WHOの自殺予防戦略に基づくがん患者自殺予防プログラムの開発

文献情報

文献番号
201908030A
報告書区分
総括
研究課題名
WHOの自殺予防戦略に基づくがん患者自殺予防プログラムの開発
課題番号
H30-がん対策-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 豊(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター健康支援研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 明智 龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
  • 一家 綱邦(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部 医事法研究室)
  • 内富 庸介(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 支持療法開発部門)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター健康支援研究部 心理学研究室)
  • 井上 佳祐(横浜市立大学大学院医学研究科 精神医学部門)
  • 三枝 祐輔(横浜市立大学医学部 臨床統計学教室)
  • 三角 俊裕(横浜市立大学市民総合医療センター 臨床統計学教室)
  • 島津 太一(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究部 予防評価研究室)
  • 野口 普子(武蔵野大学 通信教育部人間科学部)
  • 川島 義高(明治大学 文学部 心理社会学科)
  • 河西 千秋(札幌医科大学医学部 神経精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,691,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOの自殺予防戦略(全体的・選択的・個別的予防)を念頭に、自殺予防に資すると考えられた開発研究として、全体的予防を目指した研究❶「がん患者に対するメンタルヘルスケアへのアクセス勧奨法の開発」と、選択的・個別的予防を目指した研究❷「自殺の危険が高いがん患者に対する多職種連携による支援プログラムの開発」に取り組んだ。
研究方法
研究❶:パイロット調査Ⅰにおいて、精神科受診を促すポスター等貼付・カード設置の、がん診断を契機にうつ状態となるがん患者を精神心理的なケアに誘導する効果を検討した。がん患者指導管理料イの算定率が高い病院(箕面市立病院、小牧市民病院、日本海総合病院、山形市立病院済生館)の視察を経て、①組織風土の改革を目指した定期的な研修会と病院内でのメンタルヘルスケアへのアクセスを促すポスター貼付、②診断告知時等に看護師署名欄のある書式様式の利用促進、③看護師同席時にカード配布、という複合的な介入を行うことによって、がん患者指導管理料の算定ならびに精神科受診者数の増加が生じるか否かを検討した(パイロット調査Ⅱ)。
研究❷:自殺未遂者の自殺再企図防止に有効であることが示されているACTION-Jモデルを修正・応用した、多職種連携によるケース・マネジメント介入の妥当性を議論し、プロトコルのブラッシュ・アップと確定版の作成、倫理審査委員会の受審、介入研究実務担当者の教育、そしてフォージビリティ・スタディを実施した。
結果と考察
研究❶:横浜市立大学附属市民総合医療センターにおいてポスター・リーフレットを用いた精神科受診勧奨を行うパイロット調査Ⅰ(2000年3月から5月)を実施したが、効果を認めなかった。パイロット調査Ⅱ(新潟県立がんセンター新潟病院)では、がん患者指導管理料イの算定率をプライマリアウトカムとし、ポスターやリーフレットの掲示・配布に加え研修会の定期的開催を行うパイロット調査Ⅱを試みたが、がん患者指導管理料と精神科受診率・自殺率との因果関係が明白ではないとの外部評価を受け令和2年3月末で一旦中断し、研究計画自体を再検討することとした。
研究❷:救命救急医療における自殺未遂者に対するケース・マネジメント介入法を援用した介入プログラムを開発し、診断告知後一年以内のがん患者に対するメンタルへルス不調予防と心理的危機介入の実施可能性を検討する予備研究を開始したが、リスク軽減と自殺減少の因果関係が明らかでないとの外部評価を受け令和2年3月末で中断した。
結論
研究❶ではパイロット調査を2回行った。1回目の単介入においては効果が認められなかった。2回目の複合介入は、途中で中断した。今後、複合介入の予備的結果を解析し結果の公表を行う。研究❷:では複合的ケース・マネジメント介入のフィージビリティ研究を策定し、患者登録を開始したが途中で中断した。今後は多職種専門家パネルを作り、パネルでの議論を経て、必要に応じ自殺対策の糸口を検討するための事例検討を含めた実態調査をがん診療連携拠点病院において行う。全国がん登録調査で進められている詳細な解析、実態調査、そして多職種専門家パネルによる検討結果を基に、令和3年度以降におけるがん患者の自殺対策研究のグランドデザイン策定につなげることを目指す。

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201908030Z