生活習慣に起因する疾病の、生活習慣の改善による一次予防確立のための運動・栄養・疲労回復の相互作用に関する統合的研究

文献情報

文献番号
199800736A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣に起因する疾病の、生活習慣の改善による一次予防確立のための運動・栄養・疲労回復の相互作用に関する統合的研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
西牟田 守(国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣に起因する疾病の発症、進展の機序は必ずしも明らかではないが、健康に好ましい生活習慣、逆に、健康に好ましくない生活習慣については、おおよその枠組みが捉えられている。本研究では、生活習慣のうち、健康に好ましくない因子(危険因子)を人に負荷し、その生体反応と、回復過程を把握することによって、体内の物質代謝を動的に捉える。具体的には、負荷による必須20元素の体内移行と、体内への吸収、体外への排泄を測定し、過不足の起こる元素を明らかにし、過不足が起きる部位(臓器)を特定する。次に、過不足の起きている部位で、過不足が起きている元素を正常化するための、運動、食事等のメニューを、これまで知られている健康に好ましい生活習慣をもとに開発し、健康指標の改善(疲労回復)を確認する。
これらの研究過程において、過不足の起こる元素、および、部位が特定できるので、過不足のある元素の食事による摂取管理、過不足の起きている部位の活性化による過不足の解消に関して、具体的に方策を提案することを目的とする。
研究方法
大学生女子6名を対象に、国立健康・栄養研究所に宿泊させ、一日当たり、エネルギー:1800kcal、ナトリウム:2.2g(食塩相当量として5.6g)、その他の栄養素については第五次改定日本人の栄養所要量を充足する食事を摂取させ、16日間の代謝実験を実施し、10日間のミネラル出納を測定した。出納期間のうち、5日間は、午後に60分、被験者に選択させた強度の自転車エルゴメータによる軽運動をさせ、腕汗を採取し、経皮損出も測定した。
結果と考察
ナトリウムの出納はわずかに負となった。また、カルシウムの摂取量は一日800mg、マグネシウムの摂取量は一日280mgであったが、両ミネラルの出納はいずれも全員明らかな負となった。ナトリウムの出納が負となると、生理的なナトリウムの貯蔵庫である骨からナトリウムが供給されると考えられるが、このときに、骨が生理的貯蔵庫であるカルシウムとマグネシウムも同時に骨から解離し、血液中に放出するために、両ミネラルの排泄が亢進し、カルシウムとマグネシウムの摂取量が十分であっても、不可避的に両元素の出納が負となったと考えた。すなわち、ナトリウムの摂取量が一日2.2gであるとナトリウム不足となる場合があることが明らかになった。また、ナトリウム不足により骨吸収が促進し、骨塩が低下することがあり、ナトリウムなど、骨を構成するカルシウム以外のミネラルの摂取不足は骨粗鬆症の原因として重要であることが明らかになった。
先行研究の結果から、ナトリウムを一日100mmol(食塩として6g)とし、ややきつい運動を一日2回負荷すると、運動中に得られた汗のカルシウム、マグネシウム濃度が、食塩一日10gのときに比較して最高で10倍程度に上昇することが判明しており、本研究結果と合わせて考察すると、食塩摂取量一日6gでは不足する場合があり、食塩の摂取不足は、ほかのストレスと同様に尿中カルシウム、マグネシウムの排泄が増大し、カルシウムとマグネシウムの出納が負となったと考えた。
結論
生活習慣病と関連する運動や休養、食事因子の中で、食塩の摂取量は少なければよいという一般的な考え方がある。その根拠は、要因加算法により食塩の必要量を見積もると、食塩の必要量は一日1g以下であるとの考え方に依っている。しかし、食塩制限で苦痛を訴えることがあることから、食塩制限下で出納を測定したところ、カルシウムとマグネシウムの尿中排泄が多くなり、それらの出納が負となった。すなわち、極端な食塩制限が他のストレスと同様にミネラル代謝を修飾ことが示唆されたので、食塩の必要量について再検討し、健康を増進させるための必要量を科学的に求めていく研究が望まれる。

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