文献情報
文献番号
201908034A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等における医療提供体制の均てん化のための評価に既存資料を活用する
課題番号
H30-がん対策-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
研究分担者(所属機関)
- 森島 敏隆(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 中田 佳世(山田 佳世)(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 佐藤 亮(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 小山 史穂子(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 大川 純代(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
- 荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
- 若宮 翔子(奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構)
- 藤井 誠(神戸女子大学 看護学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者5名追加(小山、大川、荒牧、若宮、藤井)。
研究報告書(概要版)
研究目的
がん診療連携拠点病院等(以下、拠点病院)における医療提供体制の均てん化のための評価に関し、既存資料を活用した効率的なモデルを示すことを目標とする。大阪府の拠点病院(平成30年度65、令和1年度64医療機関)を対象に、(1)医療機関の比較、(2)実地調査を行う。質的量的に優位性をもつ大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージすることで、単独のデータベースでは実施困難な評価、例えば医療機関の背景の違いを考慮した比較等、適切な評価のあり方を示す。また、現況報告書の信頼性をあげるという視点から、実地調査の負担軽減に繋げる。
研究方法
(1)医療機関の比較
大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージした連結データベースを作成する。都道府県がん診療連携協議会がん登録部会が実施する院内がん登録にDPCをリンケージするQI(quality indicator)研究と比較して、複数年のDPCデータを扱う点、地域がん登録情報による生存率を扱う点、大阪府だけで多くの拠点病院の比較が可能で都道府県間の違いを考慮しなくてもよい点が優位点である。
(2)拠点病院の実地調査
大阪府がん診療連携協議会会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長(研究代表者も含まれる)、同じ二次医療圏の医療機関の職員、患者会から構成される拠点病院を対象とした訪問を既に実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、たばこ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項(マニュアルなし)としているが、現況報告書と実態の不整合が散見される。現況報告書は拠点病院の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提である。しかしながら、信頼性の検証は十分なされておらず、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。実地調査に伴う実態との一致性の確認が信頼性を上げることに、信頼性を損なう要因の把握が報告形式の改善に繋がる。
大阪府がん登録にDPC等をレコード・リンケージした連結データベースを作成する。都道府県がん診療連携協議会がん登録部会が実施する院内がん登録にDPCをリンケージするQI(quality indicator)研究と比較して、複数年のDPCデータを扱う点、地域がん登録情報による生存率を扱う点、大阪府だけで多くの拠点病院の比較が可能で都道府県間の違いを考慮しなくてもよい点が優位点である。
(2)拠点病院の実地調査
大阪府がん診療連携協議会会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長(研究代表者も含まれる)、同じ二次医療圏の医療機関の職員、患者会から構成される拠点病院を対象とした訪問を既に実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、たばこ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項(マニュアルなし)としているが、現況報告書と実態の不整合が散見される。現況報告書は拠点病院の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提である。しかしながら、信頼性の検証は十分なされておらず、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。実地調査に伴う実態との一致性の確認が信頼性を上げることに、信頼性を損なう要因の把握が報告形式の改善に繋がる。
結果と考察
平成30年度、2010-15年診断例を対象に、36の拠点病院が参加する大阪府がん登録(地域がん登録)・DPC連結データベース(178,524例)を整備した。令和1年度は、2013-15年診断例を対象に、36のうち31の拠点病院が参加する院内がん登録を追加連結したデータベース(120,053例)を整備した。連結データベースを用いた分析に加え、現況報告書の情報を付加することにより、肺がんに対する放射線治療選択、医科歯科連携に関する分析を行った。
大阪府がん登録データを用い、医療機関別観血的治療件数と生存率との関連について分析し、大規模医療機関への集約化による死亡リスクの可能性を示した。同じく大阪府がん登録データを用いて、小児・AYA世代のがんの生存率の推移と拠点病院カバー割合を明らかにした。
令和1年度の新たな取り組みとして、ソーシャルメディアを用いた医療提供体制に関する評判・風評調査の可能性の検討、リアルワールドの通院時間の可視化による医療提供体制の地理的配置に関する評価、新治療導入などによる長期生存率の転換点となる時点の同定の可能性を検討した。
大阪府がん診療連携協議会として、指定要件更新年度を考慮し、平成30年度は近隣府県(和歌山県、奈良県、兵庫県)の都道府県がん診療連携拠点病院を訪問して意見を交換、令和1年度末に大阪府内訪問を再開した。また、現況報告書の改善策として、入力フォーム試作版を作成した。指定要件更新や新型コロナ感染(COVID-19)など、現況報告書の信頼性をあげるという観点での本研究の取り組みは、今後の社会情勢変化に対しても役立つことが期待できる。
大阪府がん登録データを用い、医療機関別観血的治療件数と生存率との関連について分析し、大規模医療機関への集約化による死亡リスクの可能性を示した。同じく大阪府がん登録データを用いて、小児・AYA世代のがんの生存率の推移と拠点病院カバー割合を明らかにした。
令和1年度の新たな取り組みとして、ソーシャルメディアを用いた医療提供体制に関する評判・風評調査の可能性の検討、リアルワールドの通院時間の可視化による医療提供体制の地理的配置に関する評価、新治療導入などによる長期生存率の転換点となる時点の同定の可能性を検討した。
大阪府がん診療連携協議会として、指定要件更新年度を考慮し、平成30年度は近隣府県(和歌山県、奈良県、兵庫県)の都道府県がん診療連携拠点病院を訪問して意見を交換、令和1年度末に大阪府内訪問を再開した。また、現況報告書の改善策として、入力フォーム試作版を作成した。指定要件更新や新型コロナ感染(COVID-19)など、現況報告書の信頼性をあげるという観点での本研究の取り組みは、今後の社会情勢変化に対しても役立つことが期待できる。
結論
医療機関の比較については、初年度の連結データベース整備に続き、2年目は院内がん登録を追加連結したデータベースの整備を計画し、計画通り完了した。連結データベースを用いた分析に加え、現況報告書の情報を付加することによる分析や、大阪府がん登録データを用いた分析も進めた。拠点病院の実地調査については、指定要件更新や令和1年度末のCOVID-19などの影響があった。現況報告書の信頼性をあげるという観点での本研究の取り組みは、今後の社会情勢変化に対しても役立つのではないかと考えている。
がん診療連携協議会の枠組みの利用や生存率に関する適切な比較まで行うことのできる地域がん登録データを持つ都道府県は限られ、他の都道府県が実施できるようになるには年月を要するが、可能な都道府県として先駆け的に実践し、ノウハウと比較可能な過去データの蓄積することは、日本全体の益になると考える。
がん診療連携協議会の枠組みの利用や生存率に関する適切な比較まで行うことのできる地域がん登録データを持つ都道府県は限られ、他の都道府県が実施できるようになるには年月を要するが、可能な都道府県として先駆け的に実践し、ノウハウと比較可能な過去データの蓄積することは、日本全体の益になると考える。
公開日・更新日
公開日
2020-11-04
更新日
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