がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化にむけた臨床研究—がん医療の充実を志向して

文献情報

文献番号
201908050A
報告書区分
総括
研究課題名
がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化にむけた臨床研究—がん医療の充実を志向して
課題番号
19EA1015
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 智明(三重大学 大学院 医学系研究科)
  • 大須賀 穣(東京大学 医学部附属病院)
  • 杉山 隆(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 松本 公一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 古井 辰郎(国立大学法人岐阜大学 大学院医学研究科)
  • 高井 泰(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 太田 邦明(福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター)
  • 高江 正道(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2018年3月に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画の分野別施策に「小児、AYA世代のがん医療の充実」が盛り込まれた。がんサバイバーシップ(生殖機能)に主眼をおいて、我々は「がん・生殖医療連携ネットワークの全国展開と小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存の診療体制の均てん化」を目指した4つの研究を行い、成果による政策提言を行う。
研究方法
研究1.本邦における小児・AYA世代がん患者の生殖機能に関するがん・生殖医療連携体制の拡充と機能維持に向けた研究:2020年1月24日(金)と2月5日(水)に、全国の24未整備地域の代表者74名(医師50名、行政24名)を招集し「地域がん・生殖医療ネットワーク構築を考える会」を開催し、さらに2020年1月31日(金)に、神奈川県がん・生殖医療ネットワーク(KanaOF-Net)設立講演会を開催することで、2019年度内に25未整備地域のがん・生殖医療連携構築の端緒に結びつけることができた。また、日本がん・生殖医療学会web site内に「がん治療と妊娠-地域連携」のweb siteを開設した。研究2.本邦における小児・思春期世代がん患者に対する妊孕性温存の診療の実態調査と小児がん診療拠点病院におけるがん・生殖医療の均てん化に向けた研究:小児がん診療拠点病院14施設を対象として2020年度に施行する、「本邦における小児・思春期がん患者に対する妊孕性温存の診療の実態調査」の調査内容を決定した。次年度以降の全国の小児がん診療拠点病院のキャンサーボードの場または各施設で公開講座などを実施し啓発活動を行う事業の第1回目として、2020年1月10日に国立成育医療研究センターにて、「小児・AYA世代がん患者に対する妊孕性温存講演会」を主催した。研究3.本邦におけるがん・生殖医療のアウトカムの検証とエビデンスの構築に向けた研究:分担研究者らは厚生労働省の委託研究事業として「子ども・子育て支援推進調査研究事業」(代表者:鈴木直)において同様の調査を行った経緯があり、今回の調査は前述の研究を一部踏襲した。調査内容としては、『患者調査』として、患者背景、妊孕性温存療法の内容、妊娠転帰、患者予後に関する後方視的調査を行う。さらに、『実施施設調査』として、診療体制ならびに原疾患治療医師からのコンサルト体制、凍結保存年齢制限や適応疾患の制限、保存検体移植の必要条件、説明資材の有無や費用面に関する調査を行う。研究4.本邦におけるがんサバイバーの周産期予後等の実態調査とプレコンセプションケア確立に向けた研究:AMED研究事業「若年がん患者の妊孕性温存に関する研究(代表者:大須賀譲)」の調査結果をもとに周産期転記について検討すべく、2次アンケートで回答を得た2,196例の単胎のサバイバー出産を対象とし解析を行った。その結果、若年がんサバイバーの妊娠では、高齢妊娠が多いことや、罹患したがん種としては子宮頸がん、乳がん、甲状腺がん、血液腫瘍が多いことが特徴として認められた。また、今回の妊娠予後調査では、がんサバイバーの出産では早産率16.0%、低出生体重率18.5%と頻度が高かった。
結果と考察
がん・生殖医療連携未構築地域における小児・AYA世代がん患者に対する生殖機能温存に関する相談支援体制の現状として、医師個人間や特定の施設のみの連携に留まっている現状が明らかになった。このことは、施設や診療科によって患者が受けられる支援が量的、質的に異なる可能性が示唆される。特に、小児・思春期世代がん患者に対する妊孕性温存療法を実施する施設間で格差が認められた。小児がん診療病院における妊孕性温存療法の啓発と拡充や生殖医療の施設と小児がん診療病院との連携など、小児・思春期世代がん患者に対するがん・生殖医療の均てん化の必要性が再確認された。一方、がん・生殖医療連携構築に際して、都道府県のがん診療連携会議や拠点病院を核とするネットワーク構築体制への期待が強く、ネットワークの運営・維持に対する各自治体からの協力体制の必要性が浮き彫りになった。また、本邦におけるがんサバイバーの周産期予後等の実態調査とプレコンセプションケア確立に向けた研究では、海外の既報と同様にがんサバイバーの出産では早産、低出生体重が多いことが判明した。
結論
依然、本邦のおける小児・AYA世代がん患者に対するがん・生殖医療の領域における地域格差や施設間格差の存在が明らかになった。しかしながら、2019年度の成果をもとに、2020年度も継続して、本領域における地域格差と施設間格差の解消、ならびに均てん化を目指した研究活動を精力的に継続していく。

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,960,000円
(2)補助金確定額
11,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,010,536円
人件費・謝金 1,234,727円
旅費 3,363,911円
その他 3,567,276円
間接経費 2,760,000円
合計 11,936,450円

備考

備考
返還金24,000円

公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
-