文献情報
文献番号
201911003A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少てんかんに関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 浜野晋一郎(埼玉県立小児医療センター神経科)
- 林 雅晴(淑徳大学看護栄養学部)
- 廣瀬伸一(福岡大学医学部)
- 本田涼子(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター小児科)
- 池田昭夫(京都大学医学系研究科)
- 今井克美(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
- 神 一敬(東北大学大学院医学系研究科)
- 嘉田晃子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床研究企画管理部生物統計研究室)
- 柿田明美(新潟大学脳研究所)
- 加藤光広(昭和大学医学部)
- 川合謙介(自治医科大学医学部)
- 川上民裕(東北医科薬科大学医学部)
- 小林勝弘(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 松石豊次郎(久留米大学高次脳疾患研究所)
- 松尾 健(東京都立神経病院脳神経外科)
- 青天目 信(大阪大学医学系研究科)
- 岡本伸彦(大阪母子医療センター遺伝診療科)
- 伊藤 進(東京女子医科大学医学部)
- 奥村彰久(愛知医科大学医学部)
- 齋藤明子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床研究企画管理部臨床疫学研究室)
- 白石秀明(北海道大学病院)
- 白水洋史(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院脳神経外科)
- 齋藤貴志(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部)
- 菅野秀宣(順天堂大学脳神経外科)
- 高橋幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
- 山本 仁(聖マリアンナ医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
稀少てんかんレジストリへの疾患登録、死因登録、病理登録を継続しつつ、指定難病および類縁疾患についての実態調査、診断基準の見直し、ガイドラインの作成、移行医療・難病ケアのモデル構築、通園や親の社会生活への影響の実態把握、他研究事業および他研究班との連携推進、情報提供・教育・啓発活動を行う。
研究方法
当研究班が担当する22の指定難病(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、片側巨脳症、限局性皮質異形成、神経細胞移動異常症、ドラベ症候群、海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ウエスト症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、片側痙攣片麻痺てんかん症候群、環状20番染色体症候群、ラスムッセン脳炎、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症、ランドウ・クレフナー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、進行性ミオクローヌスてんかんを担当)につき疾患概要、診断基準、診療ガイドライン作成に取り組み、さらに、近縁疾患(自己免疫介在性脳炎・脳症、異形成性腫瘍、視床下部過誤腫症候群、CDKL5遺伝子関連てんかん、血管奇形に伴うてんかん、ビタミンB6依存性てんかん、欠神を伴う眼瞼ミオクローヌス、外傷によるてんかん、各種遺伝子変異を持ちてんかんを発症する先天異常症候群など)についても診断基準案の作成を試みる。その際、稀少てんかんレジストリに登録された症例の横断的な分析を参考にする。また、発作や併存症のデータ分析および難病制度の利用状況の分析に基づいた重症度評価案の改訂、保育所就園及び保護者就業についての実態調査、疾病学習についての新たな試みなども行う。
結果と考察
疾患レジストリには2733症例が登録された。指定難病を含む26のてんかん関連疾患の登録データから臨床症状や社会生活状況を検討したところ、てんかん発作の頻度、知的発達障害や神経精神症状等の併存症の重症度、諸種治療の可能性、生活状況について個々の疾患で大きな幅があることがわかり、症状を正確に把握して福祉的処遇を個別に考慮する必要がある。これらを反映させた重症度分類を提案した。
先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、ラスムッセン脳炎の診療ガイドライン、神経細胞移動異常症、片側巨脳症のCQ、ビタミンB6依存性てんかんの診断基準の作成、ドラベ症候群の診断基準の検証、自己免疫性てんかんの診断アルゴリズムの提唱、スタージ·ウェーバー症候群やレノックス・ガストー症候群関連疾患の疾患概要の修正などをおこなった。
成人期への診療移行を検証するため、成人診療科へ転医した150例の実態を調査し、顔の見える関係のなかでの地域の多様性を理解し,柔軟な対応を可能とする情報共有、連携の必要性を把握した。また、難病患児の通園実態、家族生活への影響につき89名の家族からの調査回答を検討したところ、入園や通園の制限が1/5、園での発作対応の問題、親の就労に1/5で影響があることなどがわかり、保育のガイドライン策定の必要性が明らかになった。患児および家族のための体系的なてんかん教育プログラムを導入し、実践した。親の評価では、てんかんの知識、子どもの自律への促し、コーピング、ストレスの軽減に有意な効果がみられ、子どもでは知識が増えるとともに行動の改善が目立った。
死因研究のレジストリには42症例が登録された。特に原因不明の突然死が中年男性、睡眠中に多い(15例)ことが明らかになっている。また手術標本の病理中央診断のシステムを整え、正確な臨床診断、画像診断、術前診断に貢献、さらに遺伝子変異データベースによりドラベ症候群等の遺伝的背景の解明をすすめている。AMED他班との共同研究もおこない、医師主導治験の比較対照として63例を登録し、追跡調査を継続している。なお、指定難病制度の啓発活動は積極的に行い、「てんかんの指定難病ガイド」冊子を改訂・配布し、研究班主催の市民講演会を開催した。
先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、ラスムッセン脳炎の診療ガイドライン、神経細胞移動異常症、片側巨脳症のCQ、ビタミンB6依存性てんかんの診断基準の作成、ドラベ症候群の診断基準の検証、自己免疫性てんかんの診断アルゴリズムの提唱、スタージ·ウェーバー症候群やレノックス・ガストー症候群関連疾患の疾患概要の修正などをおこなった。
成人期への診療移行を検証するため、成人診療科へ転医した150例の実態を調査し、顔の見える関係のなかでの地域の多様性を理解し,柔軟な対応を可能とする情報共有、連携の必要性を把握した。また、難病患児の通園実態、家族生活への影響につき89名の家族からの調査回答を検討したところ、入園や通園の制限が1/5、園での発作対応の問題、親の就労に1/5で影響があることなどがわかり、保育のガイドライン策定の必要性が明らかになった。患児および家族のための体系的なてんかん教育プログラムを導入し、実践した。親の評価では、てんかんの知識、子どもの自律への促し、コーピング、ストレスの軽減に有意な効果がみられ、子どもでは知識が増えるとともに行動の改善が目立った。
死因研究のレジストリには42症例が登録された。特に原因不明の突然死が中年男性、睡眠中に多い(15例)ことが明らかになっている。また手術標本の病理中央診断のシステムを整え、正確な臨床診断、画像診断、術前診断に貢献、さらに遺伝子変異データベースによりドラベ症候群等の遺伝的背景の解明をすすめている。AMED他班との共同研究もおこない、医師主導治験の比較対照として63例を登録し、追跡調査を継続している。なお、指定難病制度の啓発活動は積極的に行い、「てんかんの指定難病ガイド」冊子を改訂・配布し、研究班主催の市民講演会を開催した。
結論
指定難病疾患につき、診療ガイドラインや診断基準の作成、疾患概要の修正、重症度分類の修正を行った。成人期への円滑な診療移行のための情報の周知および地域難病ケアシステムの構築を推進した。難病患児を有する家族への影響も調査した。指定難病の教育・啓発活動の必要性を考察し、実際に積極的に教育を行った。疾患レジストリには、死因研究、病理中央診断、遺伝子変異データベースとともに、今後もデータ蓄積が期待される。レジストリは他研究班との連携研究にも役立った。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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