文献情報
文献番号
201908019A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策の進捗管理のための指標と測定の継続的な発展に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-020
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 ゆり(大阪医科大学 研究支援センター 医療統計室)
- 小川 千登世(国立がん研究センター 中央病院 小児腫瘍科)
- 樋田 勉(獨協大学 経済学部)
- 助友 裕子(日本女子体育大学 体育学部 スポーツ健康学科)
- 増田 昌人(琉球大学 医学部附属病院 がんセンター)
- 松坂 方士(弘前大学 医学部附属病院 臨床試験管理センター)
- 若尾 文彦(国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 高山 智子(国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 脇田 貴文(関西大学 社会学部 社会学科 心理学専攻)
- 片山 佳代子(神奈川県立がんセンター 臨床研究所 予防・情報学部)
- 渡邊 ともね(国立がん研究センター がん対策情報センター がん臨床情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
15,024,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
第3期がん対策推進基本計画に定める進捗評価指標の測定について、指標・測定の改善を行い、適切な指標を策定・測定体制の効率化や拡張による安定的な構築に資するデータを出していくことを目的としている。患者体験調査はがん対策の進捗評価に欠かせない厚生労働省調査であるが、その方法は今後もより、妥当性、意義を確立していく必要があるばかりでなく、Webなどの効果的・効率的な方法により、対象を拡大して、小集団によるサブ解析を可能にするなどの工夫が求められている。これらの方法の確立に並行した科学的検証を行う必要がある。同時に、がん教育等、現状の把握と今後の継続的な評価を続けていく必要がある。同じ患者体験調査においても、小児患者体験調査は対象の特殊性や希少性のために調査設計から工夫する必要がある。また、施策へより寄与するための発展についての検討も必要であり、米国やカナダで行われているような数理モデルを使ったがん対策の効果予測が研究されている。わが国でも可能であるかの検討も課題の一つである。更に都道府県における進捗評価と国のがん対策進捗評価の有効な連携方法も課題である。これらの整備も同時に行っていく。
研究方法
①患者体験調査に関する研究:質問紙の設計の妥当性の検証、全体の調査法を反映した集計のためのウェイトの計算とその検証を行った。選択肢の変化が回答分布に影響を受けるので、その影響を比較・検証するため、インターネント調査会社のパネルに登録したがん患者を対象として、回答分布の違いを検証し、解析する。②小児患者体験調査:実施準備を整え、調査票や情報提供文書の内容を確定した。準備の完了した参加施設より、順次調査票の発送を開始した。調査票の返送後、集計、解析を行った。③がん教育に関する研究:平成29~30年に実施した10県教育委員会並びにがん対策担当課職員への聞き取りと討議の結果をふまえ、がん教育事業進捗管理に際しがん対策担当課との連携について、教育委員会担当者の困り事の洗い出しを行い、その内容を深めて、がん対策担当者と教育担当者の連携の在り方や工夫などの情報共有を行い、アクションリサーチとしてその内容を整理した。④都道府県のがん対策評価との連携:青森県、神奈川県、沖縄県の3県におけるがん対策の中間評価に向けた取り組みと情報交換をしながら、国のがん対策評価との連携方法について検討した。
結果と考察
①患者体験調査の課題 a)回答の正確性:患者の自己申告に基づくステージ情報の正確性については慎重に考えるべき。b)選択肢変更の影響評価調査:同じポジティブの回答ではあっても、ポジティブ回答として同一に扱うことも、上位2選択肢を同一に扱うことも適切でないことが判明した。
②小児患者体験調査:IRB審査の上で、施設への依頼を行い、発送と回収までを目標とした。今後は患者体験調査の認知度を上げ施設が協力しやすいような環境を作って行くことが重要である。
③がん教育に関する研究:ワークショップを実施し、がん対策担当課との連携にあたり困ることの整理を行った。がん教育を学校現場で進めていくための論点が明らかになった。推進のための庁内連携促進が急務である。今後は、なお一層その体制を充実・強化する必要がある。④都道府県のがん対策評価との連携:全国における各都道府県の位置づけを評価できるような統計資料を作成し、中間評価、次期計画に役立てるための準備をしている。特に、がん種ごと年齢区分ごとの死亡率の推移に関しての資料を作成し、活用しやすい情報提供を検討した。⑤その他関連する分析:がんの一次予防の直接的な指標はがん罹患率であるが、人口の少ない県では標本数が少なく、調査による数値のブレが大きい。そのため、結果どの程度の信頼性や解釈の方法が大きな問題となり、がん対策への反映も十分に検討が必要となる。患者体験調査においても同じ限界がある。対象を独自に追加して同時に調査するなどのやり方が必要である。相談支援のニーズと経済的な負担、社会的な孤立の有無との関連を解析したところ、ニーズに応じた認知の勾配が観察された。ニーズに焦点を当てた解析がより必要であり、その結果を周知活動に反映させることも求められる。
②小児患者体験調査:IRB審査の上で、施設への依頼を行い、発送と回収までを目標とした。今後は患者体験調査の認知度を上げ施設が協力しやすいような環境を作って行くことが重要である。
③がん教育に関する研究:ワークショップを実施し、がん対策担当課との連携にあたり困ることの整理を行った。がん教育を学校現場で進めていくための論点が明らかになった。推進のための庁内連携促進が急務である。今後は、なお一層その体制を充実・強化する必要がある。④都道府県のがん対策評価との連携:全国における各都道府県の位置づけを評価できるような統計資料を作成し、中間評価、次期計画に役立てるための準備をしている。特に、がん種ごと年齢区分ごとの死亡率の推移に関しての資料を作成し、活用しやすい情報提供を検討した。⑤その他関連する分析:がんの一次予防の直接的な指標はがん罹患率であるが、人口の少ない県では標本数が少なく、調査による数値のブレが大きい。そのため、結果どの程度の信頼性や解釈の方法が大きな問題となり、がん対策への反映も十分に検討が必要となる。患者体験調査においても同じ限界がある。対象を独自に追加して同時に調査するなどのやり方が必要である。相談支援のニーズと経済的な負担、社会的な孤立の有無との関連を解析したところ、ニーズに応じた認知の勾配が観察された。ニーズに焦点を当てた解析がより必要であり、その結果を周知活動に反映させることも求められる。
結論
がん対策の評価を行うための調査実務に関連して、その円滑な実施と科学的な解釈に必要な支援となる研究を行っている。事業的側面に密接に関連した研究活動は、自由な発想に基づく探索的研究ではなく、課題解決型の科学的活動として必要とされており、その一例を示すものであると考えられる。今後、各テーマにおけるがん対策評価に関連したより詳細な解析を進め、また、課題の同定なども検討していくことで、より、がん対策が国民・患者のために有用なものとなっていくように体制を確保することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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