文献情報
文献番号
201908021A
報告書区分
総括
研究課題名
がんと診断された時からの緩和ケアの推進に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-022
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 森田 達也(聖隷三方原病院)
- 恒藤 暁(京都大学 医学研究科 )
- 清水 千佳子(国立国際医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,044,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、「がんと診断された時からの緩和ケア」の実態とその阻害/促進因子の同定、そしてその評価指標の策定を行うことである。初年度の調査結果を受け、診断時からの緩和ケアに関する評価指標の探索を目的に用いられた学術的文脈における「オンコロジーと緩和ケアの連携」の国際評価指標で、現場で各因子が有効に機能しているかまで測定することは困難と考えられた。そこで、患者の立場から診断時から経時的なニードの実態を時期別・がん種別に捉えなおし、患者が求める診断時からの緩和ケアの在り方を検討し、その評価指標を探索することとした。最終年度は、これまで研究班で行ってきた調査結果を取りまとめ、提言書を策定した。
研究方法
① 病院長またはがん診療責任者を対象とした、「がんと診断されたときからの緩和ケア」の実態と評価指標の探索に関する調査
② 「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する医療従事者対象調査
③ がん患者の診断期、治療期のニーズに関する調査
② 「がんと診断された時からの緩和ケア」に関する医療従事者対象調査
③ がん患者の診断期、治療期のニーズに関する調査
結果と考察
①は、2年目までに取りまとめの作業がほぼ完了していた。
②、地域がん診療病院を含む拠点病院等437施設で勤務する、乳がん治療医、消化器がん治療医、肺がん治療医、緩和ケア担当医、がん看護責任者を対象とした。それぞれ215名(49.2%)、202名(46.2%)、200名(45.8%)、249名(57.0%)、249名(57.0%)から回答を得た。
外来・入院診療における改善すべき点についての設問では、身体症状・有害事象・精神症状・社会的問題・病状理解・アドバンスケアプランニング・家族ケア、いずれの項目でも、外来の方が改善すべき点が多いと回答された。
外来・入院診療における医師・看護師の連携状況についての設問では、身体症状・有害事象・精神症状・社会的問題・病状理解・アドバンスケアプランニング・家族ケア・面談時の同席、いずれの項目でも、外来での連携がうまくいっていないと回答された。求められる方策についての設問では、病状説明の際の看護師の同席や、医師以外の職種の継続的な対応など、多職種連携を促進する方策が上位であった。
また、自由記述への回答では、阻害因子として、患者や治療医の緩和ケアに関する知識・理解不足、緩和ケア医の抗がん治療や治療期患者への関心・理解不足、医療資源不足・偏在、多職種連携の困難さ、緩和ケアの名称のイメージの悪さが挙げられていた。促進因子として、緩和ケアに関わる医療者の増員、多職種連携構築、介入対象者を同定する評価と体制の構築、医療者教育、社会啓発、患者教育などが挙げられていた。
③ がん患者の診断期、治療期のニーズに関する調査
早期がんに罹患経験を有するモニター208名(診断期120名、治療期88名)、根治不能な進行再発がんに罹患したモニター206名(診断期63名、治療期143名)から回答を得た。根治がん・診断時には、不安(56%)、がんが広がる恐れ(51%)、気分の落ち込み(43%)などの精神的なつらさ、検査についての説明(41%)、治療の効果と副作用の説明(40%)などの治療に関するアンメットニードがあった。根治がん・治療中には精神的なつらさに加えて倦怠感(41%)、痛み(40%)などの身体症状、費用に関する説明(44%)があった。進行がん・診断時も同様に精神的つらさ、治療に関することが多かったが、信頼できる情報を判断する(51%)、難しい決定のサポート(51%)、相談窓口(44%)に関する問題も多かった。進行がん・治療中は精神的なつらさと身体症状の頻度が高かった。
②、地域がん診療病院を含む拠点病院等437施設で勤務する、乳がん治療医、消化器がん治療医、肺がん治療医、緩和ケア担当医、がん看護責任者を対象とした。それぞれ215名(49.2%)、202名(46.2%)、200名(45.8%)、249名(57.0%)、249名(57.0%)から回答を得た。
外来・入院診療における改善すべき点についての設問では、身体症状・有害事象・精神症状・社会的問題・病状理解・アドバンスケアプランニング・家族ケア、いずれの項目でも、外来の方が改善すべき点が多いと回答された。
外来・入院診療における医師・看護師の連携状況についての設問では、身体症状・有害事象・精神症状・社会的問題・病状理解・アドバンスケアプランニング・家族ケア・面談時の同席、いずれの項目でも、外来での連携がうまくいっていないと回答された。求められる方策についての設問では、病状説明の際の看護師の同席や、医師以外の職種の継続的な対応など、多職種連携を促進する方策が上位であった。
また、自由記述への回答では、阻害因子として、患者や治療医の緩和ケアに関する知識・理解不足、緩和ケア医の抗がん治療や治療期患者への関心・理解不足、医療資源不足・偏在、多職種連携の困難さ、緩和ケアの名称のイメージの悪さが挙げられていた。促進因子として、緩和ケアに関わる医療者の増員、多職種連携構築、介入対象者を同定する評価と体制の構築、医療者教育、社会啓発、患者教育などが挙げられていた。
③ がん患者の診断期、治療期のニーズに関する調査
早期がんに罹患経験を有するモニター208名(診断期120名、治療期88名)、根治不能な進行再発がんに罹患したモニター206名(診断期63名、治療期143名)から回答を得た。根治がん・診断時には、不安(56%)、がんが広がる恐れ(51%)、気分の落ち込み(43%)などの精神的なつらさ、検査についての説明(41%)、治療の効果と副作用の説明(40%)などの治療に関するアンメットニードがあった。根治がん・治療中には精神的なつらさに加えて倦怠感(41%)、痛み(40%)などの身体症状、費用に関する説明(44%)があった。進行がん・診断時も同様に精神的つらさ、治療に関することが多かったが、信頼できる情報を判断する(51%)、難しい決定のサポート(51%)、相談窓口(44%)に関する問題も多かった。進行がん・治療中は精神的なつらさと身体症状の頻度が高かった。
結論
がん患者は、早期がん・進行がん患者のいずれの時期においても、高頻度に解決されていないニーズを有しており、それらの解決に向け、特に外来における多職種連携体制の構築し、緩和ケアの提供体制を整備する施策が望まれる。また、がん患者のニーズの解決状況が、診断時からの緩和ケアの評価指標として有望と考えられた。
これらの調査のとりまとめを行い、本研究班としての提言書の策定を行った。提言書については、総合研究報告書にて報告を行う。
これらの調査のとりまとめを行い、本研究班としての提言書の策定を行った。提言書については、総合研究報告書にて報告を行う。
公開日・更新日
公開日
2020-11-04
更新日
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