神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立

文献情報

文献番号
201911014A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-021
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 林 雅晴(淑徳大学 看護栄養学部)
  • 上田 健博(神戸大学 医学部附属病院)
  • 中野 英司(神戸大学 医学部附属病院)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 川原 繁(金沢赤十字病院 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 中野 英司 国立研究開発法人国立がんセンター(平成31年4月1日~令和元年7月31日)→神戸大学大学医学部附属病院(令和元年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群(神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)、ポルフィリン症)は症状が多臓器に出現し、整容上、機能上、生命の危機の問題がある希少難治性疾患で、根治療法はなく、患者・家族の治療に対する要望は強く、診療科横断的な診療体制を確立が必要である。
 NF1: NF1診療ガイドライン2018の周知・啓発を行い、小児期から成人期へシームレスにNF1診療ができる全国的な診療体制の構築を行う。
 NF2:進行性の脳腫瘍を生じ生命予後が悪いので「時期を逸しない治療」により治療成績を向上させうる体制を構築する。
 TSC:多臓器に生じる病変は、臓器により小児期、思春期以降、成人期と好発年齢が異なるので、診療科横断的な関与が必須で、近年mTOR阻害薬の導入により生じた個別臓器治療から全身治療への転換を反映した診療ガイドラインの公開と周知をする。
 XP:診断センターの維持と難病プラットフォームを利用したレジストリの準備を進める。全国患者調査2018の二次調査を行い、診療ガイドラインの改訂作業に資する。
 ポルフィリン症:ポルフィリン症の疑い例について遺伝子解析による確定診断と全国疫学調査を行う。
研究方法
全期間を通じて、NF1、XP、ポルフィリン症の診断に必要で外部委託が不可の検査を研究班で患者検体を用いて、細胞生物学的、生化学的、遺伝学的検査を実施した。連携するMED班の支援も受けた。
 NF1:欧米と日本のNF1の病像の比較をした。NF1はXPとともに難病プラットフォームを用いるレジストリに方針変更し、準備した。カフェオレ斑の重症例で患者QOLをあげるレーザー治療について、ピコ秒レーザーとQスイッチレーザーを比較した。
 NF2: 全国867の脳神経外科基幹および連携施設に行った治療の実情についての調査をもとにNF2治療可能な病院を公開した。2019年10月からベバシズマブ治療の医師主導治験を開始した。「臨床調査個人票」により、自立できてている患者と重症度について検討した。
 TSC:学会、患者会での教育講演などを通してTSCの包括的ならびに臓器別診療ガイドラインの周知をはかった。改訂箇所に関してはTSC学会や皮膚科学会のHPに公開しパブリックコメントを得た。
 XP:疫学班と共同での全国患者調査の二次調査を解析し、患者の実態を把握した。頭部MRI、末梢神経伝導検査、重症度スコアなどを統合的に解析し、XPの神経症状を適切に評価し予後推測因子となる項目を検討した。診断センターを維持し、XP患者の集積に努め、臨床情報も合わせて集積した。
 ポルフィリン症:全国から収集した遺伝性ポルフィリン症患者の臨床症状、臨床検査データを集計し、遺伝子診断結果と照合分析した。全国アンケート調査による患者数等の実態把握を行なった。
結果と考察
 NF1:日本のNF1では欧米と比較して視神経膠腫が少ないことがわかった。診療ガイドラインの周知・啓発を推進できた。カフェオレ斑患者に対する最適なレーザー治療についてさらに検討が必要と考えた。
 NF2:治療の診療実態についての全国調査の結果を難病センターのHPなどを通じて患者、医療従事者に周知することにより、地域格差なく、NF2の治療を受けられる体制が整備された。ベバシズマブ治療医師主導治験の開始により患者の治療への可能性を広げた。
 TSC:診療ガイドラインを日本皮膚科学会や結節性硬化症学会のHPで公開することにより、地域格差なく新しい治療にアクセスできるようにした。
 XP:診断センターとしての機能を果たしつつ、臨床情報の集積して患者レジストリーに向けた準備をした。
 ポルフィリン症:遺伝性ポルフィリン症疑い例の遺伝子診断を行い、診断を確定して症例を集積し、全国調査を実施した。
結論
適切な診断と最適な治療を地域差なく全患者に提供できる診療体制を構築する診療科横断的な研究を組織的に行ない、対象疾患患者の実態把握と患者ケアを含む、診療指針改訂に資した。
 NF1の重症度や治療の必要性に応じた治療を施すことができ、患者のQOLや予後の改善に利する。
 NF2の全国治療体制の構築により 、患者の不安を軽減し、治療集約と成績向上及び患者QOL改善に資するとともに、新しい治療開発の基盤となることが期待できる。
 TSCの診療指針の整備により、希少難治性疾患の診療の機会が少ない医療施設においても、診療が容易となり、医療の質の向上に寄与した。
 XPの診断センター維持は全国の皮膚科医、小児科医の診療に寄与し、XP診療ガイドライン改訂にも資する。
 ポルフィリン症の診断を確定し、臨床症状、検査成績を分析して、治療の選択、発症予防、遺伝カウンセリングに有用な情報を得た。新規患者の掘り起こしも期待できる。

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
2021-11-15

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911014B
報告書区分
総合
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-021
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉持 朗(埼玉医科大学 医学部)
  • 小野 竜輔(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部 )
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 林 雅晴(淑徳大学 看護栄養学部)
  • 上田 健博(神戸大学 医学部附属病院)
  • 中野 英司(神戸大学 医学部附属病院)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 竹谷 茂(京都大学 医学部)
  • 川原 繁(金沢赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群(神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、結節性硬化症(TSC)、色素性乾皮症(XP)、ポルフィリン症)は症状が多臓器に出現し、整容上、機能上、生存上の問題がある希少難治性疾患で、治療法はなく、患者・家族の治療に対する要望は強く、診療科横断的な診療体制を確立が必要である。
NF1: NF1診療ガイドライン2018の周知・啓発を行い、小児期から成人期へシームレスにNF1診療ができる全国的な診療体制の構築を行う。
NF2:進行性の脳腫瘍を生じ生命予後が悪いので「時期を逸しない治療」により治療成績を向上させ得る体制を構築する。
TSC:多臓器に生じる病変は、臓器毎に小児期、思春期以降、成人期と好発年齢が異なるので、診療科横断的な関与が必須で、mTOR阻害薬の導入による個別臓器治療から全身治療への転換を反映した診療ガイドラインの公開と周知をする。
XP:診断センターの維持と難病プラットフォームを利用したレジストリの準備を進める。全国患者調査2018の二次調査を行い、診療ガイドラインの改訂作業に資する。
ポルフィリン症:ポルフィリン症の疑い例について遺伝子解析による確定診断と全国疫学調査を行う。
研究方法
全期間を通じて、NF1、XP、ポルフィリン症の診断に必要で外部委託が不可の検査を患者検体を用いて、細胞生物学的、生化学的、遺伝学的手法により行った。連携するAMED班の支援も受けた。
NF1:遺伝子型-症状相関の解析、日本と欧米のNF1の比較を行った。当初YUMINによる患者登録を構築したが、登録数が伸びなかったので、難病プラットフォームに方針変更した。びまん性神経線維腫の発生部位や入院期間に影響する要因について調査した。カフェオレ斑のレーザー治療について検討した。
NF2:全国の脳神経外科基幹・連携施設に治療の実情について調査した(2017-2018)結果を2019年にNF2治療可能な病院として公開した。2017-2018に患者会で時期を逸しない治療方針、ベバシズマブ治療について周知し、2019年医師主導治験を開始した。
TSC:2017年に治療革新を盛り込んだ包括的ガイドランを作成し、2018年には臓器別診療ガイドラインも作成し、改訂箇所に関してはTSC学会や皮膚科学会でパブリックコメントを得た上で、2019年には学会、患者会を通して、それらを周知した。
XP:2018-2018年、疫学班と共同で全国患者調査を実施し、患者の実態を把握した。頭部MRI、末梢神経伝導検査、重症度スコアなどを統合的に解析し、XPの神経症状を適切に評価し予後推測因子となる項目を検討した。診断センターを維持し、XP患者の集積に努め、臨床情報も合わせて集積した。
ポルフィリン症:遺伝性ポルフィリン症患者の臨床症状、臨床検査データを集積し、遺伝子診断結果と照合分析した。全国アンケート調査による患者数等の実態把握を行なった。
結果と考察
NF1:遺伝子型-症状相関の解析により、NF1全欠失患者は皮膚神経線維腫が極めて多い型と臨床症状が軽い型があることを明らかにし、日本では欧米に比して視神経膠腫が少ないことを示した。診療ガイドラインの周知・啓発を推進した。カフェオレ斑、びまん性神経繊維腫の最適な治療についてさらに検討が必要と考えた。
NF2:治療の診療実態についての調査の結果を難病センターのHPなどを通じて患者、医療従事者に周知することにより、NF2の治療を受けられる全国体制が整備された。ベバシズマブ治療医師主導治験の開始により患者の治療への可能性を広げた。
TSC:診療ガイドラインを日本皮膚科学会や結節性硬化症学会のHPで公開することにより、地域格差なく新しい治療にアクセスできるようにした。
XP:診断センターとしての機能を果たしつつ、臨床情報の集積して患者レジストリーに向けた準備をした。
ポルフィリン症:遺伝性ポルフィリン症疑い例の遺伝子診断を行い、診断を確定して症例を集積し、全国調査を実施した。
結論
適切な診断と最適な治療を地域差なく全患者に提供できる診療体制を構築する診療科横断的な研究を組織的に行ない、対象疾患患者の実態把握と患者ケアを含む、診療指針改訂に資した。
NF1の重症度や治療の必要性に応じた治療を施すことができ、患者のQOLや予後の改善に利する。
NF2の治療体制の構築により、患者の不安を軽減し、治療集約と成績向上及び患者QOL改善に資する。
TSCの診療指針の整備により、医療従事者間の均てん化が図られ、医療の質の向上に寄与した。
XPの診断センター維持は全国の皮膚科医、小児科医の診療に寄与し、XP診療ガイドライン改訂にも資する。
ポルフィリン症の診断を確定し、診療ガイドライン作成に有用な情報を得た。

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
2021-11-15

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911014C

収支報告書

文献番号
201911014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,960,000円
(2)補助金確定額
24,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,450,255円
人件費・謝金 3,184,154円
旅費 2,790,035円
その他 3,775,964円
間接経費 5,760,000円
合計 24,960,408円

備考

備考
自己資金:404円
利息: 4円

公開日・更新日

公開日
2021-05-07
更新日
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