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 各疾患におけるレジストリ作成を進めた。さらに、各疾患の臨床疫学像について、以前に実施された全国調査の結果と比較した。
[生体試料蓄積] 基本的枠組みを生かしつつ、独立行政法人・医薬基盤研究所・難病研究資源バンクと提携しながら生体試料収集を継続した。
結果と考察
1.各疾患群の研究
[天疱瘡] 調査結果から、天疱瘡診療ガイドラインに従って治療方針を立てることの有用性が示された。その一方で、高齢者などでは有害事象が発生するリスクが高く、注意深い観察が必要と考えられた。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 調査の結果、DPP4阻害薬に関連した水疱性類天疱瘡は男性に多く、非炎症型の頻度が高いことが示され、今までの報告と一致していた。今後、さらなる情報の集積が必要と考えられた。
[膿疱性乾癬] 以前に行われた調査と比較して、本年度にデータを取った患者群の方が、包括的健康関連QOL尺度が改善しており、診療ガイドラインの整備や生物学的製剤の適応拡大により、治療水準が向上していることが示唆された。
[表皮水疱症] 難病対策を検討するための罹患実態の把握という点で、全国レベルでの患者数・臨床像を含めた症例集積が不可欠である。本研究で進めている調査は、現場の実態を反映した信頼性の高い情報となることが期待される。
[先天性魚鱗癬] 臨床像、重症度、診療実態、患者QOLの全国疫学調査のデータ分析から、病型間で臨床症状の多様性が見られるものの、以前に策定された診断基準および重症度分類が適正かつ妥当であることが示された。
[弾性線維性仮性黄色腫] 診療ガイドラインの成立により、診療水準が高まってきたのは明らかであり、今後さらに啓蒙活動を続けることが重要と考えられた。
[眼皮膚白皮症] これまでの研究を通じて設計された色素異常診断パネルが実用化され、58遺伝子に関して網羅的にスクリーニングできるようになったため、正確かつ迅速に本症を診断することが可能となった。
[遺伝性血管性浮腫] レジストリを用いた研究により、発作時の治療が自己注射による在宅へ移行している傾向が確認できた。今後、患者自身が入力したデータを活用して、さらに高い水準の医療の立案と提供をめざす。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 対象疾患の臨床疫学像を確認することは、稀少難治性皮膚疾患研究の方向性を決定する上での基本情報である。全国の患者情報を分析し、その結果を医師、患者・家族を含めた国民、行政等と情報共有することは有意義と考えられた。
[生体試料蓄積] 本研究の生体試料バンク事業は、倫理審査等の手続きが煩雑であることから、各共同研究機関から積極的な協力を得ることが困難であった。今後は、主要な医療機関で情報を共有できるシステムを構築することも検討すべきであろう。
[天疱瘡] 調査結果から、天疱瘡診療ガイドラインに従って治療方針を立てることの有用性が示された。その一方で、高齢者などでは有害事象が発生するリスクが高く、注意深い観察が必要と考えられた。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 調査の結果、DPP4阻害薬に関連した水疱性類天疱瘡は男性に多く、非炎症型の頻度が高いことが示され、今までの報告と一致していた。今後、さらなる情報の集積が必要と考えられた。
[膿疱性乾癬] 以前に行われた調査と比較して、本年度にデータを取った患者群の方が、包括的健康関連QOL尺度が改善しており、診療ガイドラインの整備や生物学的製剤の適応拡大により、治療水準が向上していることが示唆された。
[表皮水疱症] 難病対策を検討するための罹患実態の把握という点で、全国レベルでの患者数・臨床像を含めた症例集積が不可欠である。本研究で進めている調査は、現場の実態を反映した信頼性の高い情報となることが期待される。
[先天性魚鱗癬] 臨床像、重症度、診療実態、患者QOLの全国疫学調査のデータ分析から、病型間で臨床症状の多様性が見られるものの、以前に策定された診断基準および重症度分類が適正かつ妥当であることが示された。
[弾性線維性仮性黄色腫] 診療ガイドラインの成立により、診療水準が高まってきたのは明らかであり、今後さらに啓蒙活動を続けることが重要と考えられた。
[眼皮膚白皮症] これまでの研究を通じて設計された色素異常診断パネルが実用化され、58遺伝子に関して網羅的にスクリーニングできるようになったため、正確かつ迅速に本症を診断することが可能となった。
[遺伝性血管性浮腫] レジストリを用いた研究により、発作時の治療が自己注射による在宅へ移行している傾向が確認できた。今後、患者自身が入力したデータを活用して、さらに高い水準の医療の立案と提供をめざす。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 対象疾患の臨床疫学像を確認することは、稀少難治性皮膚疾患研究の方向性を決定する上での基本情報である。全国の患者情報を分析し、その結果を医師、患者・家族を含めた国民、行政等と情報共有することは有意義と考えられた。
[生体試料蓄積] 本研究の生体試料バンク事業は、倫理審査等の手続きが煩雑であることから、各共同研究機関から積極的な協力を得ることが困難であった。今後は、主要な医療機関で情報を共有できるシステムを構築することも検討すべきであろう。
結論
本研究の目的は、稀少難治性皮膚疾患における、1)診療ガイドラインの作成と改訂、2)データベース作成・疫学解析、3)情報提供と社会啓発であり、各疾患群の研究と共通研究課題が協調しながら活動が進められた。今後も、ガイドライン最適化、新しい診断法や治療の開発など、臨床に直結する成果を求めるとともに、QOL調査や患者会の支援などを通じて、対象疾患の患者・家族に還元できるような研究活動を進めることが必要である。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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