AYA世代がん患者に対する精神心理的支援プログラムおよび高校教育の提供方法の開発と実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201908047A
報告書区分
総括
研究課題名
AYA世代がん患者に対する精神心理的支援プログラムおよび高校教育の提供方法の開発と実用化に関する研究
課題番号
19EA1012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 健康支援研究部)
  • 明智 龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 平山 貴敏(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科)
  • 田中 恭子(国立成育医療研究センター こころの診療部)
  • 小澤 美和(聖路加国際病院 小児科)
  • 土屋 雅子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 森 麻希子(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科)
  • 前田 尚子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 小児科)
  • 栗本 景介(名古屋大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、AYA世代がん患者に対して包括的な質の高い精神心理的支援および適切な後期中等教育を提供できるようにするため、①包括的精神心理支援プログラムの開発 ②疾患受容評価に基づく思春期の意思決定支援プログラムの開発 ③高校教育提供の方法および教育行政との連携方法の好事例集および保護者,医療者,高校教師に向けた高校教育支援の手引きの作成を行うことを目的とする。
研究方法
初年度は、包括的精神心理支援プログラムの開発に先だって、国立がん研究センター中央病院におけるAYA 支援チームによるスクリーニングシートを用いたスクリーニング、苦痛や問題点に対する対応、支援状況を後方視的に解析した。その結果を踏まえて専門家パネルにより外的妥当性を検討した。疾患受容評価に基づく思春期の意思決定支援プログラムの開発では、病状説明の実態調査、同意能力評価方法の検討、および、疾病受容支援パッケージの作成を行った。高校教育に関しては、高校教育提供の現状について小児がん診療施設の調査、および、患者・保護者・教師へのインタビュー調査をそれぞれ実施した。
結果と考察
包括的精神心理支援プログラムの開発にあたり、過去1年間に国立がん研究センター中央病院で入院治療を受けたAYA世代がん患者延べ1093例の診療録を後方視的に調査した。スクリーニングシートの実施率は58%で、各カテゴリーで最も多い不安は、「痛み」 (32%)、「病気の情報が足りていない (8%)、「母親のこと」 (10%)、「学校や仕事に関する不安」 (30%)、「不安や恐怖を感じる」 (23%)であった。心理師 (12%)、緩和ケア医 (11%)、リハビリスタッフ (11%)、ソーシャルワーカー (10%)が主に専門的介入が行われた。専門家パネルにより、外来での運用、実施者の負担軽減を図ること、実施のタイミング等の課題が指摘された。
疾患受容評価に基づく思春期の意思決定支援プログラムの開発にあたり、A世代に対する病状説明について小児がん拠点病院に勤務する医師を対象に実態調査した。意思決定の4要素モデルを用いたA世代版同意能力の評価方法について専門家を交えて検討した。面接文言の修正や回答対象者の明確化が指摘された。A世代用トラウマインフォームドアプローチを基盤とした支援パッケージを作成した。
高校生の教育支援の実施状況について日本小児がんグループ(JCCG)参加施設を対象にアンケート調査を実施し、77%の施設が経験しており、このうち60%は高校教育が継続されていた。その提供方法は、特別支援教育(33%)、遠隔教育(24%)、家庭教師(13%)であり、特別支援教育を中心とした対面式での教育提供が約半分を占めた。単位認定の事例は、インタビューした29施設中、わすか13施設(45%)であった。メディアを用いた遠隔教育においても7/16施設(44%)で単位認定されていた。遠隔教育の普及とそれに必要な費用・資材の情報やe-learningのニーズが高かった。また、対面式の教育への期待も多く、院内学級・訪問学級などの特別支援教育の普及や大学生・塾講師などの病院派遣制度、通信教育制度との協働による教育提供・単位取得、コーディネーター配置が提案された。全国の教育委員会を対象に入院中の高校生等の教育に関する問題意識や困難感等のアンケート調査を行った。また、患者・保護者の計6組(12名)の半構造化面接を実施し、がん診断後早期の高校教育継続に関する情報や相談支援、復学後・再通学後の教室以外での学習方法の工夫,外見変化,対人関係への配慮など多岐にわたる配慮・体制の必要性が示された。

結論
AYA世代がん患者に対して包括的な質の高い精神心理的支援および適切な後期中等教育を提供できるようにするため、3つのプロジェクトを開始した。今後、全国の多施設で実施可能な新たな介入法を開発実装し、その結果について観察研究を行うことにより、精神心理的支援プログラムの実施可能性と有用性を検証する。また、疾患受容評価に基づく思春期の意思決定支援プログラムの開発として、A世代用の意思決定支援手引およびトラウマインフォームドケアガイドを作成する。高校教育提供については、好事例モデルを類型化し、教育提供の方法および教育行政との連携方法の好事例集を作成するとともに、保護者,医療者,高校教師に向けた高校教育支援の手引きを作成する。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,940,000円
(2)補助金確定額
7,232,000円
差引額 [(1)-(2)]
708,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,441,266円
人件費・謝金 2,263,909円
旅費 1,035,027円
その他 351,876円
間接経費 1,140,000円
合計 7,232,078円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
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