心房細動アブレーション治療の標準化・適正化のための全例登録調査研究

文献情報

文献番号
201909032A
報告書区分
総括
研究課題名
心房細動アブレーション治療の標準化・適正化のための全例登録調査研究
課題番号
19FA1016
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山根 禎一(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター)
  • 草野 研吾(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 井上 耕一(桜橋渡辺病院 循環器内科)
  • 中尾 葉子(国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター 循環器病統合情報センターレジストリ推進室)
  • 竹上 未紗(国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究公共健康医学専攻)
  • 姉崎 久敬(国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター)
  • 森脇 健介(立命館大学 総合科学技術研究機構)
  • 野上 昭彦(国立大学法人筑波大学医学医療系 循環器内科)
  • 夛田 浩(福井大学 医学部循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の公式カテーテルアブレーションレジストリであるJ-ABレジストリを用いて、適正医療の推進および医療経済の健全化に資する標準的AFアブレーションの適応や適切性基準の作成(ガイドライン策定)を目指す。
研究方法
本研究は全体を以下の4つのパートに分けて進行する。
①J-AB登録データを用いた我が国のAFアブレーションを取り巻く現状把握
②AFアブレーション医療の質を向上させるためのエビデンスの評価(Quality Indicator (QI) 解析)
③AFアブレーションアウトカムとQOL評価を用いた費用対効果の分析
④次期ガイドライン草案の策定
結果と考察
上記①~④の進捗状況を記す
①登録の促進とデータ収集:2020年3月末までに460施設へのアカウント発行、446施設からの症例登録があり、総登録件数は158,959件であった。心房細動患者40,398件に関する検討:平均年は66歳、男性69.9%、7,243件(17.9%)に器質的心疾患あり。発作性AFは60.7%。アブレーションシステムは、高周波が最も多く80.9%、続いてクライオ25.7%、ホットバルーン2.4%、レーザーバルーン0.8%であった。治療方法は、肺静脈隔離と追加アブレーション両方を実施している症例が最も多かった(59.7%)。肺静脈隔離は90%を超える割合で成功していた。急性期合併症:1290件(3.2%)の報告あり。
②初年度は、関連先行研究をレビューし、CAAF診療の質を評価する軸の特定と評価指標開発に必要なデータ要件などを整理することとした。
CAAFの効果は心房細動のタイプ、心房の構造異常の有無、心不全など併存症の有無、評価指標(e.g. QOL指標の選択、合併症の種類)などによって異なることが確認できた。また手技選択・アウトカム評価の時期の違いなどが定型的評価をさらに複雑にしている現状が明らかとなった。
CAAFの手技適用の適正性を評価する基準は現時点で中長期的アウトカムとの観点で合意されたものがないことから、今後長期的アウトカム評価などを可能とする症例登録データの構築がまず優先されるべきである。また適用について専門家間でのコンセンサス形成が必要である。次年度に向けて既存の症例登録データの記述統計と合わせて、評価軸の選定を進める予定である。
③本研究の目的は、日本の公的医療システムの視点からAFアブレーションの医療経済評価を実施するためのアプローチの整理とデータの利用可能性を明らかにすることである。文献レビューにてベンチマークとなる先行事例1件を特定した(Gao L, et al.BMJ Open 2019)。モデル構造とパラメータの検討を行い、我が国における分析の実施枠組を作成した。研究課題は日本人心房細動患者に対する薬物治療と比較したAFアブレーションの増分費用効果比(ICER)の推計である。Gao Lらの費用効果分析を参考に2状態からなるマルコフモデルを構築する。必要パラメータは、先行研究を参考にしながらも、可能な限り日本の医療環境を反映するべく各種データソースを活用する。感度分析を行い、不確実性を減じるために必要なデータおよび研究課題を考察する。サブグループ解析を行い、カテーテルアブレーション治療の適正使用について医療経済的観点から提案を行う。
④初年度である本年度計画は、治療適応の適正化に関する海外エビデンス(ガイドライン)収集と我が国への適応可能性を検討することを目標とする。また、第2年度計画として、現在の我が国の心房細動(AF)アブレーションガイドラインの項目の中においてエビデンスレベルが不十分であるものに関して、J-ABレジストリデータを用いてエビデンスを確立する方針である。我が国のガイドラインと比較すべき海外ガイドラインとして適当なものとして、Calkins H, et al. Europace. 2018; 20: e1-e160が最も適切であると考えられた。現時点で両者の間に大きな乖離はない。今後2-3年の間に新しいガイドラインが発表される可能性が高く、それを我が国に適応可能かどうかを改めて判断することになる。現在の我が国のガイドラインの中でエビデンスが不十分と考えられる点として、(1) 第一選択としてのカテーテルアブレーション, (2) 心不全を伴うAFに対するカテーテルアブレーションの適応, (3) 高齢者のAFに対するカテーテルアブレーション (4) 無症候性AFへのカテーテルアブレーションが挙げられる。上記検討項目に関して、次年度以降にJ-ABレジストリデータを用いてエビデンスの補充を行う。
結論
今後はJ-ABデータの解析およびJ-ROADデータを使用した検討を進め、次期ガイドラインへの反映を目指す。

公開日・更新日

公開日
2020-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909032Z