文献情報
文献番号
201909038A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21(第二次)の総合的評価と次期健康づくり運動に向けた研究
課題番号
19FA2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学専攻)
研究分担者(所属機関)
- 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部)
- 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
- 近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科)
- 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 津下 一代(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
- 橋本 修二(藤田医科大学 医学部)
- 村上 義孝(東邦大学 医学部)
- 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
- 山之内 芳雄(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
第1に、健康日本21(第二次)の各目標指標の達成状況を評価し、達成・未達成の要因を検討するとともに、各目標指標の地域格差の実態を解明し、その要因を検討する。第2に、健康寿命に関する延伸・短縮要因や格差の要因を分析し、生活習慣改善などによる健康寿命延伸効果の予測法を構築する。第3に、健康寿命の延伸及び地域格差の縮小に向けて国及び自治体が取り組むべき健康増進施策を示すとともに、次期国民健康づくり運動で盛り込むべき健康課題とその目標値・健康指標を提案する。これにより、健康日本21(第二次)の最終評価と次期国民健康づくり運動の策定を学術面からサポートし、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に資するものである。
研究方法
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=NDBや国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査などの統計データ、研究データ(JAGES)などを用いて、健康日本21(第二次)の目標指標について達成状況を評価し、地域格差の要因を分析する。保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=NDBや保険者全数調査などを用いて、自治体・保険者・企業による保健事業の取組状況を調査し、自治体の健康指標・医療費等との関連を検討する。健康寿命の延伸可能性に関する研究=国民生活基礎調査などの統計データ、コホート研究データ(大崎コホート2006、NIPPON DATA)などを用いて、健康寿命の地域格差の要因を検討し、健康寿命の延伸・短縮要因(生活習慣・社会経済要因・健診成績等)の影響を解明する。健康寿命延伸効果の予測法を構築する。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=次期国民健康づくり運動の策定に向けて、提言を作成する。具体的には、健康寿命延伸及び健康格差の縮小に向けて国及び自治体が取り組むべき健康増進施策を示すとともに、次期国民健康づくり運動で盛り込むべき健康課題とその目標値・健康指標、さらには目標達成に向けた戦略などを提案する。すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=生活習慣や循環器疾患既往に関する市町村間格差は、各市町村の平均所得と強く関連した。通いの場やスポーツの会などへの社会参加の割合(市町村別)は、健康指標の格差要因になっていた。2001年以降の喫煙率の推移は、ほぼ全ての都道府県で共通していた。食塩摂取量の地域格差は改善しており、食塩摂取量の減少には食環境整備の推進が関連していた。大都市の居住は、心理的苦痛が強いことと関連があった。保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=NDBや保険者全数調査等を活用し、保健事業等の実施状況と自治体の健康指標・医療費等との関連を検討し、自治体の規模や人口動態により、保健事業の実施状況とその効果や課題は異なっていることが分かった。健康寿命の延伸可能性に関する研究=健康寿命(日常生活に制限のない期間の平均)の算定対象者や年齢階級区分を変えても、健康寿命の推移に大きな変化がなく、現行の算定方法の頑健性が示唆された。健康寿命の都道府県格差は、男性では平均寿命の寄与が大きく、女性では不健康期間の寄与が大きかった。個人レベルの循環器疾患リスクを評価するツールは、地域格差の評価にも有用であった。正常血圧の非喫煙者とⅡ・Ⅲ度高血圧の喫煙者との間で健康寿命(日常生活動作に自立している期間の平均)には約5年の差があった。健康的な生活習慣(非喫煙・過去喫煙、1日0.5時間以上の歩行、1日270g以上の野菜・果物摂取)の実践数が3つ全ての者と1つ以下の者との間で健康寿命(介護保険認定非該当の期間の平均)に17.1月の差があった。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=次期国民健康づくり運動について、健康日本21(第二次)の中間評価から見えてきた課題を整理し、目標指標の選定に関わる基本的考えを確認し、ポピュレーション戦略の拡充策について検討した。さらに、次期国民健康づくり運動で扱うべき目標の候補について幅広に検討した。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、初年度における研究目的が概ね達成されたと考えられる。本研究事業での成果は、国際的学術誌に多く掲載されるなど、学術面の価値も高かった。さらに、次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究に関する班会議には行政官にも多数出席していただくなど、行政上の価値も十分に高かったと思われる。来年度以降も、計画通りに研究事業を進捗させ、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に資するものである。
公開日・更新日
公開日
2023-06-22
更新日
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