文献情報
文献番号
201911019A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-026
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
- 金倉 譲(一般社団法人住友病院)
- 中尾 眞二(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
- 廣川 誠(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 赤司 浩一(九州大学 大学院医学研究院)
- 宮崎 泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
- 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
- 黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院)
- 鈴木 隆浩(北里大学 医学部)
- 岡本真一郎(慶應義塾大学 医学部)
- 神田 善伸(自治医科大学 医学部)
- 真部 淳(北海道大学 医学研究院)
- 太田 晶子(埼玉医科大学 医学部)
- 東條 有伸(東京大学 医科学研究所)
- 巽 浩一郎(千葉大学 大学院医学研究院)
- 井上 義一(独立行政法人 国立病院機構 近畿中央呼吸器センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,978,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症及びランゲルハンス細胞組織球症を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、難治性疾患実用化研究事業(「オミクス解析技術と人工知能技術による難治性造血器疾患の病因解明と診断向上に貢献する解析基盤の開発」とも協力する。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血:新たに保険適応となった非重症例に対するシクロスポリンとトロンボポエチンレセプター作動薬(エルトロンボパグとロミプロスチム)を追加して、治療のフローチャートを改定した。赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善を目的として、前向き観察研究を継続した。 溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における血栓塞栓症の発症率をアジア人と非アジア人で比較解析した。MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューを継続した。 また、低リスクMDSの治療方法の選択や予後についての現状把握のために、アンケートによる一次全国調査を実施した。骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。ランゲルハンス細胞組織球症:「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班」と協力して、全国規模の後方視的調査を行った。
結果と考察
再生不良性貧血:トロンボポエチンレセプター作動薬のエビデンスや問題点に関する記載を追加して、「診療の参照ガイド」を改定した。赤芽球癆:令和元年11月に生存例及び登録時予後不明例計71例について予後調査を行った。現在調査票を回収し、結果を解析中である。溶血性貧血:血栓塞栓症の既往のある患者の割合は、アジアでは非アジアのコホートよりも有意に低かったが、アジアのアジア人と非アジアのアジア人の間に差はなかった。これらの結果は、遺伝的要因がライフスタイル要因よりも血栓塞栓症の発症に大きな役割を果たす可能性があることを示唆していた。MDS:前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューでは、令和元年末までの登録症例数は435例で、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本及び骨髄標本のセントラルレビューを行っている。また、登録された症例について、毎年追跡調査を実施している。今後は、本データベースの難病プラットフォームへの登録を進めるとともに、検体集積及び遺伝子診断研究も包含した研究へと発展させていく予定である。低リスクMDSに対する全国アンケート調査では、72施設から回答を得た。66施設で合計4453症例がMDSと診断されており、そのうちIPSS-Rが判明していたのは2793症例であった。骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は60%である。主な死因は、感染症及び白血病への移行であった。国際的な予後スコアリングシステムであるDIPSS-Plus (Dynamic International Prognostic Scoring System for PMF-Plus)は、わが国の症例においても予後不良群の抽出が可能で、予後指標として有用であった。ランゲルハンス細胞組織球症:全国483施設へ一次調査のアンケート用紙を送付し、212施設から回答を得た。このうち、成人LCHの診療経験を有し、二次調査に参加可能と回答した37施設(122症例)に研究倫理申請を依頼した。現在までに承認された24施設へ調査票を送付しており、19施設から回収している。
結論
本年度は、本研究班のI期3年目にあたるため、「再生不良性貧血」、「赤芽球癆」、「骨髄異形成症候群」、「輸血後鉄過剰症」、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」、「発作性夜間ヘモグロビン尿症-周術期管理-」、「発作性夜間ヘモグロビン尿症-妊娠ガイドライン-」、「自己免疫性溶血性貧血」、「骨髄線維症」、「先天性骨髄不全 Fanconi貧血」、「先天性骨髄不全 先天性角化不全症」、「先天性骨髄不全 Diamond-Blackfan貧血」、「先天性骨髄不全 先天性赤血球形成異常性貧血」、「先天性骨髄不全 遺伝性鉄芽球性貧血」の各「診療の参照ガイド」令和元年度改訂版を「利益相反の開示」を含めて、ホームページ上で公開した。本「診療の参照ガイド」は、日本血液学会診療委員会による査読を受けた。その他、全国規模のレジストリの推進とデータの解析、全国規模のアンケート調査も実施中である。
公開日・更新日
公開日
2021-05-27
更新日
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