文献情報
文献番号
201908013A
報告書区分
総括
研究課題名
希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上
課題番号
H29-がん対策-一般-013
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 泰弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 室 圭(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部)
- 藤原 俊義(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
- 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
- 小田 義直(九州大学 医学研究院)
- 杉山 一彦(広島大学 医学部附属病院)
- 西山 博之(筑波大学 医学医療系)
- 神波 大己(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 安藤 雄一(名古屋大学 医学部附属病院)
- 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院)
- 本間 明宏(北海道大学 大学院医学研究院)
- 廣田 誠一(兵庫医科大学 医学部)
- 橋口 陽二郎(帝京大学 医学部)
- 庄 雅之(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
診療ガイドライン作成の需要がある希少癌を客観性の高い方法で取捨選択し、可能な限りMinds診療ガイドライン作成マニュアル2017の手法に則ってガイドラインを作成することを本研究の主たる目的とした。さらに、その積み重ねによりエビデンスが少ない領域でガイドラインを作成するノウハウを確立し、何らかの提言を残すことを副次的な目的とした。また、その過程で人材交流が活発になり、希少癌全般に関わる様々な情報が収集され、希少癌診療について理解が深まり、ガイドライン作成に長けた人材育成がなされることにも期待した。
研究方法
これまでの経緯より、十二指腸癌、後腹膜肉腫、陰茎癌、脳腫瘍、ゲノム解析等で特定の分子生物学的特徴が示された固形癌(希少フラクション)のガイドライン作成を、作成主体となる各学会と調整しながら支援した。具体的には、各学会の理事長やガイドライン委員長と討議し、要請があればガイドライン作成に必要な人材(腫瘍内科医、放射線治療医、病理医など)推薦することと、文献検索や、委員会開催に必要な交通費、会議室などの諸費用を提供することで作成に協力することを本研究班の重要な使命とした。日本肝胆膵外科学会から推薦を受け十二指腸癌診療ガイドラインの作成委員長となった庄雅之教授、丹生健一教授に代わって日本頭頚部癌学会の診療ガイドライン委員長に就任した本間明宏教授が2019年度より新たに研究分担者に加わった。
結果と考察
6月29日に2019年度第1回の班会議を行い、2018年度の会計報告と成果報告を行い、2019年度の研究計画について討議した。領域による温度差がある中、各領域でどの程度ガイドライン作成が進捗しているかの情報の共有が行われた。脳腫瘍ガイドラインについては本研究により新たに追加した癌種を含む脳腫瘍診療ガイドライン2019年版が金原出版より出版された。その後も新たな脳腫瘍のガイドライン作成が活発に継続された。dMMR固形癌については「ミスマッチ修復機能欠損固形がんに対する診断および免疫チェックポイント阻害薬を用いた診療に関する暫定的臨床提言」が策定されていたが、これにNTRK融合遺伝子陽性腫瘍への対応も加えた「成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン」が10月に金原出版より出版された。その他十二指腸癌、後腹膜肉腫、陰茎癌もガイドライン作成委員会を重ねて完成間際になっていたが、新型コロナウィルス感染拡大により2020年3月前後の委員会が開催できなくなり、現在スケジュール調整中である。十二指腸癌については今後の改定を踏まえて日本肝胆膵外科学会修練施設を対象としたアンケート調査がなされ、集積が終了して現在解析中である。さらにNCDを利用した解析も計画されている。
希少癌診療ガイドライン作成のコツとしては、特に多くの癌種のガイドライン作成を行った脳腫瘍領域の杉山一彦研究分担者を中心に以下の点が指摘された。1)システマティックレビューには図書館司書や業者の支援を受けることが望ましいこと、2)システマティックレビューを円滑に行うにはPICO(patient, intervention, comparisons, outcome)におけるoutcomeをできるだけ少なくすること、3)システマティックレビューチームの若手研究者に講演会などを通じてレビューのプロセスについて周知すること、4)作成委員全員がエビデンス総体を理解するのに定性的評価シートのみでは困難である場合に、古典的な構造化抄録も作成して委員全体に情報を共有すること、5)エビデンスの補完にはがん登録やNCDなどのビッグデータの応用も有用であること。
希少癌診療ガイドライン作成のコツとしては、特に多くの癌種のガイドライン作成を行った脳腫瘍領域の杉山一彦研究分担者を中心に以下の点が指摘された。1)システマティックレビューには図書館司書や業者の支援を受けることが望ましいこと、2)システマティックレビューを円滑に行うにはPICO(patient, intervention, comparisons, outcome)におけるoutcomeをできるだけ少なくすること、3)システマティックレビューチームの若手研究者に講演会などを通じてレビューのプロセスについて周知すること、4)作成委員全員がエビデンス総体を理解するのに定性的評価シートのみでは困難である場合に、古典的な構造化抄録も作成して委員全体に情報を共有すること、5)エビデンスの補完にはがん登録やNCDなどのビッグデータの応用も有用であること。
結論
研究期間内に「脳腫瘍診療ガイドライン2019年版」、「成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン第2版」を出版できたが、他に十二指腸癌診療ガイドライン、後腹膜肉腫診断ガイドライン、陰茎癌診療ガイドラインが新規ガイドラインとして完成間近である。こうしたガイドライン作成の過程で希少癌診療ガイドラインを作成するコツがわかってきたことに加え、活発な人材交流が行われ、人材育成がなされたのも本研究の成果と考えている。最後になるが、希少癌のガイドライン作成にはやはり資金が必要であり、熱意のみでは長期的展望に立ったガイドライン作成・改訂は困難であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
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