がん患者の家族・遺族に対する効果的な精神心理的支援法の開発研究

文献情報

文献番号
201908048A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の家族・遺族に対する効果的な精神心理的支援法の開発研究
課題番号
19EA1013
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 健康支援研究部)
  • 久保田 陽介(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部)
  • 浅井 真理子(帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院医学研究科 保健学専攻緩和ケア看護学)
  • 山岸 暁美(慶応義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 石田 真弓(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん医療のより一層の充実を推進するために、がん患者・家族に対する効果的な精神心理的支援法を開発する。
研究方法
【研究Ⅰ:系統的レビューの実施と家族・遺族および医療従事者向け支援ガイドの作成】
(1年目)Mindsガイドライン作成マニュアルに基づき、系統的レビューを行い、エビデンスの抽出・整理を行う。
(2年目)がん患者・遺族を含めた専門家パネルを設け、グループインタビューを実施し、質的な解析・コンセンサス形成法により、系統的レビューの結果とともに、一般医療従事者の遺族支援のあり方、遺族ケアの現状や課題、解決策等に資する原案を作成する。
(3年目)遺族および一般医療従事者に向けた遺族ケアのためのガイドブック、リーフレット等を作成する。また作成された資材活用に関する研修会を開催し、普及をはかる。系統的レビューおよび研究IIIで実施するこころの病気予防および回復プログラムで得られた知見をもとにがん患者の家族・遺族ケアガイドラインを作成する。

【研究Ⅱ:つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
(1-2年目)研究分担者が実施したがん患者対象の多施設遺族調査を解析する。家族・遺族の精神心理的負担の代表である抑うつ(PHQ-9で評価)と複雑性悲嘆(Brief Grief Questionnaireで評価)のハイリスク群を同定する。
(2-3年目)同定されたリスク要因および系統的レビューの結果を活用した抑うつ等のスクリーニング方法を開発する。地域の訪問看護師やケアマネージャーを含めた専門家パネルを設け、研究Iで設けた専門家パネルとともに、わが国の医療提供体制を前提とした拠点病院、地域や精神保健の専門機関が連携を強化するための国内モデルの提案を行う。この際、遺族のアクセシビリティを高めるために、遺族のためのホームページの開設を行い、ハイリスク群のスクリーニングを可能とする仕組みを構築する。

【研究Ⅲ:こころの病気予防および回復プログラムの開発】
・こころの病気予防プログラム
(1年目)うつ病予防および治療効果が示されている認知行動療法の中の行動活性化療法をがん患者遺族のうつ病予防に応用する。あわせて現在効果検証中のがん患者に対するスマートフォン・アプリケーションによる精神療法を改変して、遺族に適したスマートフォンを用いた行動活性化療法を開発する。
(2〜3年目)がん患者遺族30名を対象にうつ病予防をアウトカムに、前後比較の臨床試験を行う。研究IIで構築された遺族のホームページを利用し、研究Iで作成したガイドブック、リーフレットなどを掲載するとともに、ハイリスク群および希望者には、ホームぺージを通してスマートフォンを用いた行動科活性化を提供できるような仕組みを構築する。

・こころの病気回復プログラム
(1年目)「遺族外来」を受診したがん患者遺族を対象に、心理教育を中心とした3回構成のプログラムを実施した結果を用いた解析を行った。
(2〜3年目)うつ病の重症度等をアウトカムとして、無作為割付比較試験を行い、介入の有用性を予備的に検討する。
結果と考察
令和1年度は、研究Ⅰ【系統的レビューの実施と家族・遺族及び医療従事者向け支援ガイドの作成】として、日本サイコオンコロジー学会と協力して、ガイドライン作成のための多職種からなる組織体制を構築し、ガイドラインの企画書であるSCOPEの原案を作成した。加えて、国内外で作成されている医療従事者向けの家族及び遺族ケアに関する手引きについて文献レビューを行った。その結果について、医師、看護師、心理師等によって構成される会議で議論を行い、それを基に手引きの草案を作成した。研究Ⅱ【つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】として、過去の多施設遺族調査のデータの整理と統合を行い解析し、うつ・複雑性悲嘆のハイリスク要因を明らかにした。インタビュー調査により、コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得た。遺族の抑うつのスクリーニングを可能とするホームページの作成に着手した。加えて、遺族の抑うつの予防・改善を目的とした行動活性化のためのスマートフォン・アプリケーションの開発に着手した。研究Ⅲ【こころの病気予防および回復プログラムの開発】として、遺族のうつ病予防を目的とした行動活性化療法の有用性を検証するための研究プロトコルを作成した。また、過去に実施した遺族に対するプログラムの後方視的解析により、遺族に対しては、心理教育を中心とした3回で構成されたプログラムの有用性が示唆された。
結論
以上の研究を継続し、さらに知見を重ね、がん患者・家族に対する効果的な精神心理的支援法を開発する。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,750,000円
(2)補助金確定額
9,460,000円
差引額 [(1)-(2)]
290,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,773,807円
人件費・謝金 1,300,421円
旅費 1,101,775円
その他 2,034,361円
間接経費 2,250,000円
合計 9,460,364円

備考

備考
コロナウィルスの影響により、購入予定だった物品が在庫不足で購入できなかったり、事務補助員の勤務時間を減らすなどをしたことで、研究費の一部を返金する必要が生じたため。

公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
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