循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究

文献情報

文献番号
201909018A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究
課題番号
19FA1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 保健・医療サービス研究部)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 坂田 泰史(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 岡田 佳築(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 添田 恒有(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 安田 聡(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター)
  • 宮本 恵宏(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター )
  • 中瀬 裕之(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 山田 修一(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
  • 飯原 弘二(国立大学法人九州大学 医学研究院脳神経外科)
  • 鴨打 正浩(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学 大学院医学研究科)
  • 加藤 源太(京都大学医学部附属病院 診療報酬センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
28,850,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動  研究分担者 赤羽 学  奈良県立医科大学(平成31年4月1日~令和1年12月31日)  → 国立保健医療科学院(令和2年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県が地域の実情に応じて医療体制の確保を図るために策定する医療計画の進捗評価は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等のデータを集計・指標化したデータに基づき行う事が求められている。また、医療計画に記載する事とされている、疾病・事業ごとの医療提供体制には、循環器病として「脳卒中」と「心筋梗塞等の心血管疾患」が含まれている。本研究では医療政策的な視点と、循環器病の学術的・臨床的な視点双方の視点を踏まえた、都道府県での実用性の高い指標の作成を目的ととする。
研究方法
本研究班は疾患に関する「心血管疾患班」、「脳卒中班」の2つの分担班に分けて研究を進めた。この他に、「医療政策・NDB技術班」は、循環器病における、NDB上での患者特定の条件の検討を行った。心血管疾患班・脳卒中班ともに、以下の方法で研究を進めた。
1.指標の信頼性・妥当性の検証(令和元~2年度)
ストラクチャー・プロセス指標とアウトカム指標間の関連性、学会・研究者等のデータからの結果と比較した実臨床の視点からの検証を行う。
2.指標の有効性の検証(~令和3年度)
指標群を用いたアウトカムの予測モデルを作成し、他年度のNDBデータや学会等のデータベースを用いて、予測モデルの外的妥当性を評価する。
3.医療費に関する資料の作成(~令和3年度)
研究過程で検証される指標に関連した医療費(治療手技や再入院等を想定)をNDBデータベースから抽出し解析する。
4.NDBデータ以外のデータ活用の検証(令和3年度)
NDBデータが利用困難な指標については、NDB以外のデータ(J-ROAD等の学会等のデータ)を通じた自治体における活用可能性につき検証する。
結果と考察
心血管疾患班が実施したPCI施行のNDB集計において、病名のみで定義した「急性心筋梗塞患者に対するPCI実施率」は、実臨床の実態からは著しく乖離した。実臨床における治療内容を踏まえて急性心筋梗塞患者定義付けをすることにより、日本循環器学会のデータベースから算出される値と、NDB集計値に基づくPCI実施率がおおむね一致するが結果が得られ、また、先行研究と同様にPCI実施率と院内死亡率との相関関係が認められた。ある疾患を有する患者を特定する必要がある指標については、NDB上での患者の特定条件が適切かどうかの検証や、関連学会のデータベース等NDB以外のデータ利用の可能性について検討する必要があると考えられた。
経皮的冠動脈ステント留置術後の虚血性心疾患患者に対する標準的な治療として、近年のガイドラインにおいて、抗血小板併用療法の期間が3ヵ月から12ヵ月とされている。エビデンスに基づく虚血性心疾患患者に対する加療をプロセス指標として利用する可能性を検証するため、NDBデータを用いて解析を行った。経皮的冠動脈ステント留置術後308,245症例中、132,748症例(43%)がステント留置術後1年の段階で抗血小板併用療法を行っており、長期抗血小板併用療法群において有意にイベント発生率が高かった。
脳卒中班は、海外でのエビデンス等について、班会議等による検討を行った結果、最終的に「現在のストラクチャー指標である「脳梗塞に対するtPAによる血栓溶解療法の実施可能な病院数」に、primary stroke center(PSC)の数も併記する」という文言を中間見直し案として研究班から提示することとした。また、グルトパの使用症例数、超急性期脳卒中加算件数等について、NDB集計を実施した。グルトパの使用件数は2016年が8,622例、2017年が9,444例であったのに対し、超急性期脳卒中加算件数は2016年が9,196例、2017年は10,269例であった。グルトパは急性心筋梗塞にも使用される薬剤であること、グルトパと主成分が同じであるアクチバシンが脳梗塞に使用されている可能性があることから、次年度以降はこれらの点についてさらに精緻化した集計を行う必要がある。
結論
心血管疾患班は「急性心筋梗塞患者に対するPCI実施率」および「虚血性心疾患患者に対する経皮的冠動脈ステント留置術後の抗血小板併用療法実施期間」について検討を行った。急性心筋梗塞を含む虚血性心疾患について、先行研究結果も踏まえ、都道府県間の差も存在し、医療体制整備による介入が可能と考えられる、「急性心筋梗塞患者に対するPCI実施率」が、第7次中間見直しの時点で追加指標として検討すべき指標であると考えられた。今後は、NDBデータにおいて、急性心筋梗塞患者を適切に特定する条件を検討する必要がある。
脳卒中班は、第7次医療計画に含まれる「脳卒中の医療提供体制構築の係る現状把握のための指標」に対して中間見直し案を提示した。第8次医療計画作成に向けて、脳卒中診療体制構築のための新たな指標案を草案した。

公開日・更新日

公開日
2020-08-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-08-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
28,788,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,212,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,007,380円
人件費・謝金 4,841,962円
旅費 1,079,477円
その他 11,710,155円
間接経費 1,150,000円
合計 28,788,974円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と、支出の「合計」の差額は、自己資金974円です

公開日・更新日

公開日
2021-02-24
更新日
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