がん患者の療養生活の最終段階における体系的な苦痛緩和法の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201908046A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の療養生活の最終段階における体系的な苦痛緩和法の構築に関する研究
課題番号
19EA1011
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
里見 絵理子(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 田上 恵太(東北大学医学系研究科緩和医療学講座)
  • 松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 森 雅紀(聖隷クリストファー大学 看護学研究科)
  • 今井 堅吾(一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 エンドオブライフ研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班では、進行終末期がん患者における治療抵抗性の苦痛のうち、がん疼痛、呼吸困難、終末期せん妄について、迅速かつ十分に症状緩和に至り患者の生活の質(QOL)向上につなげることを目的とし、以下の研究をおこなう。


① がん疼痛の治療アルゴリズムの構築に関する研究
② 難治性がん疼痛治療の実態調査
③ 進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究
④ 進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精神薬の体系的治療に関する研究

これらの研究の結果を踏まえ、緩和ケアの実地臨床での体系的治療(アルゴリズム)の教育研修を関連団体(日本緩和医療学会、ペインクリニック学会、IVR学会、放射線治療学会、がんサポーティブケア学会)に働きかけ、また、地域・施設間格差の改善のための提言をおこなう。
研究方法
① がん疼痛の治療アルゴリズム構築に関する研究(担当:田上)
がん疼痛の性状を調査し、緩和ケアチームで実施するがん疼痛治療の日常臨床としてどのように治療されるか観察研究を行い、疼痛緩和に至る臨床データを複数施設で集積し、それに基づいて、疼痛治療アルゴリズムを完成させる。

② 難治性がん疼痛治療の実態調査(担当:松本)
難治性がん疼痛に対する治療の実態について専門医、施設についての質問紙を作成し、がん疼痛治療に関わる専門医(がん治療認定医、緩和医療専門医/認定医、ペインクリニック専門医、IVR専門医(IVR:Interventional Radiology 画像下治療)、在宅専門医)、がん診療連携拠点病院、非がん診療連携拠点病院、在宅医療機関に郵送し、調査する。得られた結果の解析において、難治性がん疼痛に対する治療における障壁や課題の抽出と、対策・提言をおこなう。

③ 進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究(担当:森)
終末期がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の緩和ケアの実臨床における使用を反映し視覚化した体系的治療(アルゴリズム)を作成し、観察研究をおこない、実臨床における安全性、有効性、実施可能性を探索する。

④ 進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精神薬の体系的治療に関する研究(担当:今井)
終末期がん患者の過活動型/混合型せん妄では向精神薬(注射薬)の使用方法が担当医によってさまざまである。本研究では、緩和ケア病棟における終末期がん患者の過活動型/混合型せん妄では向精神薬(注射薬)の使用方法を反映した体系的治療(アルゴリズム)を作成し、観察研究をおこない、実臨床における安全性、有効性、実施可能性を探索する。

結果と考察
①がん疼痛の治療アルゴリズム構築に関する研究(担当:田上)
専門家パネルでがん疼痛治療アルゴリズムの作成を行い、現在臨床データ収集のための観察研究計画書を作成し東北大学研究倫理委員会提出準備中である。

② 難治性がん疼痛治療の実態調査(担当:松本)
令和元年度は、専門医を対象とした質問紙を作成し、がん疼痛治療に関わる専門医(がん治療認定医、緩和医療専門医/認定医、ペインクリニック専門医、IVR専門医(IVR:Interventional Radiology 画像下治療)、在宅専門医)合計4066名に郵送し調査を実施した。回答期間を終了し、集計、解析を開始した。

③ 進行がん患者の呼吸困難に対するオピオイド持続注射の体系的治療に関する研究(担当:森)令和元年度は、研究者間で研究を立案し、緩和ケア病棟で実施している治療を討議し、体系的治療(アルゴリズム)として視覚化し作成した。研究計画書・調査票を作成し、倫理審査を経て聖隷三方原病院で患者登録を開始した。

④ 進行がん患者の過活動型せん妄に対する向精
神薬の体系的治療に関する研究(担当:今井)
令和元年度は緩和ケア病棟、緩和ケアチームで実施している治療を討議し、体系的治療(アルゴリズム)して視覚化し作成した。研究計画書と調査票の作成を行い聖隷三方原病院の倫理委員会で研究実施の承認を得て、登録を開始した。
結論
 がん患者の苦痛としてがん疼痛、呼吸困難、終末期せん妄の症状緩和に関する体系的治療(アルゴリズム)の構築と観察研究、および難治性がん疼痛治療の実態調査のうち専門医宛て調査に着手した。進行終末期がん患者の苦痛緩和を達成するために、有効な症状緩和治療のアルゴリズム構築に関する研究を進め、実践と教育、専門医へのアプローチに焦点をあてた医療連携の強化など課題について、今後、関係団体、行政と情報共有をしながら検討を進めていくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908046Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,956,000円
差引額 [(1)-(2)]
44,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 614,678円
人件費・謝金 2,995,706円
旅費 263,904円
その他 3,775,235円
間接経費 2,307,000円
合計 9,956,523円

備考

備考
支出総額に自己資金523円を含むため、確定額より523円過剰となっている。

公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
-