質の高い消化器がん診療の均てん化を目指した、専門医制度の評価・育成プログラム構築システムの開発

文献情報

文献番号
201908017A
報告書区分
総括
研究課題名
質の高い消化器がん診療の均てん化を目指した、専門医制度の評価・育成プログラム構築システムの開発
課題番号
H29-がん対策-一般-018
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
今野 弘之(国立大学法人浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 掛地 吉弘(神戸大学 医学研究科)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学  医学部)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部)
  • 袴田 健一(弘前大学 医学研究科)
  • 神谷 欣志(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 消化器外科医は各医療圏における消化器がん医療に中心的な役割を担っており、消化器外科専門医はその中心的存在である。近年の医療の高度化、専門化に即して専門医制度を進化させていくためには、制度自体の評価と改善が不断に実施される必要がある。本研究の目的は、National Clinical Database (以下、NCD)システムを利用して、継続的な評価改善機能を有した専門医育成システムを構築することである。
研究方法
 3年計画の最終年に当たる令和元年度は、先行研究(平成26~28年度厚生労働科学研究費補助金、研究代表者 今野弘之)で得たアンケート調査結果と平成27年のNCD死亡率データを用いて、後ろ向き解析により施設の評価指標を選定した。まず、アンケート項目から手術成績に影響を及ぼすことが予想され、施設のプロフィール評価に適した15項目を選定し、それぞれのアンケート回答結果と手術成績を検討した。
 手術成績の対象術式は消化器外科主要8術式とし、治療成績の評価は各施設の租手術死亡率および平成27年のリスクモデルから得られた手術死亡率O/E比を用いた。
 アンケート15項目のうち、死亡率に有意に関係し、かつ施設の努力により達成可能な10項目を施設の評価指標として選定し、各施設における10評価指標の充足数と死亡率の関連について検討した。さらにこれらの検討から導き出された充足数のカットオフ値と主要8術式の死亡率の関連を多変量解析にて検討した。これらのデータ解析はNCDに委託して行った。
結果と考察
 アンケート調査を実施した2,634施設のうち1,579施設(59.9%)から回答を得た。これらのうち、2015年に消化器外科主要8術式のうち少なくとも1例以上が施行された1,464施設を解析対象とした。2015年1月から12月にこれらの1,464施設で主要8術式は合計113,453症例であった。術前カンファレンスによる手術適応の決定、Cancer Board、MMカンファレンスはそれぞれ65.1%、61.5%、50.9%で実施されていた。ICT、NST、医療安全委員会は90%以上の施設で設置されており、手術開始時のWHO安全チェックリストは83.1%の施設で実施されていた。術前カンファレンスによる手術適応の決定、Cancer Boardの実施、MMカンファレンスの実施、NCDフィードバックシステムの利用、チーム診療体制の構築、ICTの設置、NSTの設置、WHO 安全チェックリストの実施のある施設ではそれぞれ死亡率が有意に低かった。一方、医療安全委員会の設置は死亡率と有意な関係が認められなかった。消化器外科専門医は68.3%の施設で2名以上常勤として在籍し、これらの施設では1名以下の施設と比較して死亡率が有意に低かった。また、認定看護師が1名以上在籍している施設は89.8%であり、これらの施設では在籍しない施設よりも死亡率が低かった。以上の結果から、(1) 術前カンファレンスによる手術適応の決定、(2) Cancer Boardの実施、(3) MMカンファレンスの実施、(4) NCDフィードバックシステムの利用、(5) チーム診療体制の構築、(6) ICTの設置、(7) NSTの設置、(8) WHO 安全チェックリストの実施、(9) 消化器外科専門医の2名以上の在籍、(10) 認定看護師の在籍、の10項目を施設評価指標として選定した。
 選定した10項目の施設評価指標の充足充足数が1以下の施設は15施設あり、これらの施設では死亡率8.5%、O/E比4.4と手術成績は不良であった。O/E比は充足数が多くなるにつれて低下する傾向にあり、8以上の項目を充足する施設のO/E比は1以下であった。主要8術式別に充足数8以上を変数として投入し多変量解析を行った結果、8項目以上を充足することは8術式すべてで有意に死亡率を改善させる因子として示された。これらの10項目はいずれも施設の努力によって改善可能な要件であり、これら10項目を満たすとは専門医を育成する機関として各施設の努力すべき指標となりうるものと考えられた。
結論
これらの実証的なデータに基づいて選定された施設の評価指標をNCDシステムに実装し評価指標の実施率や手術成績を前向きに評価することで、評価指標の妥当性や新たな改善点などを評価することが可能となる。ビッグデータによる実証的な解析を基盤とした専門医制度の構築は本邦において初めての試みであり、これにより、医療の進歩をいち早く実臨床に反映させた専門医を育て、高品質な医療の提供が可能となるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201908017B
報告書区分
総合
研究課題名
質の高い消化器がん診療の均てん化を目指した、専門医制度の評価・育成プログラム構築システムの開発
課題番号
H29-がん対策-一般-018
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
今野 弘之(国立大学法人浜松医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 掛地 吉弘(神戸大学 医学研究科)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学 医学部)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部)
  • 袴田 健一(弘前大学 医学研究科)
  • 神谷 欣志(浜松医科大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 消化器外科医は各医療圏における消化器がん医療に中心的な役割を担っており、消化器外科専門医はその中心的存在である。本研究の目的は、National Clinical Database (以下、NCD)システムを利用して、継続的な評価改善機能を有した専門医育成システムを構築することである。
研究方法
 本研究では、先行研究(平成26~28年度厚生労働科学研究費補助金、研究代表者 今野弘之)で得た1579施設からのアンケート調査結果と平成27年のNCD mortalityデータを用いた。平成27年のNCD登録データを用いて作成されたmortalityに関する主要8術式のリスクモデルを用いて、アンケート参加施設の各術式別OE比をそれぞれ算出した。アンケート参加施設を術式毎にOE比で3群(A群:OE比<0.5、B群:0.5<OE比<2.0、C群:2.0<OE比)に分け治療成績を検討した。
 次いで、アンケート項目から手術成績に影響を及ぼすことが予想され、施設のプロフィール評価に適した15項目を抽出し、それぞれのアンケート回答結果と手術成績を検討した。手術成績の対象術式は消化器外科主要8術式とし、治療成績の評価は各施設の租手術死亡率および平成27年のリスクモデルから得られた手術死亡率O/E比を用いた。
 アンケート15項目のうち、死亡率に有意に関係し、かつ施設の努力により達成可能な10項目を施設の評価指標として選定し、各施設における10評価指標の充足数と死亡率の関連について検討した。さらにこれらの検討から導き出された充足数のカットオフ値と主要8術式の死亡率の関連を多変量解析にて検討した。これらのデータ解析はNCDに委託して行った。
結果と考察
1) アンケート参加施設のOE比カテゴリー別の施設数と手術件数
 汎発性腹膜炎手術を除く7術式では、施設数、手術件数ともに治療成績の良好なA群(OE比<0.5)が最も多く、多くの施設で安全な手術が実施されていると考えられたが、一方で治療成績の不良なC群(2.0<OE比)の施設数が標準的なB群(0.5<OE比<2.0)を上回っており、さらにTG、RHC、LARの3術式ではC群で行われている手術件数の方がB群の手術件数よりも多いことが判明した。
2) 主要8術式の年間手術件数とアンケート回答結果
 年間手術件数が40未満(A群)、40-79(B群)、80-199(C群)、200-499(D群)、500以上(E群)の施設はそれぞれ602、286、380、181、15施設であり、A群ではすべてのアンケート項目の実施率は低く、特に術前カンファレンスによる手術適応の決定、Cancer boardの実施、MMカンファレンスの実施、NCDフィードバックシステムの利用は50%以下であった。
3) 施設評価指標の選定
 良好な手術成績に有意に関連するアンケート項目のうち、(1) 術前カンファレンスによる手術適応の決定、(2) Cancer Boardの実施、(3) MMカンファレンスの実施、(4) NCDフィードバックシステムの利用、(5) チーム診療体制の構築、(6) ICTの設置、(7) NSTの設置、(8) WHO 安全チェックリストの実施の8項目は施設の努力によって改善可能な項目であり、これらに(9) 消化器外科専門医が2名以上在籍すること、(10) 認定看護師が在籍すること、の2項目を加えた10項目を施設評価指標として選定した。
4) 施設評価指標の充足数と手術死亡
 10の施設評価指標の充足項目数が1以下の施設は15施設あり、これらの施設では死亡率8.5%、O/E比4.4と手術成績は不良であった。O/E比は充足数が多くなるにつれて低下する傾向にあり、8以上の項目を充足する施設のO/E比は1以下であった。8項目以上を充足することは8術式すべてで有意に死亡率を改善させる因子として示された。これらの10項目はいずれも施設の努力によって改善可能な要件であり、専門医を育成する機関として各施設の努力すべき指標となりうるものと考えられた。
結論
 これらの実証的なデータに基づいて選定された施設の評価指標をNCDシステムに実装し評価指標の実施率や手術成績を前向きに評価することで、評価指標の妥当性や新たな改善点などを評価することが可能となる。ビッグデータによる実証的な解析を基盤とした専門医制度の構築は本邦において初めての試みであり、これにより、医療の進歩をいち早く実臨床に反映させた専門医を育て、高品質な医療の提供が可能となるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-11-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201908017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特になし
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-07-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201908017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,210,000円
(2)補助金確定額
15,210,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 121,852円
人件費・謝金 0円
旅費 2,449,814円
その他 9,128,334円
間接経費 3,510,000円
合計 15,210,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-14
更新日
-