血液凝固異常症等に関する研究

文献情報

文献番号
201911005A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症等に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部附属病院 輸血部 )
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野)
  • 羽藤 高明(愛媛大学 医学部附属病院)
  • 松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 宮川 義隆(埼玉医科大学 )
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学)
  • 香美 祥二(徳島大学大学院医歯薬学研究部 小児科学)
  • 森下 英理子(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 津田 博子(中村学園大学栄養科学部栄養科学科)
  • 小林 隆夫(浜松医療センター  産婦人科)
  • 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患政策研究事業として、診断基準・重症度分類、診療ガイドライン等 (Mindsづく)の確立や改正及び普及などを行う。対象疾患は血液凝固異常等が主な病態である4つの指定難病、すなわち特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、特発性血栓症 (遺伝性血栓性素因によるものに限る。)である。小児と成人を対象とし、さらに小児から成人への移行期医療も含める。
研究方法
4疾患について、それぞれのサブグループに分かれて課題に取り組むとともに、グループ間の相互議論を活発に行うことによって、(1)分子病態に基づいた診断基準、治療指針の確立/普及およびその効果の検証、改正、(2)大規模な疫学的解析による我が国での発症頻度、予後の把握と治療の標準化などを進めた。令和元年度は3年計画の3年目として、前年度に引き続き疫学調査、レジストリー、遺伝子解析、診断法の標準化、診療ガイドの改訂、指定難病検討資料の作成、臨床情報やゲノム情報に基づく病態解明や保険適用拡大に注力した。臨床的有用性の高いデータベース化システムの構築、そして新しい体外診断薬の開発や検証、新規治療の検証を継続した。
結果と考察
ITPについては、平成17年度から26年度(10年間)のITP臨床調査個人票のデータを用いて皮膚・粘膜・臓器の出血症状と血小板数・年齢との関連やその他のリスク因子について調査した。また「成人ITP治療の参照ガイド2019年版」を作成し、日本血液学会の公式雑誌にオープンアクセスにて公開した。TTPについては、レジストリの継続、ADAMTS13遺伝子解析の継続、リツキシマブの後天性TTPへの保険適用拡大、TTP診療ガイド2017改定版の作成、MINDS方式によるTTPガイドラインの作成、造血幹細胞移植後TMAの病態解析を行った。aHUSについては疫学調査、蛋白質学的解析(羊赤血球溶血試験、抗H因子抗体解析)、新規補体機能検査の開発、遺伝子解析、エクリズマブ市販後調査解析等が行われ、日本独自の患者背景、治療効果が徐々に明らかとなってきた。特発性血栓症では、新生児血栓症の全国調査、新生児血栓症遺伝子解析パネル検査の作成、遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査研究と診療ガイドラインの素案作成、PS活性測定の変動要因および診断特性の検討、国際共同研究による遺伝性血栓性素因の人種差の検討、SEPINC1 遺伝子異常の分子病態解析、AT活性測定試薬の標準化と健常成人におけるAT活性基準値の設定を行った。
 当研究班の活動はホームページに公開されている。http://ketsuekigyoko.org/index.html
結論
ITPについては、いまだ除外診断である現状を打開し、より良い診療を確立するために、本研究班ではITP診断基準案を2004年に提唱しているが、その検査法の保険収載にむけて、一歩一歩前進しているところである。今後、これらの検査法に関して他施設共同で評価していく予定である。本年度は、研究成果を国際誌を含めて論文発表することができ、ITPの診療の標準化や病態解析に大きく貢献することができたと考える。TTPについては、TTP診療ガイド2017を作成したが、その後、ADAMTS13検査の保険収載、後天性TTPに対する血漿交換の回数制限の撤廃、リツキシマブの後天性TTPに対する保険適用拡大という本研究班の活動の成果が保険診療に成果として現れた。その成果をガイドラインに反映させ、一部書き換えて「TTP診療ガイド2020」として完成させた。ガイドラインの作成については国際血栓止血学会(ISTH)が作成したTTPガイドラインの素案が公表されている状況であり、我々のガイドラインの記載と大きく異なることは混乱をきたす可能性があるため、ISTHのガイドラインが正式に発表される2020年度以降に本格的に作成を開始することを計画している。aHUSについては、本研究班でのaHUS解析活動を通して、日本独自の患者背景、治療効果が徐々に明らかとなってきている。また市販後調査の結果から、エクリズマブが治療の中心となった近年の臨床的な実情がつまびらかとなり、一方で今後の課題も明らかとなった。この様な状況を踏まえ、aHUSの治療選択の幅が広がった現代に即した診療ガイドの必要性が高まったと考えられ、2015年作成のガイドの改訂を目指す。特発性血栓症についても多くの成果をあげることができた。本研究成果を元に、欧米の論文報告や指針などを参考に診療ガイドライン策定に向けて体制を構築してゆく。また、新生児・小児血栓症を早期に診断し、適切な急性期治療と長期治療管理の方針を確立するために、全国の解析ネットワークを拡充することが肝要と思われる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201911005B
報告書区分
総合
研究課題名
血液凝固異常症等に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部附属病院 輸血部 )
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野)
  • 羽藤 高明(愛媛大学 医学部附属病院)
  • 松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 宮川 義隆(埼玉医科大学 )
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学)
  • 香美 祥二(徳島大学大学院医歯薬学研究部 小児科学)
  • 森下 英理子(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 津田 博子(中村学園大学栄養科学部栄養科学科)
  • 小林 隆夫(浜松医療センター  産婦人科)
  • 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
  • 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
  • 南学 正臣(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科)
  • 小嶋 哲人(名古屋大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患政策研究事業として血液凝固異常症である4つの疾患、すなわち特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)についてエビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の作成や改正、診療ガイドライン等の確立や改正及び普及などを目的とする。
研究方法
4疾患について、それぞれのサブグループに分かれて課題に取り組むとともに、グループ間の相互議論を活発に行うことによって、(1)分子病態に基づいた診断基準、治療指針の確立/普及およびその効果の検証、改正、(2)大規模な疫学的解析による我が国での発症頻度、予後の把握と治療の標準化などを進めた。
結果と考察
ITPに関して、1)疫学調査、2)治療の標準化、3)ITP診断法の標準化と病態解析を基盤とした新規診断法の検討、を中核としてグループ研究および個別研究を行った。疫学調査では、ITP臨床調査個人票のデータを用いて出血症状出現のリスク因子を明らかにし「Blood Advance」に掲載した。「ITP治療の参照ガイド2019改訂版」を発表し、日本血液学会の公式雑誌「臨床血液」および公式英文誌「Int. J. Hematol.」に掲載した。トロンボポエチン(TPO)測定法を企業と共にキット化し、全自動検査システムで短時間に大量の検体測定が可能なキットを作製した。
 TTPに関して、1)TMAレジストリで1550症例を集積した。2)先天性TTP 65例で遺伝子解析を実施し61例で遺伝子異常を同定した。3)ADAMTS13検査は2018年4月保険収載。4)リツキシマブの後天性TTPへの保険適用拡大は2020年2月に達成。5)後天性TTPにおける血漿交換の回数制限の撤廃は2018年4月達成。6)新たなTTP診療ガイドを2020年3月に作成。7)HLA解析を後天性TTP 52例で実施し、HLA-DRB1*08:03を日本人TTPの危険因子として同定。8)TTPガイドラインは国際血栓止血学会から発表されるTTPガイドラインを参考に今後作成予定。
 aHUSに関して、診断の為の遺伝学的検査、補体機能検査を含む蛋白質学的検査に関する研究をすすめた。またaHUSに対する抗C5抗体エクリズマブに関して、その効果および中断の影響に関して、調査研究の成果をもとに、実臨床における評価をまとめた。エクリズマブの登場も加味して溶血性尿毒症症候群(aHUS)診療ガイド2015が作成されたが、その後に積み重なった知見を用い、今後改訂を行う必要性が高まり、診療ガイド改訂委員を発足させた。
 特発性血栓症に関して、効率的な遺伝子診断を行うために遺伝子解析パネル作成した。また全国調査により新生児特発性血栓症の疫学を調査した。さらに遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査を実施した。さらに遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療ガイドラインの素案を策定した。日本人特有の遺伝子多型PS Tokushimaの正確な診断を目的としてPS活性測定の変動要因および診断特性を検討した。その他アンチトロンビン(AT)の標準化ならびに活性基準値の設定を試み、標準化された値をもとに妥当な基準値の設定を行った。また一般病院でのスクリーニング検査に用いるアンチトロンビン抵抗性(ATR)検出検査を開発した。国際共同研究により、遺伝性血栓性素因の人種差を明らかにした。
なお、当研究班の活動はホームページに公開されている。http://ketsuekigyoko.org/index.html
また、平成30年2月に市民公開講座を開催した。
結論
3年間の研究期間に疫学調査、診断基準や診療参照ガイド作成において成果を充分にあげることができた。1)ITPについては参照ガイドはオープンアクセス化しているため、患者を含め誰でも参照可能となっており、英文化のより世界に情報発信した。疫学調査は、ITPに関しては世界最大の患者数の解析データであり、「Blood Advance」で世界に情報発信している。TPO測定キットは、保険収載できれば世界で初でありITPの正確な診断に大きく寄与できる。TTPについては保険診療における成果に関しては、既にに多くの症例で実施され活用されている。さらに今回作成したガイドラインや学会などで多くの臨床医に周知することでTTPの予後の改善が期待できる。aHUSについては今後、上記成果を踏まえ、aHUS診療ガイドの改訂を通じ臨床へのフィードバックを行う。特発性血栓症についてはこれまでの遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査研究、欧米の論文報告や指針などを参考にして、妊娠分娩管理に関する診療ガイドラインを作成する。

公開日・更新日

公開日
2021-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201911005C

収支報告書

文献番号
201911005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,178,226円
人件費・謝金 2,334,758円
旅費 4,567,033円
その他 3,306,863円
間接経費 4,615,000円
合計 20,001,880円

備考

備考
自己資金1,878円
利息2円

公開日・更新日

公開日
2021-05-07
更新日
2021-06-21