文献情報
文献番号
201908010A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者のがん医療の質の向上に資する簡便で効果的な意思決定支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
- 長島 文夫(杏林大学 医学部内科学腫瘍科)
- 濱口 哲弥(埼玉医科大学国際医療センター 医学部)
- 海堀 昌樹(関西医科大学 医学部)
- 奥村 泰之(東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
- 田代 志門(東北大学 大学院文学研究科)
- 平井 啓(大阪大学大学院人間科学研究科)
- 渡邉 眞理(横浜市立大学 医学部 看護学科)
- 稲葉 一人(中京大学 法務総合教育研究機構)
- 松井 礼子(国立がん研究センター東病院 薬剤部)
- 五十嵐 隆志(国立がん研究センター東病院 薬剤部)
- 奥山 絢子(国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センター院内がん登録分析室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,873,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、高齢がん患者のがん治療上の課題ならびに、患者・家族の医療ニーズを網羅的に明らかにするとともに、がん診療連携拠点病院において実施可能な簡便で効果的な意思決定支援プログラムを開発し、実施可能性を確認し標準化する事を目的とした。
研究方法
① 高齢者のがん診療を支援する看護師・ソーシャルワーカーが捉える困難感と課題
都内・神奈川県内の施設に勤務する高齢者看護の専門家である老人看護専門看護師、精神看護専門看護師、認知症看護認定看護師を対象者に、高齢がん患者または高齢患者との意思決定に関する面談場面を想起し、身体的側面、認知機能も含めた精神的側面、社会的な側面についてアセスメントの実際をヒアリングし、高齢者看護の専門家による意思決定支援に関するベストプラクティスを抽出した。
② 高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者における経口抗がん剤の服薬アドヒアランスを把握するため、後方視的調査を実施した。
③ レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
DPCデータベースから,匿名加工情報の提供を受けた。適格基準は,①肺がんに対する手術 (腹腔鏡手術を含む),大腸がんに対するMiles手術 (腹腔鏡手術を含む),あるいは大腿骨頭置換術を受けた入院,②入院日は2014年4月1日から,退院日は2018年3月31日までの入院,③入院時年齢は65歳以上,とした。
④ 高齢がん患者に対する意思決定支援に関する研修プログラムの開発
開発コンテンツ 医療者を対象とし、1回90分で完結する研修教材を開発した。研修室の前方にスライドを投影することを前提とし、知識提供とその内容を応用する個人ワーク教材を順に提示する構成である。主な受講対象は「意思決定支援の必要性を感じているものの、適切に対応については困難を覚えている医師」と想定し、開発の基盤となるプロトタイプを作成した。
都内・神奈川県内の施設に勤務する高齢者看護の専門家である老人看護専門看護師、精神看護専門看護師、認知症看護認定看護師を対象者に、高齢がん患者または高齢患者との意思決定に関する面談場面を想起し、身体的側面、認知機能も含めた精神的側面、社会的な側面についてアセスメントの実際をヒアリングし、高齢者看護の専門家による意思決定支援に関するベストプラクティスを抽出した。
② 高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者における経口抗がん剤の服薬アドヒアランスを把握するため、後方視的調査を実施した。
③ レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
DPCデータベースから,匿名加工情報の提供を受けた。適格基準は,①肺がんに対する手術 (腹腔鏡手術を含む),大腸がんに対するMiles手術 (腹腔鏡手術を含む),あるいは大腿骨頭置換術を受けた入院,②入院日は2014年4月1日から,退院日は2018年3月31日までの入院,③入院時年齢は65歳以上,とした。
④ 高齢がん患者に対する意思決定支援に関する研修プログラムの開発
開発コンテンツ 医療者を対象とし、1回90分で完結する研修教材を開発した。研修室の前方にスライドを投影することを前提とし、知識提供とその内容を応用する個人ワーク教材を順に提示する構成である。主な受講対象は「意思決定支援の必要性を感じているものの、適切に対応については困難を覚えている医師」と想定し、開発の基盤となるプロトタイプを作成した。
結果と考察
① 高齢者のがん診療を支援する看護師・ソーシャルワーカーが捉える困難感と課題
高齢看護の専門家のベストプラクティスで重要なことは、生活の視点を主観的・客観的評価を実施していることであった。
意思決定支援ツールを効果的に活用するためには、医療者のレディネスの底上げが重要であり、教育とセットで検討していく必要がある。
② 高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者では服薬間違いを繰り返す事例が散見された。服薬が習慣化された患者でも他の行為によって忘失した事例があり、加齢によるワーキングメモリーの低下が疑われた。高齢患者の認知能力に依存した服薬管理では不十分であり、服薬支援装置や訪問薬剤師・看護師など患者本人の能力に依存しない服薬支援が必要であると考える。
③ レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
今後,本研究により,認知症の有無ごとに,入院中のオピオイド等の鎮痛薬の処方状況が明らかになる。
④ 高齢がん患者に対する意思決定支援に関する研修プログラムの開発
本研究では、教育プログラムの開発を実施した。また、開発の途中ではプロトタイプを作成し、専門家数名からのヒアリングとディスカッションを経て、改善を進めている。
認知症の症状が現れているかどうかに関わらず、患者をアセスメントし、その結果に応じた情報提供と意思疎通を行うことを徹底することで、様々な側面で出現する認知機能の低下に対応していくことがこれからの医療者に求められることであると考えられるためである。また、アセスメントを徹底することで、身体的・認知的に治療に「のらない」患者について、他の専門家と連携して対応するという選択肢を取りやすくなり、それぞれに適切な医療を提供できるといった利点も考えられる。
高齢看護の専門家のベストプラクティスで重要なことは、生活の視点を主観的・客観的評価を実施していることであった。
意思決定支援ツールを効果的に活用するためには、医療者のレディネスの底上げが重要であり、教育とセットで検討していく必要がある。
② 高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者では服薬間違いを繰り返す事例が散見された。服薬が習慣化された患者でも他の行為によって忘失した事例があり、加齢によるワーキングメモリーの低下が疑われた。高齢患者の認知能力に依存した服薬管理では不十分であり、服薬支援装置や訪問薬剤師・看護師など患者本人の能力に依存しない服薬支援が必要であると考える。
③ レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
今後,本研究により,認知症の有無ごとに,入院中のオピオイド等の鎮痛薬の処方状況が明らかになる。
④ 高齢がん患者に対する意思決定支援に関する研修プログラムの開発
本研究では、教育プログラムの開発を実施した。また、開発の途中ではプロトタイプを作成し、専門家数名からのヒアリングとディスカッションを経て、改善を進めている。
認知症の症状が現れているかどうかに関わらず、患者をアセスメントし、その結果に応じた情報提供と意思疎通を行うことを徹底することで、様々な側面で出現する認知機能の低下に対応していくことがこれからの医療者に求められることであると考えられるためである。また、アセスメントを徹底することで、身体的・認知的に治療に「のらない」患者について、他の専門家と連携して対応するという選択肢を取りやすくなり、それぞれに適切な医療を提供できるといった利点も考えられる。
結論
高齢がん患者の意思決定支援の現状を質的に検討し、その結果から、わが国の意思決定支援の質の向上に資する支援方法の検討を進めた。従来、高齢がん患者の意思決定支援の困難さは指摘されていたが、その困難の構成要素を検討し、意思決定支援のプロセスと組み合わせて解析を行ったのは初めてである。その結果、治療方針決定場面に留まらず、意思決定支援のプロセスに関しての情報不足が明らかとなった。
今後、意思決定支援の質の向上を図り、従来のガイドラインと整合性を保ちつつ補完する意思決定支援のプロセスを提示する取組みが求められる。
今後、意思決定支援の質の向上を図り、従来のガイドラインと整合性を保ちつつ補完する意思決定支援のプロセスを提示する取組みが求められる。
公開日・更新日
公開日
2020-09-09
更新日
-