小児甲状腺がんにおける情報提供と相談支援の体制構築のための研究

文献情報

• 文献番号: 201908006A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 小児甲状腺がんにおける情報提供と相談支援の体制構築のための研究
• 課題番号: H29-がん対策-一般-006
• 研究年度: 令和1(2019)年度
• 研究代表者(所属機関): 鈴木 眞一(公立大学法人福島県立医科大学 医学部甲状腺内分泌学講座)

研究分担者(所属機関)

• 岩舘　学(公立大学法人福島県立医科大学　医学部甲状腺内分泌学講座 )
• 鈴木　聡　(公立大学法人福島県立医科大学　医学部甲状腺内分泌学講座)
• 鈴木　悟　(公立大学法人福島県立医科大学　放射線医学県民健康管理センター )
• 志村　浩己　(公立大学法人福島県立医科大学　臨床検査医学講座 )
• 光武　範吏　(長崎大学原研医療放射線災害医療学研究分野 )

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
• 研究開始年度: 平成29(2017)年度
• 研究終了予定年度: 令和1(2019)年度
• 研究費: 4,395,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

小児甲状腺がんの標準的な診断・治療法は現段階では成人の甲状腺癌の診断治療指針に準じているのが実情である。一方、診断のための検査や治療法に関しては年齢を含めた患者背景が情報提供や相談支援に関わってくる。現在おこなわれている福島県民健康管理調査による甲状腺検査により小児甲状腺癌の生物学的特性が明らかにされつつあるが、医療技術の飛躍的な進歩により早期発見が可能となった現在、非侵襲的あるいは侵襲的診断の適応、手術を含めた治療の適応を議論すべきであり、個々の症例に適した対応が必要である。以上の課題を解決するため、本研究班では小児甲状腺癌に関する情報提供と相談支援の体制を構築し、研究で得られた情報をもとに診断治療指針を作成する事とした。

研究方法

1）福島県立医科大学における小児甲状腺癌手術症例の検討 2011年10月以降に甲状腺検査が開始されたが、現在まで手術施行された125例について臨床病期分類、病理組織診断、手術術式、遺伝子変異解析をおこなった。2）診断治療指針の作成 小児甲状腺癌診断・治療ガイドラインを作成するにあたり、診断編と治療編の編者を定め、CQを作成した。

結果と考察

1）福島県立医科大学における小児甲状腺癌手術症例の検討 福島県立医科大学で手術施行された125例について臨床病期分類、病理組織診断、手術術式、遺伝子変異解析をおこなった。2)小児甲状腺癌診断・治療ガイドラインを作成するにあたり、診断編と治療編の編者を定め、CQを作成した。さらに各々のCQに対して文献検索をおこない、文献の一次スクリーニングをおこなった。

結論

研究の実施経過：福島県立医科大学で手術施行された症例を中心に解析した。また、診断治療指針の作成をおこない、文献検索を行うところまで進行した。

公開日・更新日

• 公開日: 2020-09-09
• 更新日: -

文献情報

• 文献番号: 201908006B
• 報告書区分: 総合
• 研究課題名: 小児甲状腺がんにおける情報提供と相談支援の体制構築のための研究
• 課題番号: H29-がん対策-一般-006
• 研究年度: 令和1(2019)年度
• 研究代表者(所属機関): 鈴木 眞一(公立大学法人福島県立医科大学 医学部甲状腺内分泌学講座)

研究分担者(所属機関)

• 岩舘　学(公立大学法人福島県立医科大学　医学部甲状腺内分泌学講座 )
• 鈴木　聡(公立大学法人福島県立医科大学　医学部甲状腺内分泌学講座 )
• 鈴木　悟(公立大学法人福島県立医科大学　放射線医学県民健康管理センター)
• 志村　浩己(公立大学法人福島県立医科大学　臨床検査医学講座)
• 光武　範吏(長崎大学原研医療放射線災害医療学研究分野)
• 山下　俊一(長崎大学原研医療放射線災害医療学研究分野)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
• 研究開始年度: 平成29(2017)年度
• 研究終了予定年度: 令和1(2019)年度
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

小児甲状腺がんの標準的な診断・治療法は現段階では成人の甲状腺癌の診断治療指針に準じているのが実情である。一方、診断のための検査や治療法に関しては年齢を含めた患者背景が情報提供や相談支援に関わってくる。現在おこなわれている福島県民健康管理調査による甲状腺検査により小児甲状腺癌の生物学的特性が明らかにされつつあるが、医療技術の飛躍的な進歩により早期発見が可能となった現在、非侵襲的あるいは侵襲的診断の適応、手術を含めた治療の適応を議論すべきであり、個々の症例に適した対応が必要である。以上の課題を解決するため、本研究班では小児甲状腺癌に関する情報提供と相談支援の体制を構築し、研究で得られた情報をもとに診断治療指針を作成する事とした。

研究方法

１）福島県立医科大学における小児甲状腺癌手術症例の検討：2011年10月以降に甲状腺検査が開始されたが、手術施行された症例を解析した。２）情報提供・相談支援：市民公開講座および各種学会にて研究成果を発表した。３）診断治療指針の作成：小児甲状腺癌診断・治療ガイドラインを作成するにあたり、診断編と治療編の編者を定め、CQを作成した。さらに各々のCQに対して文献検索をおこなった。

結果と考察

2011年10月以降に甲状腺検査が開始されたが、現在まで手術施行された125例について臨床病期分類、病理組織診断、手術術式、遺伝子変異解析をおこなった。福島県立医科大学で手術施行された125例のうち、男女比は1:1.8であった。診断時年齢は9～23歳で平均年齢は17.8歳であった。最大腫瘍径は5～53mmで平均腫瘍径は14mmであった。情報提供に関しては2017年10月26、27日に第50回日本甲状腺外科学会総会（主催：福島県立医科大学　甲状腺内分泌学講座　鈴木眞一）を福島市で主催し、会長講演として鈴木眞一が「甲状腺外科医が経験した原発事故後の小児甲状腺癌について」を発表した。診断治療指針の作成に関しては小児甲状腺癌診断・治療ガイドラインとして、診断編と治療編の二つを構成し、CQを作成、文献検索をおこなった。

結論

福島県立医科大学の症例を中心に小児若年性甲状腺癌について解析した。さらに、学会において現在の研究の進行状況を発表した。小児甲状腺癌の情報提供と相談支援の体制構築のためには、国内および海外の知見の集約と専門家からの意見を集約した診断治療指針の作成が必要であり、今後も各学会と連携し、本研究班の活動を継続する予定である。

公開日・更新日

• 公開日: 2020-09-09
• 更新日: -

行政効果報告

• 文献番号: 201908006C

成果

• 専門的・学術的観点からの成果: 福島県立医科大学での小児若年者の甲状腺癌の手術例では、片葉切除が多く、腫瘍径は平均14mmであり、遠隔転移は約2%であった。また、リンパ節転移や甲状腺外浸潤はいずれも高率であり、特にリンパ節転移は70%に認められた。海外での小児若年者の報告例では平均腫瘍径が大きく、肺転移が高率であるとの報告もあり、今後も国内および海外の情報収集が必要であると考えられる。
• 臨床的観点からの成果: 手術術式はチェルノブイリ事故後の症例では大半が全摘術を行っているのに対し、福島県立医科大学の症例では片葉切除が大半であり、全摘例は少なかった。福島県立医科大学の小児若年性甲状腺癌に関しては、年齢が独立した予後因子であること、わが国では予防的アイソトープ治療を若年者には特に推奨していないこと、全摘での永続的なホルモン補充への若年者に対する心理的負担やコンプライアンスの問題から日本の主立った甲状腺外科内科の専門家によるコンセンサスからも、できるかぎり片葉切除にとどまることになったという経緯がある。
• ガイドライン等の開発: 小児甲状腺癌診断・治療ガイドラインとして、診断編と治療編の二つを構成した。診断編は、１）健常小児若年者の甲状腺（解剖など）、２）小児若年における甲状腺結節・がんの疫学的事項、３）先天性異常に伴う甲状腺腫、片葉欠損など、４）甲状腺結節・がんの臨床像（症状や理学所見、転移など）、５）小児甲状腺結節の病理、６）診断の進め方、７）診断のための検査、８）精査基準、９）Cancer survivorのための精査基準、１０）その他の検査 の10項目を選定し、それぞれにおいてCQを選定した。
• その他行政的観点からの成果: 本研究班で解析した福島県立医科大学の小児若年性甲状腺がんだけでなく、過去の国内の詳細な症例の解析や海外の事例の情報収集を行うことは、本研究班で作成する診療治療指針にも必要不可欠である。小児若年性甲状腺の指針を明らかにすることは、適切な診断や適切な治療を確立しすることに寄与すると考えられる。
• その他のインパクト: 2017年10月26、27日に第50回日本甲状腺外科学会総会（主催：福島県立医科大学 甲状腺内分泌学講座 鈴木眞一）を福島市で主催し、会長講演として鈴木眞一が「甲状腺外科医が経験した原発事故後の小児甲状腺癌について」を発表した。さらに、シンポジウムとして検診発見での甲状腺癌の扱いをテーマとして取り上げ、鈴木眞一が「検診発見での甲状腺癌の取り扱い 手術適応」を志村浩己が「甲状腺超音波検査で発見される微小癌の取扱い」を発表した。

発表件数

• 原著論文（和文）: 15件
• 原著論文（英文等）: 29件
• その他論文(和文): 7件 ; 書籍
• その他論文(英文等): 1件 ; 書籍
• 学会発表(国内学会): 92件
• 学会発表(国際学会等): 30件
• その他成果(特許の出願): 0件
• その他成果(特許の取得): 0件
• その他成果(施策への反映): 0件
• その他成果(普及・啓発活動): 2件

主な原著論文20編（論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る）

• 原著論文1: Suzuki S, Bogdanova TI, Saenko VA et al.; Histopathological analysis of papillary thyroid carcinoma detected during ultrasound screening examinations in Fukushima.; Cancer Sci , 110 (2) , 817-827 (2019)
• 原著論文2: Yokoya S, Iwadate M, Shimura H et al.; Investigation of thyroid cancer cases that were not detected in the Thyroid Ultrasound Examination program of the Fukushima Health Management Survey but diagnosed at Fukushima Medical University Hospital.; Fukushima J Med Sci , 65 (3) , 122-127 (2020)
• 原著論文3: Yamashita S, Saenko VA; What is the “Screening Effect” Six years after the Fukushima Nuclear Power Plant Accident?; Thyroid , 27 (5) , 595-596 (2017)
• 原著論文4: Iyama K, Matsuse M, Mitsutake N et al.; Identification of Three Novel Fusion Oncogenes, SQSTM1/NTRK3, AFAP1L2/RET, and PPFIBP2/RET, in Thyroid Cancers of Young Patients in Fukushima.; Thyroid , 27 (6) , 811-818 (2017)
• 原著論文5: Suzuki S, Midorikawa S, Matsuzuka T et al.; Prevalence and Characterization of Thyroid Hemiagenesis in Japan: The Fukushima Health Management Survey; Thyroid , 27 (7) , 1011-1016 (2017)
• 原著論文6: Hirokawa M, Miyauchi A, Kihara M et al.; Chromophobe renal cell carcinoma-like thyroid carcinoma: A novel clinicopathologic entity possibly associated with tuberous sclerosis complex; Endocrine journal , 64 (9) , 843-850 (2017)
• 原著論文7: Yamashita S, Suzuki S, Suzuki S et al. ; Lessons from Fukushima: Latest Findings of Thyroid Cancer after the Fukushima Nuclear Power Plant Accident; Thyroid , 28 (1) , 11-22 (2018)
• 原著論文8: Shimura H, Sobue T, Takahashi H; Thyroid Examination Unit of the Radiation Medical Center for the Fukushima Health Management Survey Group: Findings of thyroid ultrasound examination within three years after the Fukushima Nuclear Power Plant accident; J Clin Endocrinol Metab , 103 (3) , 861-869 (2018)
• 原著論文9: 鈴木眞一．鈴木 聡，岩舘 学 他; 小児における甲状腺癌の超音波所見; 日本内分泌･甲状腺外科学会雑誌 , 34 (1) , 7-16 (2017)
• 原著論文10: 光武範吏; 甲状腺がんの遺伝子変異; 最新医学 , 72 (10) , 78-84 (2017)
• 原著論文11: 志村浩己; 小児甲状腺の超音波診断 小児における甲状腺結節・がんの疫学; 乳腺甲状腺超音波医学 , 7 (1) , 27-31 (2018)
• 原著論文12: 鈴木眞一; 小児における甲状腺癌の超音波所見; 乳腺甲状腺超音波医学 , 7 (1) , 35-43 (2018)
• 原著論文13: 鈴木眞一; WHOの新病理分類改訂についてー外科医の立場からー; 乳腺甲状腺超音波医学 , 8 (1) , 13-17 (2019)
• 原著論文14: 岩舘学、鈴木眞一; 甲状腺濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別; JOHNS , 35 (6) , 695-698 (2019)
• 原著論文15: 岩舘学、廣川満良、鈴木眞一; 遺伝子異常による甲状腺腫; 乳腺甲状腺超音波医学 , 8 (3) , 44-47 (2019)
• 原著論文16: 鈴木眞一; 甲状腺腫瘍の超音波診断―両悪性の鑑別に超音波を生かすー; INNNERVISION , 35 (1) , 2-4 (2020)
• 原著論文17: 鈴木眞一; 超音波診断と過剰診断; Jpn J Med Ultrasonics , 47 (2) , 51- (2020)

公開日・更新日

• 公開日: 2021-05-27
• 更新日: -

収支報告書

• 文献番号: 201908006Z
• 報告年月日: 2020年05月29日

収入

• (1)補助金交付額: 5,185,000円
• (2)補助金確定額: 5,161,000円
• 差引額 [(1)-(2)]: 24,000円

支出

研究費 (内訳)	直接研究費	物品費	3,280,875円
		人件費・謝金	0円
		旅費	827,480円
		その他	262,947円
	間接経費		790,000円
	合計		5,161,302円

備考

• 備考: -

公開日・更新日

• 公開日: 2021-03-01
• 更新日: -