文献情報
文献番号
201908014A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がんの病理診断と診療体制の実態とあり方に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-014
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
西田 俊朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 胃外科)
研究分担者(所属機関)
- 吉田朗彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 病理科)
- 川井 章(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 骨軟部腫瘍科)
- 米盛 勧(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺・腫瘍内科)
- 東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん政策科学研究部)
- 小田義直(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
希少がんの病理診断には、専門病理医の不足や治療専門施設と専門病理医のマッチングの不良により、診断の遅れ、診断精度がcommon cancerに比し低いといった課題がある。その補完目的で国立がん研究センターと日本病理学会が提供する二つの病理診断コンサルテーション体制がある。一方で、本邦における一般病院での希少がん病理診断の正確性は未検証である。本研究の目的は、希少がんの代表的疾患として骨軟部肉腫を取り上げ、その病理診断の正確性を検証すると共に、希少がん対策ワーキンググループが開示した専門施設の要件と専門施設の情報公開で必要な集約化が起こっているかを検討した。
研究方法
希少がん病理診断の正確性検証のために、希少がんの中で一定数を占める軟部肉腫を対象に治療紹介症例の専門病理診断医による診断見直し、一般病院で診断された良悪軟部腫瘍の全例見直し、GISTの前向きレジストリ研究における付随研究として中央病理診断による見直しを行った。専門施設の情報公開で必要な集約化に関しては、四肢軟部肉腫と眼腫瘍の専門施設への集約化を、院内がん登録データで検証した。
結果と考察
肉腫治療紹介症例の病理診断見直し研究では、国立がん研究センター中央病院では、628検体を対象に病理診断見直しを行った。中央病院の専門病理診断医と紹介元病院の一般病理診断医の病理診断が一致したものは628症例中403例であり、225例で病理診断に何らかの変更がなされた。変更の内訳は、不一致153例、特定52例、脱特定20例であった。良悪性の判定が専門医の病理診断で変更されたものは92例である。診断変更の主たる理由は、HE染色での組織像の解釈の違いで、48.9%を占めた。専門的な免疫染色あるいは遺伝子解析が利用できなかったことが診断変更の主たる理由と考えられたものはそれぞれ24.4%、8.9%であった。九州大学病院での同様の検討では、総症例が52例で、診断一致は23例、脱特定は3例、特定は18例、不一定は8例であった。診断不一致の主要因として、特殊補助診断法(遺伝子解析および専門的免疫染色)が30%を占めた。九州大学病院での関連施設の軟部腫瘍の病理診断全例見直し研究では、合計994例登録され、診断一致が850症例、部分一致が80例、完全不一致が66例であった。GISTでの中央診断の有用性の検討では、534症例中、中央病理診断で19例がGIST以外の腫瘍と診断された。
情報公開による影響の検証では、専門施設での治療患者の割合は、観察期間の間中、四肢軟部肉腫においてはわずかな増加がみられ、眼腫瘍においては不変であった。則ち、情報公開が集約化を推進する効果は存在するが、その大きさからは非常に限定的であった。
情報公開による影響の検証では、専門施設での治療患者の割合は、観察期間の間中、四肢軟部肉腫においてはわずかな増加がみられ、眼腫瘍においては不変であった。則ち、情報公開が集約化を推進する効果は存在するが、その大きさからは非常に限定的であった。
結論
本邦における骨軟部腫瘍の病理診断不一致は海外の既報とほぼ同等の結果であり、骨軟部腫瘍の病理診断の集約化は正確な診断を行う上で必要であると考えられた。適正な治療選択する上で、また、医療経済的意味からも症例の適切な集約化が求められる。同時に、適切な集約化のためにはネットワークの構築と非専門家の教育も同様に必要と思われる。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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