がん治療における緩和的放射線治療の評価と普及啓発のための研究

文献情報

文献番号
201908045A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療における緩和的放射線治療の評価と普及啓発のための研究
課題番号
19EA1010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
茂松 直之(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 健夫(埼玉医科大学)
  • 大西 洋(山梨大学)
  • 白土 博樹(北海道大学)
  • 鹿間 直人(順天堂大学)
  • 中村 直樹(国立がん研究センター東病院)
  • 原田 英幸(静岡県立静岡がんセンター)
  • 渡辺 未歩(根本 未歩)(千葉大学)
  • 森脇 健介(立命館大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者である、森脇健介先生が、年度途中である2019年10月に、神戸薬科大学から立命館大学に移動したが、引き続き分担者として研究を継続する。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は①緩和的放射線治療に対する実態やニーズを把握するための評価手法を開発すること、および継続的に評価を行う基盤を確立すること、②緩和的放射線治療の普及啓発に向けた施策を行うことである。
研究方法
①緩和的放射線治療に対する実態やニーズを把握するための評価手法の開発
緩和照射に関する新規QI項目の作成を開始、データベース利用の申請書を提出、インターネットを用いた質問項目の選定を開始、費用対効果の文献検索の実施と商用レセプトを用いた解析を進めた。タフツ大学のデータベースを用いて、緩和照射の費用対効果に関する先行研究を調査・検討した。
②緩和的放射線治療の普及啓発に向けた施策
a) 骨転移に対する診療ガイドラインの整備
b) 患者・家族に対する情報提供
c) 骨転移キャンサーボードの推進
d) 緩和医療チーム、長期療養型施設、在宅医療機関との連携強化
e) がん治療と仕事の両立支援
について各研究分担者が進める研究について検討し、班会議にて進捗を確認し推進した。

結果と考察
①緩和的放射線治療に対する実態やニーズを把握するための評価手法の開発
先行研究の検討の結果、脳転移では、定位放射線治療単独が費用対効果に優れることが示唆され、骨転移に対する定位放射線治療の費用対効果は生存期間や疼痛関連のQOL値に依存することが示された。次年度に脊椎転移に対して従来型放射線治療と高精度放射線治療を行った場合の、費用対効果を算出し比較する。
②緩和的放射線治療の普及啓発に向けた施策
a) 骨転移に対する診療ガイドラインの整備
有痛性の骨転移に対する放射線治療の効果は再現性をもって有効性があることが診療ガイドラインに記載されているが、鎮痛薬、手術、抗がん治療などとの使い分けの記載は不十分であった。また疼痛緩和以外の骨イベントの観点からの記載が不十分であった。そのため、わが国の実地診療の実態を調査した上で、ガイドラインの整備をおこなうことが重要であると判断した。
b) 患者・家族に対する情報提供
日本放射線腫瘍学会、米国放射線腫瘍学会、国立がん研究センターがん情報サービス等から緩和ケア・緩和照射に関するリーフレットを収集した。米国放射線腫瘍学会から緩和照射に関する資料として”Palliative Care”と”Bone metastasis”の2種類のリーフレットが作成されており、ホームページ上で患者・家族が閲覧できるようになっていた。これを日本語訳した。
c) 骨転移キャンサーボードの推進
骨転移キャンサーボードの重要性は十分に認識されているが、医療資源の不足が普及の障壁となっている。限られた医療資源を効率良く骨転移キャンサーボードに注入するために、「骨転移キャンサーボードで治療方針を協議する優先性が高い病態」に関する提言を検討した。
d) 緩和医療チーム、長期療養型施設、在宅医療機関との連携強化
地域における緩和照射のニーズはあるが、長期療養型施設・在宅医療機関との連携は不十分であることが示唆された。緩和ケアチームとの連携が良いモデルケースでは緩和照射の連携が良好であることから連携の強化が必須であると考えられた。
e) がん治療と仕事の両立支援
令和2年度からの診療報酬改訂に伴い、各施設ががん治療前に事業所からの情報収集を行い、所定の意見書を記載することで、それに対する返信を待たずに報酬加算がされることになり、放射線治療が、「がん治療と仕事の両立支援」の活発化に大きく寄与できることが期待される。今回のアンケートをもとに、さらに多くの放射線治療医の意見を聞くためのアンケート項目の抽出、具体的な指針作成を検討した。
結論
緩和照射の評価ならびに普及啓蒙に向けて初年度は順調に各分担研究者の研究が進行していることが確認された。緩和照射の評価ならびに普及啓蒙に向けての研究の方向性が定まり、具体的な各種アプローチが進み始めた。今後は緩和的放射線治療の費用対効果を明らかにし、公表することで、緩和的放射線治療の適正使用および医療費の軽減に貢献することができる。診療ガイドラインの整備、骨転移キャンサーボードの推進、緩和医療チーム・長期療養型施設・在宅医療機関との連携強化を通じて、緩和的放射線治療の適正使用に貢献することができる。患者、家族に対する緩和的放射線治療説明用のリーフレットを作成し、広く配布する。「がん治療と仕事の両立」に向けて緩和的放射線治療を活用する指針を示す。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,885,000円
人件費・謝金 0円
旅費 2,000,000円
その他 500,000円
間接経費 1,615,000円
合計 7,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
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