小児がん拠点病院等の連携による移行期を含めた小児がん医療提供体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
201908007A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん拠点病院等の連携による移行期を含めた小児がん医療提供体制整備に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 井口 晶裕(北海道大学病院 小児科、腫瘍センター)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター・血液・腫瘍科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター・脳脊髄脳腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター・血液腫瘍科)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 高橋 義行(名古屋大学・大学院医学系研究科成長発達医学)
  • 平山 雅浩(国立大学法人 三重大学大学院・臨床医学系講座小児科学分野)
  • 滝田 順子(国立大学法人 京都大学 大学院医学研究科 発達小児学)
  • 家原 知子(京都府立医科大学・大学院医学研究科小児発達医学・小児腫瘍)
  • 井上 雅美(地方独立行政法人 大阪府立病院機構大阪母子医療センター・血液・腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター・小児血液腫瘍科)
  • 小阪 嘉之(兵庫県立こども病院・小児がん医療センター)
  • 川口 浩史(国立大学法人広島大学・病院)
  • 田口 智章(九州大学・大学院医学研究院・小児外科)
  • 小俣 智子(武蔵野大学・人間科学部社会福祉学科)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院・医学研究科電子医療情報管理学講座)
  • 瀧本 哲也(国立研究開発法人国立成育医療研究センター・小児がんセンター)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター・中央病院小児腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、拠点病院及び小児がん診療病院における診療連携方法の確立を研究し、チーム医療の推進により、真に機能する連携のあり方を検討し、長期フォローアップの仕組みを構築することを目的とする。
研究方法
1) 小児がんに対する標準治療提供のための均てん化
小児がん拠点病院・診療病院の診療実績を院内がん登録を基準に収集し、各ブロックの小児がん診療病院の役割を明確化する。小児がん拠点病院のQIを精度の高いものに改定し、継続的に測定することで、診療上の問題点を明らかにし、PDCAサイクルを回すことにつなげる。
(2) 難治・極希少などの小児がん等に対する早期開発と集約化
院内がん登録を解析し、脳腫瘍診療の集約化状況を調査する。小児がんにおける各関係者の参画によるオールジャパンでの薬剤開発体制を整備するために、小児がんに対する薬剤開発にかかわる医療者、患者会、製薬企業、規制当局等の関係者による意見交換会を開催する。
(3)移行期医療を含めた長期フォローアップ体制の整備小児がん経験者の就学・就労状況について、アンケート調査を行う。小児がん経験者の自立した自己健康管理のため、スマートフォンアプリを開発しする。
結果と考察
小児がん拠点病院制定後、日本の小児がん診療は診療病院数の減少、多診療施設での診療数の増加が認められており、集約化の方向に進んでいることが示された。しかし、その集約化は、拠点病院に関しては頭打ちになっており、15の拠点病院のみに集約させることには限界があることも明らかになった。拠点病院の地域差もあり、より集約化するためには拠点病院の数を増やす必要性が考えられた。院内がん登録データからも、小児脳腫瘍は、小規模ないし小児経験の少ない病院で多数例が初回診療されている実態が明らかになった
小児がん拠点病院QI指標については、今年度の研究成果からより精度の高い指標を設定することができた。特に、ICTを交えた感染症の指標を採用したことで、院内のICTと小児がん診療科との連携がより強固になり、PDCAサイクルを回すことができた。QI算定チームを形成することで、診療情報管理士等の専門職が測定する仕組みができ、データの均質化に資することができた。継続的かつ適切なQI指標の確立と経時的な評価によって、それぞれの小児がん拠点病院が、自施設の医療の質を自律的に向上させることができ、日本全体の小児がん診療レベルを底上げすることができた。
早期相試験実施にあたり、第I相試験実施可能施設、早期第II相実施可能施設を検討した。意見交換会では、がん遺伝子パネル検査の保険適用や新規薬剤のゲノム情報に基づいた薬事承認等、新たな状況下での小児での薬剤開発につき意見交換を行った。
小児がん経験者の就学・就労調査から、小児がん経験者の約9割は就労を経験し、現在就労中の半数は正社員として働いていた。就学状況では高等学校在学中の教育体制整備が遅れており、約4割の高校生で転校・留年・退学の経験があった。長期フォローアップに関しては、小児科でのフォローアップよりも、治療歴・晩期合併症のリスク等を的確に把握し、現状に即した適切なアドバイス・治療をしてくれる医療機関の存在が重要であることがわかり、小児科と成人診療科の連携、フォローアッププログラムの作成が重要と考えられた。小児がん経験者の自立のためには、自身で治療歴とリスクが理解できるアプリなどの仕組みが必要と考えられ、スマートフォン向け「自己健康管理アプリケーションを開発した。
結論
小児がん拠点病院を中心とした患者動態調査、QIの作成、小児がん経験者の実態調査などにより、日本における小児がん医療の実態を明らかにすることができた。小児がん患者の集約化は徐々に進行していたが、疾患、地域によって、そのスピードは異なり、やや頭打ちであることが示された。脳腫瘍の院内がん登録データからは、小規模ないし小児経験の少ない病院で多数例が初回診療されている実態が明らかになった。
長期フォローアップに関しては、小児科と成人診療科の連携、フォローアッププログラムの作成が重要と考えられ、将来的には、治療歴などを保管する長期フォローアップセンターのような永続的なシステムの構築が不可欠であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201908007B
報告書区分
総合
研究課題名
小児がん拠点病院等の連携による移行期を含めた小児がん医療提供体制整備に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 井口 晶裕(北海道大学病院 小児科、腫瘍センター 講師 小児がんチーム長)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科 小児病態学分野 小児病態学分野 准教授)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科 科長兼部長)
  • 西川 亮(埼玉医科大学国際医療センター 脳脊髄腫瘍科 教授)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科 部長)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科 部長)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科 科長)
  • 高橋 義行(名古屋大学 大学院医学系研究科小児科学 教授)
  • 平山 雅浩(国立大学法人 三重大学大学院 医学系研究科 教授)
  • 滝田 順子(国立大学法人 京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学 教授)
  • 家原 知子(京都府立医科大学 大学院医学研究科 小児発達医学・小児腫瘍 准教授)
  • 井上 雅美(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 血液・腫瘍科 主任部長)
  • 藤崎 弘之(地方独立行政法人 大阪市民病院機構大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科 部長)
  • 小阪 嘉之(兵庫県立こども病院  小児がん医療センター血液・腫瘍内科 副院長兼小児がん医療センター長兼血液・腫瘍内科部長)
  • 川口 浩史(国立大学法人広島大学 病院 講師)
  • 田口 智章(九州大学 大学院医学研究院 教授)
  • 小俣 智子(武蔵野大学 人間科学部社会福祉学科 教授)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院 医学研究科電子医療情報管理学講座 助手)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 小児がんセンター小児がんデータ管理科 診療部長)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人国立がん研究センター・中央病院小児腫瘍科)
  • 足立 壮一(京都大学医学研究科人間健康科学専攻、血液腫瘍学)
  • 小林 正夫(広島大学大学院医歯薬保健学研究科小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、拠点病院及び小児がん診療病院における診療連携方法の確立を研究し、チーム医療の推進により、真に機能する連携のあり方を検討し、長期フォローアップの仕組みを構築することを目的とする。
研究方法
(1) 小児がんに対する標準治療提供のための均てん化
小児がん拠点病院・診療病院の診療実績を院内がん登録を基準に収集し、各ブロックの小児がん診療病院の役割を明確化する。小児がん拠点病院のQIを精度の高いものに改定し、継続的に測定することで、診療上の問題点を明らかにし、PDCAサイクルを回す。
(2) 難治・極希少などの小児がん等に対する早期開発と集約化
DPCデータを解析し、脳腫瘍診療の集約化状況を調査する。第I相試験実施可能施設、前期第II相試験実施可能施設を選択し、調整事務局、データセンター、モニタリング、監査、統計解析等の基本体制を整備する。小児がんにおける各関係者の参画によるオールジャパンでの薬剤開発体制を整備するために、小児がんに対する薬剤開発にかかわる医療者、患者会、製薬企業、規制当局等の関係者による意見交換会を開催する。
(3)移行期医療を含めた長期フォローアップ体制の整備
事前調査による項目を中心に小児がん経験者へインタビュー調査を実施する。さらに、小児がん経験者の就労状況について、アンケート調査を行う。自立した自己健康管理のため、スマートフォンアプリを開発する。
結果と考察
小児がん拠点病院制定後、日本の小児がん診療は診療病院数の減少、多診療施設での診療数の増加が認められており、集約化の方向に進んでいることが示された。血液腫瘍よりも固形腫瘍の方が、集約化はより進んでいることが明らかとなった。しかし、その集約化は、拠点病院に関しては頭打ちになっており、15の拠点病院のみに集約させることには限界があることも明らかになった。小児脳腫瘍のDPCデータ解析および院内がん登録データから、小規模ないし小児経験の少ない病院で多数例が初回診療されている実態が明らかになった。さらに、小児脳腫瘍の施設手術数が増加すると、院内粗死亡率は低下する傾向を示した。
小児がん拠点病院QI指標については、今年度の研究成果からより精度の高い指標を設定することができた。特に、ICTを交えた感染症の指標を採用したことで、院内のICTと小児がん診療科との連携がより強固になり、PDCAサイクルを回すことができた。また、QI算定チームを形成することで、診療情報管理士等の専門職が測定する仕組みができ、データの均質化に資することができている。継続的かつ適切なQI指標の確立と経時的な評価によって、日本全体の小児がん診療レベルを底上げすることができた。
早期相試験実施にあたり、第I相試験実施可能施設、早期第II相実施可能施設を検討した。意見交換会では、神経芽腫での薬剤開発につき、レチノイン酸の開発における問題点につき意見交換を行い、がん遺伝子パネル検査の保険適用や新規薬剤のゲノム情報に基づいた薬事承認等、新たな状況下での小児での薬剤開発につき意見交換を行った。
長期フォローアップに関しては、小児科でのフォローアップよりも、治療歴・晩期合併症のリスク等を的確に把握し、現状に即した適切なアドバイス・治療をしてくれる医療機関の存在が重要であることがわかり、小児科と成人診療科の連携、フォローアッププログラムの作成が重要と考えられた。小児がん経験者の自立のためには、自身で治療歴とリスクが理解できるアプリなどの仕組みが必要と考えられ、スマートフォンアプリを開発した。
結論
小児がん拠点病院を中心とした患者動態調査、QIの作成、小児がん経験者の実態調査などにより、小児がん医療の実態を明らかにすることができた。小児がん患者の集約化は徐々に進行していると考えられたが、疾患、地域によって、そのスピードは異なり、拠点病院への集約化は頭打ちになっていることが明らかになった。小児脳腫瘍の診療に関しては、小規模ないし小児経験の少ない病院で多数例が初回診療されている実態が明らかになった。小児がん医療の向上のためには、現状の集約で十分な疾患・病態があるとともに、小児脳腫瘍のようにより強力な集約化を推進する必要がある疾患があると考えられた。
長期フォローアップに関しては、小児科でのフォローアップよりも、治療歴・晩期合併症のリスク等を的確に把握し、現状に即した適切なアドバイス・治療をしてくれる医療機関の存在が重要であることがわかり、小児科と成人診療科の連携、フォローアッププログラムの作成が重要と考えられた。小児がん経験者の自立のためには、治療歴とリスクがわかるアプリのような仕組みが必要と考えられた。さらに将来的には、治療歴などを保管する長期フォローアップセンターのような永続的なシステムの構築が不可欠であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201908007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児がん医療におけるQIは諸外国においても確立されたものがほとんどない。今回、日本の小児がん拠点病院システムに準拠したQI指標を確立することができ、学術的な価値がある。
臨床的観点からの成果
全国の小児がん診療を公開するシステムを確立したことは大きい。さらに、小児がんQIに関しても、診療情報管理士を中心とした算定体制を整備することができ、小児がん拠点病院・連携病院のPDCAサイクルを回すことにも寄与している。小児がん経験者に対する調査から、ニーズを把握することができ、スマートフォン向けアプリケーション開発につなげることができている。
ガイドライン等の開発
第1回小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会(平成29年12月1日)、および、第2回小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会(平成30年3月2日)にて、研究成果の一部を公表した。
その他行政的観点からの成果
小児脳腫瘍等、十分に集約化されていないがん種の診療については、小児がん拠点病院と小児脳腫瘍等の専門施設との連携を進めると共に、診療実績等を公開し 集約化を促進する必要があることを示した。このことから、小児がん連携病院の一つのカテゴリーとして、脳腫瘍や骨軟部腫瘍等の特定のがん種に対する医療機関が挙げられることにつながった。
その他のインパクト
脳腫瘍患者の非集約化については、2019年7月マスコミで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
81件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
89件
学会発表(国内学会)
104件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
2023-07-05

収支報告書

文献番号
201908007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,700,000円
(2)補助金確定額
18,430,000円
差引額 [(1)-(2)]
270,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,333,656円
人件費・謝金 3,647,888円
旅費 3,863,748円
その他 3,270,075円
間接経費 4,315,000円
合計 18,430,367円

備考

備考
新型コロナウィルスの流行のため、予定していた学会や旅程がキャンセルとなったたため。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-