自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証

文献情報

文献番号
201909023A
報告書区分
総括
研究課題名
自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証
課題番号
19FA1007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松平 浩(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター)
  • 吉村 典子(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター)
  • 橋爪 洋(和歌山県立医科大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
該当せず

研究報告書(概要版)

研究目的
ロコモは運動器(身体)の脆弱化が、「ロコモ関連疾患」(変形性関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症など)や、「加齢による運動器機能不全」(筋力、持久力、運動速度、巧緻性、深部感覚の低下)により引き起こされた病態で、「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては、既に豊富なエビデンスが構築されており、これらを対策に利用することが出来る。しかしながら「運動機能不全」に関しては、代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ、本邦における研究の歴史は浅く、今後のエビデンスの蓄積が望まれる。
申請者は、NEDOの世代人工知能技術分野において、医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉評価によりサルコペニアばかりでなく、筋力も判定可能なシステムを開発した実績(筋肉加齢変化の人工知能評価:2019年2月特許出願)を持つ。
本研究では、自治体(和歌山県)のフィールドを利用して「医療・行政が連携した総合的なロコモ対策」モデルを構築することを目標とする。
研究方法
①自治体におけるロコモの実態調査と評価法の標準化
 和歌山県太地町にてコホート調査を2019/10/3より開始、12/15に1,102名の調査を完了した。筋肉超音波検査(内側広筋、腓腹筋、脊椎起立筋)、MRI(全脊柱、脳)X線(全脊椎・股関節・膝関節・手関節)、骨密度、体組成、血液生化学、詳細な問診と健康関連QOL、身体能力テスト、整形外科専門医による身体診察など多岐にわたる検診項目を実施した。解析のためのデータベース化が2020年3月に完了、解析に着手した。
②文献検索(ロコモティブシンドロームの介入法のシステマティックレビュー)と(自治体において負担が少ない)介入法開発
ロコモに関するリスク要因および介入事例と効果を調べた観察研究、clinical trial、 meta-analysis、systematic review等の文献検索を行い、整形外科的疾患を予防する為の運動療法/栄養に関するレビューを行った。
③自治体におけるロコモの介入法の実践及び評価
2019年5月より和歌山県太地町、美浜町地域包括支援センタースタッフへのヒアリングを行った。
結果と考察
①自治体におけるロコモの実態調査と評価法の標準化
和歌山県太地町にてコホート調査にて筋肉機能不全(筋力減少やサルコペニア)は、2005, 2008, 2012, 2015年分に関して評価が完了しており、これらのデータを人工知能で解析した結果、日常生活における不良姿勢(視診)と片脚立位時間が筋肉機能不全の発生や進行の危険因子である可能性が示唆された。自治体で簡易な評価ができるよう最小限で効率よくデータが収集できるロコモ評価用AIアプリケーションの仕様が決定し、アプリケーションに用いるDynamic Link Library: DLL(汎用的な機能をモジュール化したもの)が完成した。

②文献検索(ロコモティブシンドロームの介入法のシステマティックレビュー)と(自治体において負担が少ない)介入法開発
地域在住の高齢者を対象に、運動およびビタミンD補給が身体機能および運動機能障害に及ぼす影響について検討した研究では、運動およびビタミンD1000IU/日補給いずれでも、多くの身体機能測定値と下肢筋量が有意に増加した。
ロコモ(サルコペニア)の女性の通常タンパク質摂取(0.8g/kg/日)と高タンパク質摂取群(1.2g/kg/日)では後者で筋肉指数が有意に上昇した。
骨粗鬆症予防を目的とした疫学研究においては、タンパク質摂取量の多い群で筋肉量(除脂肪)が高値であるという結論が得られた。
以上の研究報告から,ロコモの予防・改善にはビタミンD補給1000IU/日食タンパク質摂取(1.0g/kg / 日)が有効であると考えられる。
③自治体におけるロコモの介入法の実践及び評価
2019年5月より和歌山県太地町、美浜町地域包括支援センタースタッフへのヒアリングを行った。ヒアリングから課題を抽出した。美浜町で65歳以上の住民の約20%の利用にとどまっているという事前調査結果から、自宅にて実施して地域包括支援センターにての評価が可能な仕組みづくりも視野に入れることとなった。
結論
本研究の成果により、自治体における負担が少ないロコモ対策モデルが構築されることで、ロコモ予防対策が普及し、医療費用・介護給付費用が減少することが見込まれ医療経済面において大きく貢献するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,930,000円
(2)補助金確定額
7,930,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 822,597円
人件費・謝金 720,000円
旅費 776,330円
その他 3,781,073円
間接経費 1,830,000円
合計 7,930,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
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