文献情報
文献番号
201908020A
報告書区分
総括
研究課題名
「全国の医療機関における緩和ケアの実施状況と医療従事者(医師・看護師)調査に基づくがん緩和ケアの推進に関する研究」
課題番号
H29-がん対策-一般-021
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 雅志(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援部)
研究分担者(所属機関)
- 木澤 義之(神戸大学医学部附属病院・緩和支持治療科)
- 森田 達也(聖隷三方原病院・緩和支持治療科)
- 小川 朝生(国立がん研究センター先端医療開発センター・国立がん研究センター東病院)
- 宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科・保健学専攻・緩和ケア看護学)
- 中澤 葉宇子(国立がん研究センター・がん対策情報センター・がん医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,976,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国では、緩和ケアを推進するために様々な施策が実施されてきた。先行研究にて全国の医療者の緩和ケア変化を明らかにしたが、都道府県別や施設の状況別の分析が課題となっていた。本研究の目的は、1)全国医療者調査と施設調査を実施し、拠点病院と非拠点病院の比較を行い、施設の状況に応じた緩和ケアの課題を明らかにする。また、都道府県別の緩和ケアの状況を明らかにする。2)緩和ケア評価指標の推移を計測すると共に、目指すべき目標値の設定について検討を行うことである。
2015年先行研究にて医師・看護師の緩和ケアに関する全国調査を実施し2008年からの変化を明らかにした。その調査により、拠点病院以外の医師・看護師の緩和ケア知識・実践は、十分ではないことが示された。拠点病院以外の施設の緩和ケアの取組状況に関する課題を明らかにすると共に、一方で都道府県別の施設の取り組みの状況を明らかにすることが課題であった。本研究の目的は、施設の全国調査を行うことで、全国の緩和ケアの取組状況を把握すると共に都道府県別・施設種別による取り組み状況の違いを明らかにすることである。
2015年先行研究にて医師・看護師の緩和ケアに関する全国調査を実施し2008年からの変化を明らかにした。その調査により、拠点病院以外の医師・看護師の緩和ケア知識・実践は、十分ではないことが示された。拠点病院以外の施設の緩和ケアの取組状況に関する課題を明らかにすると共に、一方で都道府県別の施設の取り組みの状況を明らかにすることが課題であった。本研究の目的は、施設の全国調査を行うことで、全国の緩和ケアの取組状況を把握すると共に都道府県別・施設種別による取り組み状況の違いを明らかにすることである。
研究方法
1)医療者(医師・看護師)調査:医師,看護師を対象に緩和ケアの知識・困難感・実践の経時的変化・都道府県別および施設種別による違いを検証するため匿名自記式質問紙調査を行った。
2)施設調査:病院の緩和ケアの提供体制について、都道府県別および施設種別による違いを明らかにするため全国のがん診療連携拠点病院,拠点病院以外の病院の施設長・緩和ケア担当者を対象に記名式の自記式質問紙調査を行った。
3)がん対策緩和ケアの評価指標の推移検証と目標値の設定:がん対策緩和ケアの進捗状況を評価する15指標について、可能なデータの更新を行うとともに研究者間で目標値の設定方法についての検討を行った。
4)倫理的配慮:本研究は医療者を対象とする調査であり、国立がん研究センターの研究倫理審査の対象外ではあるが、疫学研究に関する倫理指針に従い調査を実施した。
2)施設調査:病院の緩和ケアの提供体制について、都道府県別および施設種別による違いを明らかにするため全国のがん診療連携拠点病院,拠点病院以外の病院の施設長・緩和ケア担当者を対象に記名式の自記式質問紙調査を行った。
3)がん対策緩和ケアの評価指標の推移検証と目標値の設定:がん対策緩和ケアの進捗状況を評価する15指標について、可能なデータの更新を行うとともに研究者間で目標値の設定方法についての検討を行った。
4)倫理的配慮:本研究は医療者を対象とする調査であり、国立がん研究センターの研究倫理審査の対象外ではあるが、疫学研究に関する倫理指針に従い調査を実施した。
結果と考察
1)回答数:回答数は医師調査 表1、看護師調査 表2、施設調査 表3に示した。
2)回答者背景:回答者・施設背景は、各分担報告に記載した。
3)医療者調査・医師の緩和ケアの変化:2008年からの知識スコアの合計正答率(調整平均値)の変化は、拠点病院(2017年):2.1ポイント、拠点病院以外の病院(2018年):5.5ポイント、診療所(2019年)は6.9ポイントそれぞれ増加した。また支持療法に関して標準診療を行っている医師の割合についても分析を行った。
4)医療者調査 看護師の緩和ケアの変化:2008年からの知識スコアの合計正答率(調整平均値)の変化は、拠点病院(2017年):2.2ポイント、拠点病院以外の病院(2018年):5.2ポイント、訪問看護ステーション(2019年):1.6ポイントそれぞれ増加した。
5)施設調査
緩和ケアチームが有る施設のうち、専従の身体症状担当医師がいる施設は全体35%、非拠点病院19%、拠点病院52%だった。緩和ケアチームがない施設のうち、身体症状の緩和を担当する医師がいると回答した施設は全体37%、非拠点病院39%だった。
施設の緩和ケア提供体制について有意差が認められたのは「抑うつ・不安を有する患者の対応に際して、必要に応じて院内あるいは外部の精神保健専門家と協働している」であり、概ねできている・できていると回答した施設は全体44%、非拠点病院35%、拠点病院77%(P<0.001)だった。詳細は分担報告に記載した。また、拠点病院以外の病院で緩和ケアチームの新規介入患者数が、年間50件以上の病院数は215病院であった。
6)がん対策緩和ケアの評価指標の推移検証と目標値の設定:評価指標の推移は、分担報告に記載した。
2)回答者背景:回答者・施設背景は、各分担報告に記載した。
3)医療者調査・医師の緩和ケアの変化:2008年からの知識スコアの合計正答率(調整平均値)の変化は、拠点病院(2017年):2.1ポイント、拠点病院以外の病院(2018年):5.5ポイント、診療所(2019年)は6.9ポイントそれぞれ増加した。また支持療法に関して標準診療を行っている医師の割合についても分析を行った。
4)医療者調査 看護師の緩和ケアの変化:2008年からの知識スコアの合計正答率(調整平均値)の変化は、拠点病院(2017年):2.2ポイント、拠点病院以外の病院(2018年):5.2ポイント、訪問看護ステーション(2019年):1.6ポイントそれぞれ増加した。
5)施設調査
緩和ケアチームが有る施設のうち、専従の身体症状担当医師がいる施設は全体35%、非拠点病院19%、拠点病院52%だった。緩和ケアチームがない施設のうち、身体症状の緩和を担当する医師がいると回答した施設は全体37%、非拠点病院39%だった。
施設の緩和ケア提供体制について有意差が認められたのは「抑うつ・不安を有する患者の対応に際して、必要に応じて院内あるいは外部の精神保健専門家と協働している」であり、概ねできている・できていると回答した施設は全体44%、非拠点病院35%、拠点病院77%(P<0.001)だった。詳細は分担報告に記載した。また、拠点病院以外の病院で緩和ケアチームの新規介入患者数が、年間50件以上の病院数は215病院であった。
6)がん対策緩和ケアの評価指標の推移検証と目標値の設定:評価指標の推移は、分担報告に記載した。
結論
医療者調査の結果、施設別では2008年と比較して、拠点病院以外の医師・看護師間で緩和ケアに関する知識等が大きく増加しており、拠点病院だけでなく拠点病院以外の医師・看護師の緩和ケアの質の向上が進んでいることが示唆された。本調査によって初めて都道府県別の医師・看護師の緩和ケアの状況を示した。今後は全国平均値との比較など更なる解析・検討を進めて行くことが必要である。施設調査の結果、拠点病院と比較して拠点病院以外の病院の緩和ケア提供体制の整備が遅れていることが示され、それを支援する必要性が示唆された。都道府県別の結果についてはサンプル数が十分に確保できない都道府県もあるため結果の解釈には検討が必要である。がん対策緩和ケアの評価指標については継続して指標の推移を検証する必要がある。目標値の設定については研究者間の検討を踏まえ、目標値の設定が可能な項目については検討を進めて行く必要がある。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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